「知恵の女神であり、永遠の処女神として都市の守護神でもあるのだが、その出生は意外だった」
オリュムポスの十二神の多分に洩れず、彼女もゼウスのご道楽の賜物で、ゼウスが彼女を産んだのはトリトーン河の畔であったとか…… (間違いではありませんよ。ゼウスが産んだのです。まあ、全知全能であるからして可能なのかも…… )。
今回のお相手は巨人族の娘メーティス(叡智という意味)。ところが彼女には、とんでもない予言が付き纏っていた。それは、もし彼女が男の子を産めば、その子は父親を殺すであろうというもので、メーティスに手を出したゼウスだが、親殺しをするような子供は欲しくない。(まあ、当然と言えば、当然であるのだけれど)
だったら初めから止めておけばいいものを、「お前を愛したかっただけで子供はいらないんだ」というわけで…… いるんだよね、こういう男は……
「産むな」、「産みます」と言う問答があったかどうか分からないけれど、何とゼウスは子供を産ませないためにメーティスを頭から丸呑みしてしまったのだ。
しかし、しばらくすると激しい頭痛に襲われた(腹痛じゃあないよ、頭痛だよ)七転八倒するゼウスの様子を見て助けに来たのが、使者の神ヘルメース。ゼウスの苦しみようにただごとではないと感じた彼は、鍛治の神ヘーパイストスを呼んできた。
ヘーパイストスは、苦しむ姿のゼウスを見ると、商売道具の槌を大上段に振りかざし、ゼウスの脳天に目掛けて一打のもとに叩き割っちゃんだよ。
当然、頭痛はぴたりと止まった。(そりゃあ、止まるよ。というより普通、死んじゃうよ)そして割れた頭から産まれ出たのがアテーナー…… 身に甲冑を纏った、背の高い灰色の目をした乙女だった。(あー、余りリアルに想像しないように)
父親の頭(叡智)から産まれた彼女は知恵の女神であり、永遠の処女神として都市の守護神だった。中心的なポリス(都市)の名前がアテーナーであるのは、彼女にちなんで付けられている。