第四章 浮遊する黒点
新二郎が書斎の日だまりで小説を読んでいて、窓の外に目を向けるとそよ風が吹いており、庭の草がかすかに揺れている。そして、また本に目を向けたが何か気になり、椅子から立ち上がって窓の外に目を凝らして見てみると、小さな黒い点のようなものが風に流されて行き、ついには見えなくなってしまった。
「何か変だなあ。」
と思い、目を凝らして見てみると小さな黒い点が一個、二個とゆっくりと風に流されていくのに気が付いた。
そして、新二郎は妻の裕子と長男の直之を呼び、
「あの黒い点のような物質は何なんだろうかね?」
「お父さん、この前の黒い霧みたいなものより大きいね。それにブルブルと震えているように見えるね。」
「また向こうから一つ来ますよ。」
と妻の裕子が指さした。
新二郎はふと黒い霧が通過していったことを思い出し、黒い霧の一部がまだ地球に残っていたのではないかと考えた。特にマイナスのエネルギーを持っていたとの観測データを科学推進省の知り合いから聞いていたので、黒い霧のような物質が呑み込む力があるのではないかと想像した。
直之が自分の部屋からガチャの容器を持ってきて家の外へ出て行ったのを見た新二郎は
「危ないからよしなさい。」
と言ったが、直之はガチャの容器の蓋を開けて黒い物質を捕獲しようとした。
しかし黒い物質は風に流されて上空に飛んで行ってしまった。
「残念だなあ、捕れなかった。」
「危ないからよしなさい。お父さんからも言ってください。」
と、母親の裕子が注意した。
科学推進省の局長の山上久志は、省内の現状分析会議で太陽の活動期による太陽風の地球到来が増している事、そして各地で目撃されている浮遊する小さな黒点との関連の可能性を挙げ、重大な関心を持って観測を継続するように指示を出した。
また、黒点は非常に小さくて目撃されることも少ないために発見は困難であるが、地球の将来に大きく影響を及ぼす事が懸念されることも付け加えた。
大学の宇宙線研究所の筑波新から、大学内に黒点が漂っているとの連絡を受け、科学推進省の篠山徹や宇宙航空研究開発機構の技術者である丹波幸助らが駆けつけてきた。
黒点は殆ど停滞していてゆっくりと上下している。
今までの目撃情報のそよ風に流されていたのとは異なり、手の届かない高さでほぼ停滞していて、今までの目撃情報より大きいように思われる。
大学の学生たちが黒点を捕獲する方法を話し合ったが、丹波幸助は黒点物質の実体が解明されていないので危険性があり、捕獲は断念するように説得し、映像とレーザー光線照射による分析の記録にとどめて観測を続けた。
しかし、太陽光もレーザー光線も吸収されて反射しないので実体は掴めないままとなっていた。
やがて黒点は上昇気流に乗って上空に流れて行き捕捉できなくなってしまった。
丹波幸助は研究室に戻り、いろいろな角度から映したビデオを再生したり、レーザー光線による解析データを調べたりしたが、黒点の成分は推測の域を出なかった。
「う~ん、何もわからないなあ。大体においてマイナスのエネルギーなんてありえないよ。それに、なんの力も加わっていないのに回転しているように見えるのはなぜなんだろうか?」
と、丹波幸助の疑問は残ったままであった。
新二郎が書斎の日だまりで小説を読んでいて、窓の外に目を向けるとそよ風が吹いており、庭の草がかすかに揺れている。そして、また本に目を向けたが何か気になり、椅子から立ち上がって窓の外に目を凝らして見てみると、小さな黒い点のようなものが風に流されて行き、ついには見えなくなってしまった。
「何か変だなあ。」
と思い、目を凝らして見てみると小さな黒い点が一個、二個とゆっくりと風に流されていくのに気が付いた。
そして、新二郎は妻の裕子と長男の直之を呼び、
「あの黒い点のような物質は何なんだろうかね?」
「お父さん、この前の黒い霧みたいなものより大きいね。それにブルブルと震えているように見えるね。」
「また向こうから一つ来ますよ。」
と妻の裕子が指さした。
新二郎はふと黒い霧が通過していったことを思い出し、黒い霧の一部がまだ地球に残っていたのではないかと考えた。特にマイナスのエネルギーを持っていたとの観測データを科学推進省の知り合いから聞いていたので、黒い霧のような物質が呑み込む力があるのではないかと想像した。
直之が自分の部屋からガチャの容器を持ってきて家の外へ出て行ったのを見た新二郎は
「危ないからよしなさい。」
と言ったが、直之はガチャの容器の蓋を開けて黒い物質を捕獲しようとした。
しかし黒い物質は風に流されて上空に飛んで行ってしまった。
「残念だなあ、捕れなかった。」
「危ないからよしなさい。お父さんからも言ってください。」
と、母親の裕子が注意した。
科学推進省の局長の山上久志は、省内の現状分析会議で太陽の活動期による太陽風の地球到来が増している事、そして各地で目撃されている浮遊する小さな黒点との関連の可能性を挙げ、重大な関心を持って観測を継続するように指示を出した。
また、黒点は非常に小さくて目撃されることも少ないために発見は困難であるが、地球の将来に大きく影響を及ぼす事が懸念されることも付け加えた。
大学の宇宙線研究所の筑波新から、大学内に黒点が漂っているとの連絡を受け、科学推進省の篠山徹や宇宙航空研究開発機構の技術者である丹波幸助らが駆けつけてきた。
黒点は殆ど停滞していてゆっくりと上下している。
今までの目撃情報のそよ風に流されていたのとは異なり、手の届かない高さでほぼ停滞していて、今までの目撃情報より大きいように思われる。
大学の学生たちが黒点を捕獲する方法を話し合ったが、丹波幸助は黒点物質の実体が解明されていないので危険性があり、捕獲は断念するように説得し、映像とレーザー光線照射による分析の記録にとどめて観測を続けた。
しかし、太陽光もレーザー光線も吸収されて反射しないので実体は掴めないままとなっていた。
やがて黒点は上昇気流に乗って上空に流れて行き捕捉できなくなってしまった。
丹波幸助は研究室に戻り、いろいろな角度から映したビデオを再生したり、レーザー光線による解析データを調べたりしたが、黒点の成分は推測の域を出なかった。
「う~ん、何もわからないなあ。大体においてマイナスのエネルギーなんてありえないよ。それに、なんの力も加わっていないのに回転しているように見えるのはなぜなんだろうか?」
と、丹波幸助の疑問は残ったままであった。