言の葉花壇

何度聞いても美しい日本語に、今日もマナ女とカナ女がにぎやかに呟きます。ぜひお気に入りを見つけてください。

散らまく惜しも

2017年11月22日 | 万葉集
第 1517
◆ ◆ 長屋王歌一首
味酒 三輪の祝の 山照らす 秋の黄葉の 散らまく惜しも
長屋王 ◆ ◆
     
万葉集 第八巻 より

::: 読み :::

うまさけ みわのはふりの やまてらす あきのもみちの ちらまくをしも

::: 意訳 :::

三輪神社で神職が奉仕しているその山を、照らすばかりに色づいた秋のもみじが散ってしまうのは惜しまれることよ

秋の紅葉の散りゆくのを惜しむ歌やね
でも、詠み手が長屋王という事で、ちょっと斜めから見てみるわ。
長屋王は奈良時代の大臣で、対立する藤原氏の陰謀によって謀反を密告され、 藤原宇合(ふじわらのうまかい)らの率いる軍勢が長屋王の邸宅を包囲して、 家族と供に即日自害させられるのよ。
後に密告は「誣告 (虚偽の告訴・告発) 」 であると『続日本紀』に記載されてるわ。
無実の罪やった「長屋王の変」 やね。
味酒(うまさけ) は三輪にかかる枕詞。
祝 (はふり)は、神官の役職の一つ。
黄葉(もみじ)は紅葉のことで、万葉集ではほとんどが黄葉を使ってるけど、 長屋王の子供に黄文王(きぶみのおう)という人がいて「味酒 (うまざけ)」「ウマ」宇合「ウマ」にかけて 黄文王を助けて欲しいと願ったのでは? とも解釈できるわね。
実際、黄文王藤原不比等の外孫だった事もあって死を免れているわね。
政治的陰謀渦巻く時代の有名な悲劇のひとつやね。