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第二十四夜 怪談 野球場バックネット裏に立つ首吊りの木

2010-07-26 13:48:35 | 不思議夜話
 まだまだ夏は始まったばかりだというのに、しかし、暑いです。めちゃ暑いです。


 前々回に引き続き、学校の七不思議から、第5番目の野球場バックネット裏に立つ首吊りの木をお送りします。


 ヴィクターが中学校時代のクラスメートであるC君が体験した話です。自分たちが通った中学の野球グランドには、そのバックネット裏に大きなくすの木が一本立っています。
 この木、学校ができる前から立っていて学校を造るとき、一時植え替えをしてその後、現在の野球グランドのバックネット裏に移設されたくすの木なんですね。
 大きく枝を張って葉をたくさん茂らし、夏なんかちょいと涼しい木陰なんかを作る場所なんですが、誰も近くに寄り付こうとしません。


 なぜなら、この木で首吊り自殺する人がたまに出るからなんです。


 クラスメートであるC君は、野球部員で毎日のようにこの木の近くに行きます。仕方ないですよね。バックネット裏に木は立っているんですから。
 野球部は練習熱心で、朝は、6時からの朝練、昼の休憩時の昼練。そして夜8時までみっちり行なわれる夜練とハードな練習をしていました。
 当然C君も練習に参加していたのですが、この木の不気味さにいつも気を病んでいたんですね


 何しろ下級生は練習の準備とか後片付けをしなければならないので、朝は6時前から夜は9時頃までこのグランドにいるわけで。あんなある日―― 。


 朝練の準備で5時半頃にグランドにやってくると、バックネット裏に誰かいる。 ――いつも自分が一番乗りなのに、珍しいことがあるもんだ―― と思った。
 しかし、よく見ると、足が宙に浮いている!? くすの木が風にあおられて枝を揺らすと、宙に浮いている足がゆらゆらと揺れる。


 首吊りだった!! 慌てて後から来た学校の野球監督に知らせ、その後は朝練どころではなかった。学校もその日は、グランドの使用禁止、体育の授業も取りやめになったのでした。
 話には聞いていたが、まさか自分が第一発見者になるなんて…… 、C君はかなりショックを受けたのでした。


 幾日もして野球の練習を再開したのですが、どうも例の木が気なるのです。そんなある日、夜練が終わって、グランド整備などの後片付けをしていると、風も吹いていないのに、例のくすの木が、ばさばさっ、と枝の葉を鳴らすではありませんか―― 。
 C君たち(一人ではなく、下級生部員が数人いたそうです)が、驚いてくすの木を見ると、葉っぱを茂らした枝から伸びた人間の足が、ゆらゆらと揺れていたそうです。その場は、みんな一斉に逃げ出したのですが…… 。


 以後、時々このくすの木で風に揺れる足を見かけたそうです…… そんな不思議な話でした。



「冥界神・ハーデース」

2010-07-25 20:22:26 | ギリシャ神話

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 「住めば都と言うけれど、地獄は適用外!?」


 冥界の王ハーデース。この人は辛気臭い、死者の神さまをやっていたりする。


 「しかもね、うちのご主人さまときたら、嫉妬深くて陰険なんですよ。もう大変なんだワン」と語るのは地獄の番犬ケルベロス。


 この三つ首の犬までこばされるとは相当の暗い性格の神さまみたいだ。でも、この冥界の王って、どういう経歴の持ち主なんだろう。ちょっと見てみることにしましょう。


 本名はハーデース。あの全能の神ゼウスの兄だ。しかも長男にあたる。父はクロノス、母はレアーと、血筋もしっかりしたお坊ちゃま。
 でもこんな立派な経歴の持ち主であるに、よほど日陰が好きだったらしい(クロノスに食べられて長い間暗い胃の中で過ごしていたから、性格に陰を落としたのかもしれないが)。よって死者の国の王となった。


 ところがお似合いだ、ピッタリの適役と言われれば言われるほどに、日向が恋しくなるというもの。そのすでに叶えられない欲求は死者の国の経営にぶつけられるのだった。現状維持では物足りず、いつも領土拡大の執念に燃えていた。


 これだけを聞くとワンマン経営の暴君と思いきや、これがわりと幸せな様子だった。まさか亡者の悲痛な叫び声を聞きながら、悦入っているなんてことは無いと思うが…… 。


 ここで冥界の経営陣を紹介しましょう。
 魂を冥界の連れてくるのは、“軽薄兄ちゃん”こと泥棒の神ヘルメースの役目(営業スカウトといったところか)。入り口で怖い顔をしているのが三つ首のケルベロス。彼(たぶん牡だと思いますけど)は生ける者を冥界に入れず、死者を冥界から出さないという使命を担っている(まあ、警備員でしょ)。
 次に冥界の川を渡してくれるのは、渡し守のカローンだ(案内係というところか)。そして川を渡ると三人の裁判官が待っている(いわゆる重役)。


