近年私が力を入れている鎌倉文士物の蒐集で、中心になっているのはやはり高浜虚子だ。
本でも色紙短冊でも俳句関係は詩や短歌に比べれば断然安く、総じて半額以下で手に入る。
句集は以前にも紹介したので、今回は100年前の虚子主催の俳句雑誌「ホトトギス」だ。
大正10〜15年頃の物で、山口誓子の樺太の句を虚子秋桜子達が講評していたりする。
誓子もまだ新人時代で、今見ると大変興味深い。
虚子には月の句が沢山ある。
秋はどの月齢にもそれぞれ良さがあるので、月の句は11月まで飾っても飽きない。
「月の坂高野の僧に逢ふばかり」
書額を仏性に見立てて、脇に地物の鎌倉野菜と花をお供えしてみた。
句には泉鏡花の高野聖を思わせる幻想味があって、この世ならざるファンタジックな景が見えて来る。
この句はどの句集にも出ていないが、虚子一行の高野山での句会記にあった。
もうひとつは良く知られた虚子の名句だ。
「ふるさとの月の港をよぎるのみ」
短冊に燭を灯し近所でもらった毬栗と茸を飾れば、ちょっとした収穫祭の気分になる。
虚子は書も一流なので、それほど名作ではない句でも時節に応じて飾れる。
しかも結構沢山書いていて良く出回る上に価格もお買得だから、私もこの調子で四季それぞれ揃えるつもりだ。
実は冬と正月向きのとっておきの軸もあるので乞うご期待。
©️甲士三郎