「異常な生涯の果てに猟奇にして壮絶な死に様を晒したドイツの怪人、その畢生の研究成果を余すところなく網羅した暗黒の宗教書」
・「Unaussprechlichen Kulten(無名祭祀書)」、もしくは「黒の書」は、長年に渡って世界各地の遺跡や秘密結社を遍歴した19世紀前半のドイツの神秘学者「Friedrich Wilhelm von Junzt(フリードリヒ・ウィルヘルム・フォン・ユンツト)」が、生涯をかけて収集した秘儀伝承の数々を纏めた禁断の宗教研究書である。
・ガタノソア崇拝や「Stregoicavar(シュトレゴイカバール)」の黒い碑、ホンジュラスの「Temple of the Toad(蟇蛙の神殿)」についての記述があるほか、古代ピクトの戦闘王ブラン・マク・モーン崇拝、5月1日前日の「ベルテインの夜」の祝祭についても言及されている。
・1839年に、ドイツのデュッセルドルフで出版された、鉄枠のある黒く厚い革装丁の初版本は、暗澹たる内容からしばしば「黒の書」の異名で呼ばれている。
・元々、印刷された部数が非常に少なかった上に、発行の翌年、モンゴルへ旅行から戻ったばかりの「Friedrich Wilhelm von Junzt(フリードリヒ・ウィルヘルム・フォン・ユンツト)」が密室内で異様な死を遂げたことが喧伝されたため、恐れをなした多くの購入者たちが、この本を破棄してしまったという事情があり、現存する部数は極めて少なくなっている。
・「Friedrich Wilhelm von Junzt(フリードリヒ・ウィルヘルム・フォン・ユンツト)」は、自身が見聞した世界各地の遺跡や儀式を通じて、古い時代の暗黒の宗教が19世紀に生き残っていることを「Unaussprechlichen Kulten(無名祭祀書)」の中で論証している。
・その論旨は理路整然と筋立てて書かれた一部の箇所を除き、殆どが曖昧模糊とした記述で占められており、学術的価値は低く、狂人の戯言同然の書物と見なされている。
・しかし、ある種の知識に通じている人間であれば、断片的な記述をパズルのように並び替え、文章の奥に隠された真実の知識に辿り着くことができると言われている。