 一人目はミーノース。ポセイドーンに生け贄を捧げなかったばっかりに奥さんが牡牛と浮気してしまったと言う可哀想な人。彼はゼウスから法律を学んでいたため、死んでからここで働いているのだ。
 二人目は、ラダマンテュス。この人はミーノースの兄弟といわれている。ところが、かつてアポローンの息子の美少年ミレトス(!?)を奪い合って、兄弟喧嘩している(こんな人たちが裁判官で良いのだろうか?)。
 三人目は、高潔な男として有名なアイアコスだという。



第二十三夜 音楽室の怪

2010-07-24 14:26:17 | 不思議夜話
 暑い日が続きます。くれぐれもお体にお気をつけて、水分補給を十分にして下さいませ。


 前回に引き続き、学校の七不思議から、第2番目の音楽室の怪をお送りします。


 これヴィクター自身が体験した話です。大体どこの学校でもそうだ思うのですが、授業が終わった後の放課後に各教室の清掃が行なわれます。
 概ね自分たちの教室やその周りなのですが、理科室とか、図書館、音楽室といった共同で使用する教室は、持ち回りの当番制になっています。


 そんなある日、ヴィクターたちの班が音楽室の掃除当番になりました。当然、普段と変わりなく淡々と掃除を行なっていました。


 音楽室には、ちょっとした楽器の展示棚があって、そこに色々な楽器が置いてありました。
 弦楽器のヴァイオリンやチェロ、金管のトランペット、トロンボーン、木管のクラリネットやサックスなどなど、かなりの数の楽器が展示してあったのです。
 そこには何本かのリコーダーも含まれていて、その中の1本のアルトリコーダーがガラス製でした。
 ガラスでできているので、中が透き通っていてなかなか綺麗なリコーダーでした。


 中学校の生徒たちにも密かブームになっていて、ギヤマンの笛などと称していたんです。
 一度は手にとって見たいと思っていたのですが、持ち出し厳禁で棚で厳重に鍵が施されていました。
 他のものは取り出す事ができたのですが、不思議な事にそのリコーダーだけが特別に施錠されている棚に置いてありました。
 たぶんガラス製なので、破損する危険性を考慮したのではないかというのがみんなの考えでした。


 その日も掃除が終わって件のリコーダーの前でヴィクターを含めて数人が、そのリコーダーを眺めていたのですが―― 。
 そのリコーダーが、何の前触れもなく鳴ったのです。


 ピロロロ…… と、こんな感じで。


 一瞬、何が起こったのかわからず、その場にいた数人で顔を見合わせていたのですが、うちの一人が叫び声を挙げて逃げ出したのです。後は、それに釣られるように、全員が逃げ出しました。


 もちろん、そのことをクラスのみんなに話したのですが、大方信じてもらえず、そのまま話は立ち消えになってしまいました。
 しかし、あの時、本当に鳴ったんです。嘘ではありません。その場にいた仲間はみんな聞いているんです。


 それからずいぶん後になってから、なんかの折に学校の先輩に話したことがあったのですが、その先輩は不思議な話をしてくれました。


 先輩が中学に在学していた頃、音楽担当の女の先生がいたそうです。その先生は、大層音楽好き(当然だと思いますが)で、コラース部やブラスバンド部の顧問をしていました。
 特にリコーダーが好きで何種類ものリコーダーも持っていて、演奏も上手かったとのこと。しかし、ある年、身体を壊して長い間、入院しなければならなかったそうです。
 そして退院後も、なかなか体調が戻らず、教師を続けることができなくなって、泣く泣く先生を止めっていったとのことでした。
 その時に、自分が持っていた数本のリコーダーを学校に寄付したとのことでした。そして、その1本が件のリコーダー、ギヤマンの笛だったのです。


 それ以来、音楽室ではたまに不可解なことが起こるようになったという…… そんな不思議な話でした。



「魔女っ娘・キルケー」

2010-07-23 19:20:05 | ギリシャ神話

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 「魔法大好き女神も、実は可愛いツンデレ娘」


 “鷹”を意味するこの女神さまは、魔法が大のお得意。もちろん美人・美声のこの女性は“女神”というより、“女王様”の方が断然に合っていらっしゃる。と、いうのも、言い寄ってくる男どもに飽きると、片っ端からみんな動物に変えて、ペットとして飼い、周りに侍らしていたという。


 「この世の男は、すべてあたくしの物」


 なんてことを口走りそうな女神だった。


 こういう人ほど、手に入らない物があると、さあ大変。あなたの傍にもいるかもしれないよ。こういう人(男女問わずにね)。


 暇を持て余していた彼女の目に一艘の船が映った。それはオデュッセウスの乗る船で、今まさに、キルケーの住む島へ上陸して、乗組員と共に島の探索に出かけようとするところだった。


