「海や湖、川の中に隠れ潜む謎の水棲種族について、様々な知識を網羅した書であり、本自体も汗に濡れるおぞましき研究書」
・「Cthaat Aquadingen(水神クタアト)」は、11~12世紀頃にラテン語で著された、「Deep Ones(深きものども)」をはじめとする水棲種族について広範囲な研究を纏めた、著者不明の書物である。
・「Deep Ones(深きものども)」の最年長者であり、彼らに君臨する番(つがい)の海神「父なるDagon(海神ダゴン)」、「母なるHydra(ハイドラ)」についての記述があるだけではなく、彼らが崇拝する「Great Cthulhu(大いなるクトゥルフ)」と眷属についても記載されている。
・3部の現存が確認されているラテン語版は、「R'lyeh Text(ルルイエ異本)」と同じく人間の皮膚で装丁されており、温度が下がるとうっすらと汗をかくと言われている。
・14世紀頃のイギリスにおいてこの書物の翻訳書が発行されており、少なくとも1部の英語版が、ラテン語版と共に大英図書館に収蔵されている。
・19世紀イギリスの海洋博物学者フィリップ・ヘンリー・ゴッスは、世界で初めて陸揚げされたものではなく、生きたままの海棲生物を図譜に描き起こし、飼育法についても併せて解説した「アクアリウム」(この書のタイトルとなったゴッスの造語は、後に「水族館」を意味する言葉になる)を著したことで、博物学者として名声を博したが、その後、聖書の記述と化石の存在を両立させる前時間説を提唱する「オンパロス」を発表し、それまでの名声を失うことになる。
・ヨーロッパの自然科学界を大いに困惑させたこの事件は、大英博物館の「Cthaat Aquadingen(水神クタアト)」を読んでしまったゴッスが、その衝撃からキリスト教へと逃げ道を見つけようとしたのだと考えることができるかもしれない。
・ラテン語版の残り2部は、イギリス国内の蒐集家の手元にあるとされている。