久しぶりに鎌倉の話をします。今まで旧市内の話であったので、今回は大船を中心とする周辺地区の思い出を語ってみたいと思ってます。いわゆる住宅地としての旧市内と比べ大船地区は鎌倉の工業地帯で横浜と隣接する工場街で、しかも大工場が沢山あった地区でした。筆頭は三菱電機の大船製作所、松竹大船撮影所、芝浦製作所、資生堂、隣接には住友電工、タツノ製作所、東洋高圧(後三井化学、)等々錚々たる企業が林立して街は活況を呈していた。
高度成長期が過ぎて平成になり徐々に企業が転出したり、閉鎖されたり大船地区は縮小を余儀なくされていった。一番にぎやかだった頃の仲通りの東側にある飲み屋街は連日大賑わいで朝まで営業している店も珍しくなかった程だ。三菱電機の鎌倉製作所ができてからは関連会社も含めて約1万人が勤め、三菱関連で飲食店はウハウハの時代であった。
当時スナックをやっていたあるママなどは億という資産を持って悠々自適の生活を楽しんでいる。しかし今の仲通り界隈はスムースに歩けるほど人がまばらで飲み屋さんも苦戦しているようだ。今は安くてうまい店しかはやらないようだがまさに高齢者御用達の店がヒルオケでようやく息をついているようだ。
再開発が動き出そうとしても駅前などは地権者が入り乱れて実際開発ができるのか、色々な条件があるようで先に進んでいないのが実情のようで、私などは懐かしい昔の猥雑な大船の飲み屋街がそのまま残ってくれた方が嬉しいのだが、昭和レトロの面影を是非に残して欲しいと思っている。
先日、久しぶりに寄った居酒屋『風来坊』でこのくらいだと年寄も一杯飲めるなと思ったので、紹介をしておきたい。仲通から一寸中に入った2階にある居酒屋でカウンターとテーブルと座敷がある丁度良い広さの居酒屋で何を頼んでもうまいので、特に魚系統はうまくて安い、しかし下地で飲むのだから『風来坊セット』1700円で十分である。好きな飲み物、突き出し、サラダ系、刺身系、焼き物系この4点がついて1700円、生ビールと一緒に食べればおなか一杯になる。こういう店が増えれば良いのだが、いまやチェーン店が幅を利かす世の中であるので、応援したい店である。
10年来の付き合いのあるコーヒーショップ『瑠布蘭(るふらん)』はママが一人でやっている気さくな店で、地元出身のママが毎回挽き豆をして入れてくれるコーヒーと手作りケーキはセット700円でゆったりとした気分にさせてくれる。ここも高齢者の客が多いのだが、面倒見の良いママが病気のこと、家の中の愚痴話などを聞いてくれるので、さながら介護喫茶の様相を呈している。リーズナブルなランチも気が利いているのでFANも多い店である。
いまや大船はターミナルとしての機能は首都圏においても相当の規模になったと思えるのだが、北口改札ができて横浜方面からの人の流れが多くなったような気がする。いまや京浜女子大は過去のこと、鎌倉女子大学が松竹跡地にできたことにより、工業都市から文教地区、住宅地区に変貌しようとしている。
三菱の大船製作所は無くなり研究所となり、資生堂も近々閉鎖、昔ザリガニ釣りに行った東洋高圧跡地はマンションになり、JR大船工場は住宅地に変わりつつあり、世の移り変わりを見る思いである。これからの鎌倉の発展は神社仏閣のみならず文教都市、研究都市、としての役割を果たしていかなくてはならないと思っている。そして大船のもうひとつ外側玉縄から城廻には鎌倉野菜というブランド野菜が人気になっている。これも新しい鎌倉のシンボルになりそうなアイテムとして育てていかなければならないと思っています。
旧鎌倉だけが鎌倉ではないという事の証明を当事者だけでなく、訪ねることにより歴史や産物、人たちとの交流を図って鎌倉を盛り上げなければならないと思っています。転入してくる人が多い大船地区には鎌倉の起爆剤としての大きな役割を果たしてもらいたいと期待しています。