飛べない妖精(2)

2016-07-21 21:50:50 | 童話
あなたはだぁれ?』
『私はフィンランドから来た妖精よ。』
『本当に妖精なの?』
『ええ本当よ。』
『あなたには羽根が無いし、大人でしょ。』
『ええ、そうね、妖精も大人になるのよ。そして大きくなると羽根が無くなるのよ。』
『ふぅ~ん。それでは今すぐ、ここで虹を出してちょうだい。』
『ええ、いいわよ。』

妖精の私が手を左から右へ大きく振ると、女の子の目の前に虹が現われた。
『わぁすごい、本当に虹だわ。』
『きれいでしょ。』
『うん、すごくきれいね。』
『お母さん、さっきの映画の妖精は本当にいるの? 絵本の中にも出ているでしょ。』
『そうねぇ、どうかしら。』
『わたし妖精に会いたい。』
『そうねぇ、会えるといいわね。』

妖精の私の前を歩いている親子が話しているが、私が妖精だとは気が付かない。
私は羽根も無く、空を飛べないが、人を幸せにすることができる。
『ええ、妖精は本当にいるのよ、私が妖精よ。』
と言いたかったが、妖精の国では、自分から妖精だと言うことができないのです。


飛べない妖精(Ⅰ)

2016-07-20 21:51:18 | 童話
わたしは小学生のときに、いつも音楽の勉強で先生にほめられていました。
音楽以外の勉強は普通かな。
だから大きくなったら歌手になりたいと思っていたけれど、急に妖精になりたいと思いだしたの。
いや、妖精になると決めたの。
お母さんに
『どうして妖精になろうと決めたの?』
と聞かれても自分でも分かりません。

そして、図書館で妖精になる方法を調べましたが、妖精になる方法を書いた本は有りませんでした。
だけど、北極に近いフィンランドという国に妖精がいると書いている童話を見つけたの。

だから、わたしはお母さんに
『わたし大きくなったらフィンランドへ行くの。』
と言いました。
するとお母さんは、
『外国へ勉強に行くのは素晴らしい事だけれど、日本でいっぱい勉強しないと外国へは行けないわよ。』
と言ったので、わたしは一生懸命に勉強することにしたの。

そして、わたしは中学、高校、大学そして大学院で勉強をして、あこがれのフィンランドで歌の勉強と妖精になる勉強をすることができるようになったのです。
歌の勉強は努力して、もっともっとうまくなりました。
だけれど、妖精の勉強は日本人には難しかったです。

わたしは5年かかって、やっと妖精になれることができました。
だけれど、大きくなって妖精になったので羽根は有りません。
だから空は飛べないのです。

グー、グー、グー(3)

2016-07-19 21:30:16 | 童話
僕が目をさますと、映画のスクリーンの中では、ロケットから大きなアンテナを出して、電波の来ている方角と距離を測っていた。

クルーたちが
『この方角のまま、あと3日飛ぶと電波を出している星に着くね。』
『そうだね、このまま流星に気を付けて飛んで行こう。』
と話しをしていた。

そして、3日後にロケットの船長が
『順調に飛行しているので、あと5時間で目的地に着きます。』
とクルーのみんなにアナウンスした。

『あと5時間か、やっと着くね。』
『どんな星で、どんな生き物がいるのだろうかなぁ。』
『間もなく着陸します。』

ロケットの外に出るので、みんな宇宙服を着た。
ロケットの外へ出て周りを見渡したが、赤茶色の土と岩以外は何も見つからなかった。

そして、宇宙用の自動車で少し高くなった丘の上に登った。
すると、丘のふもとに宇宙船が有るのを発見した。
『あれはっ、XY星の探査に成功し、5年前に地球に帰還する時に流星とぶつかって行方不明になった無人の探査機だ。』
と船長が言った。

探査機は遭難信号を地球へ何年間も送り続けていたのだ。
そして、丘を下りて行って探査機に乗り込んだ。
『XY星にしか無い、新たなエネルギー物質は無事だ。この貴重なデータを持ち帰ろう。』
と船長は喜んだ。
そして、クルー全員でエネルギー物質を僕達のロケットに乗せた。

『これから地球に向って飛んで行きます。』
ロケットはゴーと大きな音をたてて、飛び立った。
しばらく飛んでから
『帰りは土星や火星には寄らずに、そのまま地球に向って飛行するらしいから、ロケットの中で寝るよ。』
とお父さんが言った。
今度起きたら僕はどこにいるのかなぁと思った。

