ゆるしの薄明
私たちがともかくもこうして生きておれるのは、決して当たり前のことではないのです。
もし燈し火をつけて相手の心をのぞき合うようなことをお互いにしたら、どうなるでしょうか。
あかりをつけられたら困る者同士があばき合うことになり、修羅の巷となることでしょう。
あかりをつけた時の結果を、お互いよく知っています。知っていてつけないからこそ、なんとかやってゆけているのです。
ですから、あかりをつけないことを慣れ合いと考えないようにしましょう。
それはゆるしなのです。
人生は明る過ぎては生きてゆけません。
藤木正三著 断想 神の風景 人間と世間より