近年は我が門前の銀杏がいくら散ろうとも落葉掃きもせず、疫病禍で客も無いので無為に自然に任せている。
今日はそんな落葉を食卓に敷いて初冬の彩りとしてみよう。
銀杏の色に合わせて、器は古色の出た西洋アンティークの真鍮を主に使おう。
料理は出来合いの物に一手間加えるくらいだが、減塩のためスープだけはちゃんと自作している。
銀杏落葉の暖かな色味が思った以上に効果があり、心豊かな食卓となった。
もっとも私の食べられる量はこの内3割ほどでしか無い。
ーーー食細き病者の卓を燭の色 落葉の色に染めて温もるーーー
食後の珈琲は明治大正頃を思わせる茶器で。
小さな黒猫は如何にも大正浪漫風の造形で、古赤絵のポットの草花模様と共に野の景となる。
コーヒーカップは志野の筒茶碗。
当時ハイカラだった洋式茶にも、鎌倉文士風に句歌など嗜むのが隠者の暮しだ。
今日の買物散歩時の句も仕上がった。
ーーー残菊の家が最初に灯る路地ーーー
ついでに今日の写真も仕上げておこう。
これまでたびたび出て来た、我家の隣の大塔宮首塚山。
オールドレンズのやや褪せた柔らかな色調が、地味な鎌倉の晩秋には丁度良い。
ーーー小魚は秋陽の底で向き向きにーーー
温暖な鎌倉の寺社は12月が紅葉の見頃で、その根元にはもう水仙が咲いていたりする。
温暖化の影響も大きいが、一年中花の絶えない楽園と思えばそれも諾うしかなかろう。
©️甲士三郎