承前です。
1960年代、ハワイ旅行は夢の夢でした。
しかし富豪の3男である安雄は旅することができます。
そしてそこで知り合った建築家・ウィリーに安雄は女装させられます。
ウイリーは、彼を半裸にして、自分から入念な化粧をほどこしはじめた。
下地をつくり、目ばりを入れる。
眉墨を刷く。
もともと美男子であった藤島安雄は、たちまちにして綺麗な女性の顔にと、変化していった。
濃い目のルージュを塗り終わると、鏡の中にいるのは、別人のような美女である。
〈これがぼく!〉
安雄は、感動していた。
まるで嘘のようであった。
ウイリーは、恍惚として彼を眺め、
「カツラをかぶるかい?」
「ええ、喜んで!・」
彼は、声を弾ませた。
ウイリーは、大きなトランクを持ち出して来た。
「これはね、ぼくの財産なんだ!」
白人の建築家は言った。
「というと?」
「開けてみたまえ」
ウィリーは微笑する。
トランクの中には、いろんな女性用品がはいっていた。
ブロンドや、ブルネットのカツラ。
さまざまな飾りのついたパンティ。
色の鮮やかなブラジャーや、スリップ。
白、赤、黒のエナメルのハイヒールが三足あり、いずれも新品であった。
安雄は、ブロンドのカツラを、ためらうことなく頭にかぶった。
「美しい! 女、いや、それ以上だ」
ウイリーは、彼にブラジャーをつけ、ストッキングをはくことを要求した。
「靴も、はいてくれないか……」
ウイリーは言った。
ハイヒールは少し大きかったが、鏡の前にたたずんだ安雄は、それこそ、うっとりとなる。
〈ああ! 女になった〉
彼は、そう叫んだ。
股間の邪魔なものがなければ、文句なしに女である。
安雄は、そんな姿で、ウイリーの愛撫をうけた。
生まれて初めての体験だけに、刺激もつよく、興奮はいやが上にも増すばかりである。
藤島安雄はそのとき、外国へのがれて来た甲斐があった……と、しみじみ思ったのである。
出所『美男奴隷』(梶山季之)
kindleで読めますね
1960年代、ハワイ旅行は夢の夢でした。
しかし富豪の3男である安雄は旅することができます。
そしてそこで知り合った建築家・ウィリーに安雄は女装させられます。
ウイリーは、彼を半裸にして、自分から入念な化粧をほどこしはじめた。
下地をつくり、目ばりを入れる。
眉墨を刷く。
もともと美男子であった藤島安雄は、たちまちにして綺麗な女性の顔にと、変化していった。
濃い目のルージュを塗り終わると、鏡の中にいるのは、別人のような美女である。
〈これがぼく!〉
安雄は、感動していた。
まるで嘘のようであった。
ウイリーは、恍惚として彼を眺め、
「カツラをかぶるかい?」
「ええ、喜んで!・」
彼は、声を弾ませた。
ウイリーは、大きなトランクを持ち出して来た。
「これはね、ぼくの財産なんだ!」
白人の建築家は言った。
「というと?」
「開けてみたまえ」
ウィリーは微笑する。
トランクの中には、いろんな女性用品がはいっていた。
ブロンドや、ブルネットのカツラ。
さまざまな飾りのついたパンティ。
色の鮮やかなブラジャーや、スリップ。
白、赤、黒のエナメルのハイヒールが三足あり、いずれも新品であった。
安雄は、ブロンドのカツラを、ためらうことなく頭にかぶった。
「美しい! 女、いや、それ以上だ」
ウイリーは、彼にブラジャーをつけ、ストッキングをはくことを要求した。
「靴も、はいてくれないか……」
ウイリーは言った。
ハイヒールは少し大きかったが、鏡の前にたたずんだ安雄は、それこそ、うっとりとなる。
〈ああ! 女になった〉
彼は、そう叫んだ。
股間の邪魔なものがなければ、文句なしに女である。
安雄は、そんな姿で、ウイリーの愛撫をうけた。
生まれて初めての体験だけに、刺激もつよく、興奮はいやが上にも増すばかりである。
藤島安雄はそのとき、外国へのがれて来た甲斐があった……と、しみじみ思ったのである。
出所『美男奴隷』(梶山季之)
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