鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

168 冬枯の彩り

2020-11-19 13:44:00 | 日記

暦では立冬も過ぎたが鎌倉の山々はまだ秋色だが、昨日今日はようやく冬色の草葉も見られるようになった。

小春の陽が差す野の道は隠者には居心地が良く、好みの音楽を聴きながらの散歩は我が晩生には欠かせない楽しみとなっている。

季節の変わり目は日々色彩の変化があるので面白い。


我家の門前で蜘蛛の糸にぶら下がって揺れる枯葉。

丁度良い角度で冬陽が差して逆光に輝いている。


ーーー蜘蛛の糸枯れ際の葉の彩りを 絡め捕らへて虚空に飾るーーー

例のオールドレンズの淡めの発色が、初冬の空気感に合っている。

更に言えば一眼のレンズによる背景のボケは肉眼では不可能なので、ファインダーを覗くだけでも異次元の視覚を得られて楽しい。


枯れ切る前の草木に残る色味は2〜3日で失せてしまうので、最も良い時を見逃さないようにしよう。


ーーー楽園の金色の陽が枯草の 最期に残る色を照らしぬーーー


晩秋初冬の山野の枯れ色は乾いた明るさがあり、陽の温もりや有難味を感受し易い。

枯景色をより深く味わうには、そこに花咲き乱れ蝶や小鳥が舞い踊っていた時を想い浮かべ、全てが凍てつく時を観想すると良い。

古人の言う「冷え枯れ」の美意識はそこにある。

己れの過ぎ去りし栄光の時を想い、やがて来る寂滅の時を想うのだ。


夕方近くの残照はノスタルジックな色合いで、闇の迫る楽園の一刻を荘厳に見せてくれる。

画家としてこの景を描くなら、十色以上の豊富な褐色系の使い分けが必要だろう。

風景画ではこの褐色系の下地を施した上で春夏の緑を乗せるのが、大地の厚みを出す基本となっている。

さあ画室に戻って今日見つけた新色を試してみよう。


©️甲士三郎