小嶋つうしん(号外)

(元)大分県議会議員 小嶋秀行の徒然ブログ

八ツ場ダム

2010年05月29日 | 社会
 大分市議会建設常任委員会で、八ツ場ダムの視察を行いました。目的は、鳩山政権で国土交通省が、本体工事にとり掛っていないダムについては「中止」という判断をしたことから、大分市でも、大分川ダムがそうした考え方に該当することから、今後の対応について、どのように考えているかを含めて、調査に赴きました。

 八ツ場ダムは、これまで56年間かけて工事を行っていますが、未だ本体工事に取り掛かっていないのはなぜなのか、個人的には大きな関心がありましたが、それが良く分かりました。

 この八ツ場ダム建設の目的は、「地域の生活再建」という事がメインであることでした。普通、ダム建設となると、「治水」や「利水」がメインです。もちろんこの地域にも「治水」という目的はありましたが、「治水」という観点では、工事を始める前を含め、それ以降56年間洪水など起きていないことからすればその目的も、本当にそうなのか疑問でした。

 また、「利水」という目的もありますが、実はこの地域は、温泉保養地として名だたる地域が多く、全国的にも有名なところで、水質と言えば「利水」に適しない酸性の水質。その対策として、ダム上流に「蒸留」する施設が必要なことが分かり、これを追加建設したということも説明の中にありました。したがって、4600億円という莫大な工事費になっているのだと思います。

 「利水」は、東京都、埼玉県、千葉県の3都県が出資して「水確保」ということらしいのですが、これも、これまで工事を開始して56年間、水の問題で大問題が発生している訳ではないので、これらを総合して考えれば、実は、このダム工事に乗じて、持続的に土木工事を大企業に出し続けることに目的があるのだと言えなくもありません。

 現地の担当者(国土交通省の職員)が、ダム建設の場所をバスで案内してくれましたが、地形からすれば、「ダム建設に適している場所」で、大分川ダムのように山と山の間の谷が深く、「こうした地形を見れば、ダムを造りたくなるよなァー」と一緒に行った議員と、顔を見合わせて笑いました。

 前述の通り、4600億円という巨費が投じられていますが、予算の執行率は75%だそうです。湖底に沈む予定の集落(民家)を移転させるための代替地の造成、流域約5Kの河川に3本もの大きな橋を建設する。JR吾妻線も湖底に沈むことになることから、山の中腹に新たな架線のためのトンネルを掘っていました。県道も国道も湖底に沈みますから、全て「付け替え」工事を実施しています。

 八ツ場ダムがテレビで話題になるとき、映像に出る(象徴的な)大きな橋は、第2番目の橋で、その橋もあと少しで完成するところまで来ていました。いろいろなことを説明していましたが、何処を聞いても、これだけの巨費を投じてのダム建設が、本当に必要なのかどうか、ますます疑問がわいてきました。

 この八ツ場ダム建設の目的は、冒頭述べたとおり、表向きは「生活再建」が主ですが、実は、持続的に土木工事を出し続けることに大きな意義があるだけの、大型プロジェクト以外の何物でもないことを見て取ることができました。

この点、大分川ダムに関して、人口減少の現在、「治水」も「利水」も、かねて主張している通り、周辺の山間地域において、山林を涵養し「保水力」の高い山を作るための公共工事の方が安くできるし、それこそ「持続的」に工事を出し続けられるのではないかと感じました。

今回の八ツ場ダム視察で、国土交通省の職員からは、ダム本体工事中止に伴う、その後の対策について、詳細な説明は聞くことができませんでした。というより、「政策的な事は、説明できないのです」とのことでした。

規模の差はあれ、大分川ダムの本体工事建設に取り掛かれるのかどうか、瀬戸際ですが、今後、情報収集を含めて、しっかり対応していかねばならないところですが、社会的な評価の中で無駄な公共工事となれば、税金の無駄遣いは避けねばなりません。

 平成22年度、国の予算では、公共工事の前年対比18%が削減されています。この中に八ツ場ダム建設が入っています。前政権では、継続して行う公共工事に対し、何の疑問も持たず「官僚主導」で予算を構築してきた弊害が、こういうところに出ているのだと、改めて確信を得ました。