「人の精神には耐えられないほどおぞましい美を描き出し、読む者にして狂気と破滅へと駆り立てる禁断の戯曲」
・読んだ者を狂気へと追いやる「The King in Yellow(黄衣の王)」は、「Carcosa(カルコサ)」という名の古代都市を舞台にした戯曲の題名である。
・著者と成立年代は共に不明。原本は蛇の皮で装丁されており、表紙には「黄色の印」の模様が描かれている。
・カシルダやカミラといった人物が登場し、牡牛座のヒアデス星団やハリ湖のことが謳い込まれていることが知られている。
・具体的な内容は謎めいており、カシルダの「黄衣の王は私から取り上げてしまった。夢の行く方を定める力も、夢から逃れる力も」といった断片的な台詞の幾つかが記録されているのみである。
・戯曲において中心的な役割を果たすのは、題名の由来ともなっている謎の存在「黄衣の王」であり、登場する黄衣の王は常人の倍ほどの背丈で、蒼白の仮面を着けている。
・異様な彩りをした襤褸(ぼろ)を身にまとい、翼を備えているように見えることもあれば、後光が射していることもある。
・「The King in Yellow(黄衣の王)」を構成する二幕の内、第一幕は無害のものであるが、童子の口上から始まる第二幕の内容は、慄然と言う言葉でも生易しい狂気の満ちたものであり、内容を知ってしまった者は破滅に至る運命にある。
・かつて「The King in Yellow(黄衣の王)」を読んだヒルドレット・カステインは、自分が黄衣の王の従者としてアメリカの王になるという妄想に取り憑かれ、支離滅裂な手記を残し精神病院で死んでいる。
・「帝王たちに仕える王」と呼ばれ、皮肉たっぷりに聖書の語句を引用しながら人間に語りかけてくる黄衣の王の正体は、「The Unspeakable(名状しがたきもの) Hastur(ハスター)」の顕現に他ならない。
・1895年頃、黒く薄い八つ折判の装丁の「The King in Yellow(黄衣の王)」が英語版にて刊行されているが、翻訳者名などの詳細は一切不明である。