武器はガチャ、そして(13)

2016-11-11 21:28:29 | SF小説
第十二章 地震発生

新二郎の携帯電話の緊急地震警報が鳴り響き、程なく揺れが始まったが、揺れはそれほど大きくはなく直ぐに治まった。
「お父さん、ビックリしたね。」
「そうだね。」
その時、科学推進省では地震の脅威を深刻に考えていた。

「今はガチャの容器は地下の緊急用の備蓄倉庫にステンレスの箱に入れて保管しているが、地震がもっと大きくて、この建物が倒壊してステンレス容器がつぶれたら、ブラックホールの容器のガチャも破損して、ブラックホールがむきだしになってしまう。これは、多くの容器の内、一個でも破損するとその中のブラックホールが他の容器を次々と呑み込み急激に巨大化して地球自体が呑み込まれてしまう可能性がある。」
「それでは、保管する建物は日本一頑丈な日銀の地下金庫にして、ブラックホールを入れたガチャの容器は厚さ10センチのチタン合金の容器に一個ずつ入れるようにしよう。これだと100トンの破壊力に耐えられる。」
「100トンの破壊力を例えるとどれくらいなのかね? 1トンの鉄球が100mの高さから落ちてきた時の衝撃と同じかね?」
「イメージとしては、そういうことになりますね。」
「しんかい6500は厚さ7.35センチのチタン合金でできていますし、溶接部分の強度を保つために原子力発電所で使われる真空中でビーム溶接されています。ですから6500メートルの深海の圧力に耐えられているのです。是非この技術を活用しましょう。」
「それでは仮に地震で建物が倒壊しても大丈夫だな。それでは、その案を進めよう。」
その方針に従い、チタン合金製の容器の作成と、日銀の地下金庫への搬入が開始された。
「このチタン合金の容器にガチャの容器を一個ずつ入れるんだ。」
「このオモチャを入れるんですか?」
「そうだよ。いつ地震が発生するか予測できないから早く終わらせよう。」と科学推進省の若手技術者が不安を抱えて語った。

その作業中にも余震が発生してヒヤリとさせられたが、無事に全てのガチャの容器をチタン合金の容器に入れて日銀の地下金庫に保管することができたので、全員がほっとしている時にも、また余震が発生した。
「無事に終わって良かったね。しかし、これは老婆心ではなく現実の脅威だからね。」
こうして任務遂行を終えた科学推進省のメンバーは事務所に帰って行った。