小嶋つうしん(号外)

(元)大分県議会議員 小嶋秀行の徒然ブログ

進む高齢化社会の中で実際に起きている事

2021年10月26日 | 社会
 本年6月、大分市内で介護疲れから、実母を殺めるという大変不幸な事件が発生ました。介護保険制度を十分活用していなかったという内容の報道もありました。また、近所との付き合いも少なく、なぜそうなったか、新聞報道では「介護に疲れた」とのことでした。
 この事件をきっかけに、議会で「介護保険制度の将来」について質問を行い、いわゆる「ケアラー」(介護者)の実態についても十分な調査を行う必要性を問いました。県は、その必要性を認め、「自治会や民生委員さんなどとの連携もこれまで以上に必要だ」と述べました。
 介護保険制度の基本は「在宅介護」であり、「介護の社会化」として20年前に制度ができました。その後、紆余曲折を経て今日の姿になっていますが、現在は「地域包括支援システム」が整備され、かつ「施設介護」の条件は「要介護3」以上の被介護者であることとされています。
昨年の段階で「要介護3」以上で、施設入所待機者が3000人を超えていると言われ、そのそれぞれの被介護者に寄り添う、家族を中心とした「ケアラー」(介護者)がいるとするならば、そうした方々に対する早期の調査と対策が必要ではないか、二度と県内で同じような不幸な出来事が起きないよう手を打つ事を求めました。
 その矢先、10月に今度は別府市内で、義理の親を殺めるという事件が発生しました。この事件の場合は、事件捜査中であることから、詳細は不明ですが、親の介護に関して介護保険の手続きをとる段階で発生したといわれておりますから、6月の事件の様に長期間にわたる介護ではなかったようです。
親など(被介護者)が、認知症などを発症していればなおの事、ケアラーと呼ばれる方の苦労は並大抵のものではなさそうです。この問題を長期間調査研究している日本福祉大学 湯原悦子教授は次の様に述べています。
 「介護殺人が生じる世帯の多くは、自らの困難に対処する力を失っている。これらに対応するためには、適切な判断と支援を行える第三者の介入が不可欠である。もし危機介入が必要な場合でも、実際に介入を可能とするシステムが地域に整備されていなければ、本人の尊厳の保持や自立生活の支援だけでなく、家族もその人らしい生活が送れるように、という理念は絵に描いた餅になってしまう。保険医療福祉領域の専門職が適切に介入していくためには、公的責任による介護者支援のシステム整備が不可欠である。それなくして自助と互助を支援の拠り所にするのであれば、介護殺人の発生を防ぐことは難しい」と。(湯原悦子著 介護殺人の予防(介護者支援の視点から)より転載) 地域包括支援システムの真価が問われていると言えましょう。

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