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「テーバイの王女・アンティオペー」

2010-06-23 22:16:22 | ギリシャ神話

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 「ゼウスが蒔いた不幸の種」


 アンティオペーはテーバイの王・ニュクテウスの娘。
 何の不自由もなく暮らしていた彼女であったが、これがまた美女であるからして、またたく間にゼウスの恋のターゲットにされてしまうのである。
 ゼウスは毎回毎回、巧妙な手を使ってくるが、今回もまた凝っていた。


 なんとゼウスはサテュロスに化けて、アンティオペーに近づくのだ。サティロスとは、ちょっと好色でいたずら好きな山の精のこと。
 やがてアンティオペーは、自分が妊娠してしまったことに気がつく(どうもこうも、ゼウスと火遊びすると、子供ができてしまうのか? 全知全能だからなのか!?)。


 そんなわけで厳格な父王にバレて大変とシキュオンに逃亡し、シングルマザーになるのが嫌だったのか、シキュオンのエポーペウス王と結婚する(実はこの王に誘拐され、腹の子の父はエポーペウスだとする説もある)。
 しかし、父ニュクテウスは娘をシキュオンまで追ってきて、このエポーペウス王と戦って死んでしまった(自殺したという説もある)。


 いや~~、これじゃ、一家離散だよ。ゼウスのヒヒ爺。
 ニュクテウスは、死に際に兄弟のリュコスの手を取って、こう言った。


 「エポーペウスを殺し、アンティオペーを罰してくれ」


と命じてこと切れたのだった。恐るべき執念ですな。
 リュコスはテーバイ軍を率いて、遺言どおりにシキュオンを攻め、エポーペウスを殺し、アンティオペーを捕らえる。
 テーバイの国に帰る途中、キタイローンの山中で生んだゼウスの子となる双子ゼートスとアムピーオーンは、この山に置き去りにされてしまうのだった(もはやこの世に神などいないという展開)。
 そしてアンティオペーは、リュコスの妻・ディルケーに奴隷として与えられた。


 女性のイジメは恐ろしいというが、どうも、ディルケーはリュコスがアンティオペーに気があるじゃないかと疑ったらしい。
 アンティオペーにしてみればいい迷惑なのだが…… 。


 二十年も辛い奴隷生活を送ってきたが、ついに脱走に成功する。しかし、キタイローンの山でまたもやディルケーの追っ手に捕まってしまうのだった。
 ディルケーは牛の角にアンティオペーをくくりつけ引きずり殺してしまおうとする。


 ところが、ついに救援がここに登場した。なんと死んだと思われていた。彼女の双子の息子が現れたのだ。山の親切なきこりに拾われ育てられたという。
 かくして親子は無事に再会。ディルケーは牛の角に突かれながら死んだしまったとさ。めでたしめでたし。



「アルゴスの王女・ダナエー」

2010-06-22 21:10:18 | ギリシャ神話

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 「忍び寄る悪夢は…… 陽の光」


 物語はアルゴスの王・アクリシオスが、ある神託を受けたことから始まった。


 「あなたは、孫息子の手にかかって死にます」


 このお告げを聞いた王は、一人娘のダナエーに子供を生ませないようにすれば、孫も生まれない、と考える。
 そしてダナエーを扉もなく、息を保つための通気口が一つだけの青銅の塔に閉じ込めてしまった。
 通気口は陽の光がわずかに差し込む程度の小さなもので、彼女はとても心細かったに違いない。


 ――薄幸の王女は美女に違いない―― というわけで、ハイ、やって来ましたヒヒ爺。あのおっさんがダナエーのこうした事情を噂で聞いて黙っているわけもなく、動き出したのだ。
 しかし、まだ懲りずに己の所業を悔い改めないのか(無理無理っ、彼が宗教を信じるわけがない。ある意味、彼が宗教であるからにして…… )。


 でも、ダナエーは青銅の塔に閉じ込められている。どうするのかゼウス。


 「ふおふおふおほ、愛は無敵なのだ」(あんたの場合は欲望だろうが)


 などと、あの親父が言ったかどうかは知らないが、その手口は鮮やかだった。なんとゼウスは陽の光に化けて通気口から忍び込んだのだ。


 いつも如くダナエーは、子供を身ごもった。ビックリしたのはアルゴス王。たぶん自分に向けられた、何か得体の知れない強力で邪悪な力を感じ取ってしまったのかもしれない。
 でもこれは、少々的外れな見解だ。ゼウスはアルゴス王のことなどこれぽっちも考えていなかった(もっとも邪悪というのは当っているかも)。