 「あら、あたくしの好みのお方…… 」


 オデュッセウスを一目見て気に入った彼女は、先発隊の乗組員を歓迎し、酒やご馳走を振舞った後、全員を豚に変えてしまった。
 彼らを助けに、きっと船長のオデュッセウスがやってくると思ったからだ。


 案の定、オデュッセウスはやってきた。


 「なんてことを…… 。彼らを元に戻して返してもらおう!」


 「お黙りなさい。あなたもあたくしのペットになるのよ。でもご安心なさい。あたくしの一番のお気に入りにしてあげるから」


 魔法を放つキルケー。危うしオデュッセウス! ところが、キルケーの放つ魔法が全然効かない。
 実はオデュッセウスは、ここに来る前にヘルメースから、彼女のことを聞き、魔法が効かなくなる術をかけてもらっていたのだ。


 初めての敗北。 ――自分を負かす男がいるなんて―― ショックと悔しさでいっぱいのキルケー。しかし、それだけじゃない何かが彼女の中に芽生えていた。
 彼女は初めて“恋”なるものを知ったのだ(結構可愛いところがあるんですね)。
 強きで通してきた心は、一度崩れると脆い。オデュッセウスの言うことを素直に聞いて、乗組員を元に戻した。


 もう、以前の彼女ではない。ただ恋する乙女になったキルケーに、オデュッセウスも魅力を感じます。
 そりゃあ、その容姿と声だけでも十分、男たちを虜にしてきたんですから。


 キルケーは、オデュッセウスとの間に息子テレゴノスをもうけた。幸せな日々を送っていた二人だったが、三年目のある日、オデュッセウスに再び海への熱情が沸き上がる。


 「海が好き~~!」


 根っからの海の男だから仕方がない―― 。


 一度言い出したら聞かないことをよく知っている彼女は、あえて止めることはぜず、彼の航海の無事を願って、これから遭遇するであろう様々な困難を予言してあげたという。


 悪女も恋すりゃ、可愛い娘、まあ、そんなツンデレなお話でした。



「必中の狩人・ケパロス」

2010-07-22 17:50:02 | ギリシャ神話

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 「不幸は女神の横恋慕から始まった」


 「自分は王女プロクリスと婚約しています。女神さまと共に暮らす気はありません。どうか帰してください」


 ここは曙の女神エーオースの城。彼女は、美貌のケパロスを恋するあまり、無理やり連れてきてしまったのだ。どうしてこう、神さまって強引なんだろうか…… 。


 ケパロスには婚約者がいた。そのうえ、彼はこの炎の神を持つ女神が嫌いだった。エーオースは自分の思いが伝わらない苛立ちから、プロクリスの不実さを訴えた。


 「それでは賭けをしない? あなたが姿を変えてあの女の前に現れて、誠実さを試してみるのよ」


 「いいでしょう。無駄な事とはっきりさせて見せます」


 賭けは成立した。エーオースはケパロスの外見だけを変えると、プロクリスの元へ帰したのである。


 愛するケパロスが行方不明になり、ひとり寂しき思いをしていたプロクリスの前に、見知らぬ若者が現れた。
 プロクリスは、この見知らぬ若者の中に、どういうわけかケパロスを思い浮かべてのだ。そりゃそうだ。本当はケパロスなんだから。
 実はこれがエーオースの策略だったのだ。もし彼の人格も変えていたのなら、見知らぬ若者に慕情を抱く、などということはなかっただろう。しかし、愛するケパロスの面影が映る若者に、彼女は愛の告白をしてしまったのだった。
 途端、若者は、元のケパロスの姿に戻る。


 「なぜだ。なぜ他の男に心を奪われたんだ、プロクリス!」


 裏切られたと思ったケパロスは彼女を責めた。彼女もまたひどく傷つき、森へと逃げたのだった。
 そして、彼女はアルテミスの従者になる。アルテミスは彼女を大変気に入って、彼女に、決して的を外さない槍を与えた。


 プロクリスは、狩猟好きのケパロスに、仲直りの証として、この槍をプレゼントするのだった。
 こうして二人は誤解を解いて、めでたく結婚したという。


 ところが話しはまだ続く。


 結婚したけれど、あのエーオースが、そう簡単にケパロスのことを諦めるはずもない。もしかしたら、ケパロスとどこかで逢引しているんじゃ…… 。
 そんな疑念を抱いたプロクリスは、こっそりと狩りをしに出かけたケパロスの後をついて行った。


 ケパロスは、葉がざわついたのを耳にして、その方向へ槍を投げる。そう例の槍だ。百発百中のやりは獲物を仕留め、その獲物を拾いにいった彼の目に映ったものは―― 。
 槍が刺さって血を流している瀕死の妻だった。結局プロクリスは死んでしまい、ケパロスは悲嘆してその地を捨て、流浪の旅に。
 そして二度と再び、帰ることはなかったそうだ。