武器はガチャ、そして(4)

2016-11-02 22:08:27 | SF小説

太陽からの電磁波による磁気嵐が収まり、通常の生活が戻ったが、磁気嵐が通過した一ヶ月後の朝、とっくに太陽が昇る時間なのに太陽の光が届かず、薄暗い中で直之が目を凝らして外を見てみると黒い霧のような物が流れているのでテレビをつけると、ニュースで黒い霧の発生を伝えていた。

「ただ今、全国的に大気汚染物質のような黒い霧状のものが発生して、西から東の方角に流れています。PM2.5と思われますが、その物質の成分を分析中ですので、国民の皆様は外出を控えて、家の中に外気が入らないようにして、霧のような物質の通過を待ってください。」

そして、続けて
「黒い霧のような物質の成分を分析中ですが、PM2.5や大気汚染物質ではない模様です。引き続き分析を行っていますので、分かり次第お知らせします。」
と広報を行っていた。

科学推進省では太陽からの磁気嵐に関係する物質ではないかと議論されていたが、今まで地球上で分析された物質とは異なり、微小な粒子の一つ一つが回転しているのと、光を反射しないので顕微鏡で観察することができず、成分分析機でも成分は何も検出されないので、結論は出せないままとなっていた。
ただ一つ、エネルギー観測機には反応があったがマイナスの反応なので観測機の故障と考えられていた。

科学推進省の局長の山上久志が
「次のニュースで国民に向けた発表をしないといけないが、今までの分析結果では国民がより一層不安になるだけではないだろうか?」
とつぶやいた。
「そうですね山上局長、あいまいな結果の発表では混乱を招くだけですね。」
と、技官の篠山徹も困惑気な表情で応えた。
「いや、分析結果がでていなくても現状を発表して、分析を継続中だと伝えるべきである。」
と局長の山上久志は意を決して、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
そして、科学推進省の会議で、結論が出ないまま議論を行ってきたが、会議の集約結果として、現状の事実のみの発表とし、分析を継続しているとして、次のような公式の発表を行う事にした。

「只今、全国的に黒い霧状のものが発生して西から東の方角に流れている模様です。これは、大気汚染物質と思われますが、その物質の成分を只今分析中です。九州地方では既に黒い霧のようなものが無くなりつつありますので、国民の皆様は外出を控えて、家の中に外気が入らないようにして、黒い霧のような物質の通過を待ってください。成分が判明しましたら追って報告をいたします。」

このニュースを聞いていた直之は、
「ねえ、お父さん、この黒い霧みたいなものは何なのかねえ。」
と、直之が言ったが、父親の新二郎にもわからず
「何なのかねえ。」
とオーム返しの返事しかできなかった。

そして、その黒い霧のような物質は半日かけて流れて行き、夕方には日の光が戻って来た。
科学推進省の中では
「山上局長、あの黒い霧のようなものは何だったんでしようね?」
「結局わからないままだったね。」
「マイナスのエネルギーが検出されたが、観測機の故障ではなくマイナスの力を持っていたのではないかなあ。とにかく、今の地球には存在しない未知の物質だと思われるね。」
と局長の山上久志は、困惑の表情を浮かべてつぶやいた。