 ダナエーが男の子を生むと、王は、この親子を海へ捨ててしまう。ところがこの二人はセリーポス島に流れ着いて、そこのポリュデクテース王に礼遇された。やがてダナエーの子・ペルセウスは冒険の旅へと旅立った。


 しかし、ダナエーの受難はまだ続く。なんとポリュデクテース王がダナエーに恋をして強引に結婚を迫り、婚礼の席まで用意してしまったのだ。再びダナエー危うし! かと思ったら、ペルセウスがメドゥーサの首を土産に帰ってきて、その場にいた母以外の出席者を石にしてしまったのだった。


 ところであの神託はどうなったかというと、のちにとある競技に参加したペルセウスが円盤投げをした。あまりにも遠くに飛び過ぎた円盤は、客席に激突。ひとりの観客に命中して、その者は息絶えてしまう。
 そうです。その席にたまたま座っていたのが、アルゴスの王・アクリシオスであったとさ。チャンチャン。



「テーバイの王女にして新月の巫女・セメレー」

2010-06-21 18:48:43 | ギリシャ神話

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 「恋は炎に包まれる―― 」


 セメレーはカドモスとハルモニアーの娘で、たいそう美しかった。
 ところが、このカドモス一家は、軍神アレースに捧げるはずの大蛇を殺してしまったために、血縁の者は呪われていた。
 そんな因縁があったためか、セメレーもまた不幸な人生の終わり方を迎えることになる。


 セメレーはテーバイの王女にして、新月の巫女であった。この字面を見ていいるだけで、麗しの美女を十分に連想させる雰囲気がある。
 当然の如く、あのヒヒ爺が見逃すはずがない。ゼウスは夜風に姿を隠して、夜陰に紛れてセメレーの元に訪れる。
 そして細々と愛の言葉の限りを尽くし、彼女の心をつかもうと迫ったのだ。


 「わたしに恋をしてくださるのは嬉しいのですが、でも、どうか本当の姿を見せてください。そうでなくては、あなたの言葉を信じるわけにはまいりません」


 いちいち道理にかなったセメレーの返事なのだが、仮にそれがやんわりとした拒絶であっても、ゼウスが諦めるはずのない。それでもしつこくセメレーに会いに来た(当然と言えば当然のこと)。


 「あれがゼウス様とは、この婆やは信じられません」


 セメレーの乳母ペロエーはセメレーに忠告する。


 「どうでしょう。本物のゼウス様だということの証拠に天上で身に着けておられる冑をつけてくるように申してごらんなさい」


 純真なセメレーは、その言葉に従った。あれ、なんかヘンだぞ。このババアどこかで見たような気が…… 。


 「ほっほほほお、これでセメレーもおしまいだわ。神ならぬ身であの冑を見たら、たちまち灰になるもの。申し遅れました、あたくし、ペロエーに変装したヘーラーでございます」


 ちょっと待て! それって、あんまりじゃあないですか―― なんて、こちらの声が届くはずもなく、哀れゼウスの真の姿を見たセメレーの体はたちまち炎に焼き尽くされてしまう。


 ただその時、命の炎が燃え尽きる瞬間に、彼女はディオニューソスを生んだのだ。
 この子供は、まるで母親の体を焼き尽くした炎を体にとりこんだように輝き、眩いばかりの光を放っていた。


 それにしてもこの親父、女の子をモノにするためなら、手段を選ばないんだなあ。普通、相手を殺すと判っていてやってくるかあ!? 全能神といえども欲には勝てないのだろうか?


 ゼウス曰く。


 「男の性じゃ!」



「黒衣の女神・レートー」

2010-06-19 10:17:17 | ギリシャ神話

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 「優しくても、わたしは神さまよ」


 レートーは“黒い衣のレートー”として知られる可愛い女神だ。あの親父(もちろんゼウスのことである)は、またまた火遊び(花火大会のことではありません)でこの女神と恋に落ちた。
 そして彼女は、まもなく身ごもる。当然の如くヘーラーが、この事態を知らないわけがない。
 さらに悪いことに、ヘーラーは予言の言葉を聞いた。


 「レートーの生む双子はゼウスさまのお子さんたちの中でも、最も美しく輝く子供たちでありましょう」


 ヘーラーは今までゼウスの浮気相手に感じたジェラシー以上の憎悪をレートーに抱く。このおばさんが怒ると非常に怖いというのはご存知の通り。
 ヘーラーは、レートーにあろうことか呪いをかけたのである。


