迷惑
人に迷惑をかけさえしなければ、将来子供がどんな人間になってもよいと親はよく言いますが、
一体迷惑をかけないで私たちは生きられるのでしょうか。
生きるとはお互い迷惑をかけ合うことです。
迷惑をかけずに生きていると思うなら、これほど無反省な自惚れはありません。
ですから、目標とすべきは、迷惑をかけない人間ではなくて、迷惑を許し合える人間です。
きびしい目を自分自身にそそいで、知らないうちにかけている迷惑に気づき、
やさしい目を相手にそそいで、相手からかけられている迷惑をゆるす、そういう人間です。
藤木正三著 断想 神の風景 人間と世間より