『今日は日曜日でも、早く起きなさい。お父さんと一緒に宇宙探検の映画を見に行くのでしょ。』
『あれっ、今度は家の中だ。ロケットの中でも、映画館の中でもないや。まだ映画館へも行っていないのだった。
本当の僕は今どこにいるのかなぁ?』

              おしまい

グー、グー、グー(2)

2016-07-18 06:50:24 | 童話
『起きなさい、映画が始まるよ。』
僕はお父さんに起こされた。
『あれっ。ここはロケットの中ではなく、映画館の中だ。おかしいなぁ。』
そして、映画が始まった。

外国の小さな町の、中心部から遠く離れた草原の中に家が有り、その家には老人夫婦が住んでいる
この老人夫婦の家のテレビに、毎日同じ時間にビビッ、ビビッと雑音が入ってくるのだ。
少し離れた家のテレビには雑音は入らないので、この老人夫婦に対する宇宙からメッセージではないかと、天文学者と生物学者と通信技術者が調査を行なった。
そうして、大きな電波望遠鏡を作り、時間をかけて調査すると、宇宙からのメッセージだと確認ができたので、電波の来る方角にある星の調査を行うことにしたのだ。
そして、多くの技術者が乗り組んだロケットが打ち上げられ、宇宙探検が始まった。
永い宇宙旅行なので、火星と土星を経由して飛んで行く計画である。

永い時間の映画なので、火星に着いた時間で10分間の休憩があった。

『土星に近付いてきたので起きなさい。』
とお父さんに起こされた。
僕は火星を出発してからずっと寝ていたんだと言われた。
『あれっ、またロケットの中だ。さっきは映画館の中だったのに、おかしいなぁ。』
ロケットの外を見ると、土星の大きなリングが見えた。

『わぁ、きれいだね。お父さんの言ったとおりだね。』
『ああ、きれいだね。前に土星に来た時に見たのと同じだね。』
『また、土星の基地で休憩するの?』
『そうだよ、最後の休憩だね。』
そして、ロケットは土星に着いた。

『やっと土星に着いたね。地球に向って電波を出している星はもう少し遠いらしいよ。』
『どんな生き物か楽しみだね。』
『今晩は、この土星の基地の休憩室で寝るよ。』
『うん、分かった。だけれど、今度起きたら僕はどこにいるのかなぁ?』

グー、グー、グー(Ⅰ)

2016-07-17 06:52:47 | 童話
今日はお父さんと宇宙探検の映画を見に行く日だ。
昨日はワクワクしてなかなか寝られなかった。
今は月へ人間が行っているし、火星では探査の電気自動車が走って、写真を地球に送ってきている。
僕が大きくなった時は、宇宙のどこまで行けるようになっているのかなぁ?

今日の映画は、遠い宇宙のはてから、人間にメッセージを送ってきている星を探しに行くらしいんだ。
どんな生き物がいるのかなぁ。

『もうすぐ火星に着くから起きなさい。』
僕は昨日あまり寝られなかったので映画を観ながら寝てしまったのかなぁ。

『火星でロケットに燃料を補充している間、火星基地の中で休憩するよ。』
僕はお父さんに起こされた。

『あれっ、ここは映画館の中ではないや。』
『ロケットから基地の休憩室へ行くまでの間は、宇宙服を着るルールになっているんだよ。』
『うん、分かった。だけれど、僕は今、映画を観ていたんだけれどなぁ。』
『また同じ席に座るから荷物はそのままでいいよ。早く、休憩室へ行くよ。』
『う、うん。変だなあ。』
僕は変だなあと思いながら、お父さんや他のクルーと一緒に基地の休憩室へ行った。

休憩室は大きなドーム型で、全体がガラスのように透明になっていて、ロケットに燃料を入れている所がよく見えている。周りは暗いが空にはたくさんの星が輝いている。

『うわっ、きれいだなぁ。』
『そうだね、お前は初めての宇宙旅行だったね。』
『うん、そうだよ。宇宙はすごいんだね。』
『サンドイッチを食べたら、またロケットに戻ろうか。』
『今度はどこまで飛んで行ったら休憩するの?』
『土星かな?』
『大きなリングのある星だね。』
『そうだよ。リングは近くで見ると、写真よりずっときれいだよ。』
『お父さんは土星に行ったことがあるの?』
『ああ、お前と同じくらいの子供の時に、一度行ったことがあるよ。』
『ふぅ~ん、すごいね。』

そして、ロケットは土星に向って飛行を続けた。