 「この世で日の照ったことのある場所では、どんな場所であろうと子供を生むことが出来ないように」


 おかげでレートーは世界中を彷徨うことになってしまった。どの島でもヘーラーに嫌われることを恐れて、レートーを不憫に思いながらも、冷たく追い払うのであった。


 旅の途中、レートーはリュキアの地に立ち寄る。へとへとになったレートーは池で水を飲もうとした。しかし、そこの村人たちは、それを止めようとした。


 「なにも体を洗おうなどと思っているわけではないのです。ただ水を飲もうとしているだけなのに、どうして止めようとするの」


と、レートーはしきりに訴える。しかし、村人は、そんな彼女に罵声を浴びせ、池に足を入れ泥を立たせて水を飲ませないようにしたのだった。
 これにはさすがに温厚で優しいレートーも頭にきた。そして天に両手を差し伸べて願った。


 「どうか、この者たちが、この池から永遠に離れず、生涯ここで過ごしますように」


 すると、たちまち村人たちは泥沼に住むカエルになってしまいました(お~い、これは願いじゃなくて、呪いだと思うんですが…… )。
 まあ、普段おとなしい人を怒らせていかないということでしょうか。


 こうしたレートーのあまりに無残な姿をとうとう見かねたゼウスは、海底に沈んでいた島を地上に引き上げ、堅固無類の鎖で囲って、ヘーラーの邪魔が入らないようにしてやり、レートーをかばってやったのだ(いやいや、初めからそうしてやれよ、と言いたい)。
 レートーはそこで無事に双子を出産する。ひとりは女の子のアルテミス、もうひとりは男の子でアポローン。
 ……確かにグレードの高いお子さまの登場だった(う~~ん、これじゃヘーラーの嫉妬に拍車が掛かるのも、うなずけるような)。


 ちなみに、この輝く子供たちはその名の通り、アルテミスは月の女神に、アポローンは太陽の神となった。しかし、この二人の性格を考えると、胎教に悪かったかもしれない(えっ、そうじゃなく、あの親父の性格を受け継いでいるって、ごもっとも)。



「スパルタの王妃・レーダー」

2010-06-18 09:57:44 | ギリシャ神話

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 「愛は白鳥に乗るだってさ」


 今度ゼウスが化けたのは白鳥だった(ほんとに好きだねぇ)。夏の夜空に白鳥座を見つけたら、それが爺の姿だと思ってほしいのですが、ちょっと悲しくなるのは自分だけですか?


 スパルタの王妃レーダー(珍しく人妻)は、エウローペーと同様にゼウスと長くお付き合いをした一人です。いわゆる愛人というやつですな。


 「相手があの人じゃねぇ…… 」


と、旦那のテュンダレオース王も半ば諦めていらっしゃったご様子。


 当然生まれてくる子供はフィフティー・フィフティーの確率でゼウスの子だったが、王はすべて自分の子として育てたとか。出来た人なんですねぇ。涙が出そうだ。
 生まれた四人の子供は、ヘレネー、カストール、ポリュデウケース、クリュタイムネーストラーと名づけられた。
 このうちヘレネーとポリュデウケースはゼウスの子だったという。


 さて、この中に母レーダーの絶世の美貌と父ゼウスの"あの性格”を受け継いだ地上最強の美女がいる。
 そうです。古代ギリシャ全土に及ぶ戦乱の渦に巻き込んだ、あの"トロイのヘレン(ヘレネー)”だ。


 成人したヘレネーは女神とみまごうばかり美しさに加え、アプロディーテーから恋の手ほどきを伝授された世にも恐ろしいスーパー・レディーに成長した。
 求婚する男は引きも切らず、それがまた王だったり王子だったりするもんだから、父王テュンダレオースはうかつに断わることも承諾することもできないという有様だった。
 とうとう知恵者オディッセウスの提案で取り決めをした。


 「求婚者たちは王の婿選びに異議を唱えないこと、ヘレネーをその夫から奪おうとするものに対しては全員結束して戦うこと」


 こうしてヘレネーはミュケーナイ王アガメムノーンの弟メネラーオスの妻になったんだけど、ま、これで終わらなかったのだ。
 数年後、ヘレネーはトロイアの王子パリスと手に手をとって駆け落ちしてしまったのだ。こりゃ皆さん怒りますわな。


 「なにーっ、そういうやり方が許されるなら、俺だってやったのに…… 」


という怒りを抱いた連中がギリシャ全土から集って、連合軍を結成した。ここにトロイア戦争の幕は切って落とされたというわけ。


 それにしても…… 、いやーさすがゼウスの娘さんです。はい。