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「疫病犬と呼ばれて」<上>

2010-07-22 11:54:24 | リチャード・アダムス

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 『疫病犬と呼ばれて』上、リチャード アダムズ著、中村妙子訳、評論社



<あらすじ>
 イギリスのとある田舎に動物生態研究所があった。そこでは来日も来る日も多数の動物たちが過酷な実験を課せられていた。
 ある日、その中の二匹の犬、ブリタニー・スパニエル犬に似た黒い雑種のローフと、白と黒の斑があるスムース・フォックステリア犬のスニッターが逃げだす。


 彼ら二匹は、追っ手をかわしつつ野生の犬として生きていくことを決める。しかし、現実は厳しくなかなか餌を獲ることもままにならなかった。
 そんな時、彼らの前に野生の一匹のキツネが現れた。このキツネは野生での生き方を教える代わりに共同で餌を確保することを提案したのだ。


 かくして二匹の犬と一匹のキツネという奇妙な組み合わせは、イギリスの片田舎で放牧された羊や、農家で飼っているニワトリを襲い始めるのだった。
 そんな彼らに被害を受けた農夫たちは、野犬狩りと称して狩猟隊を組織し、ローフたちを撃ち殺すため山へと入っていった―― 。果たしてローフたちの運命は如何になるのか?




<感想>

うさぎの次は犬が主人公の話。『ウォーターシップダウンのうさぎたち』でも、そうであったが、動物の視点から世界を見ると、かくいう見えるとった感じで、描写の細かさが光る。

 さらに構成の妙があって、スニッターたち、それ追いかける農夫たち、はたまた動物生態研究所の所員、といった別々構成を組みながら話を進めていくので、読者を飽きさせない。


 追われる立場である主人公たちが、様々な危険を切り抜けていく場面などは、ちょっとしたサスペンスを思わせる内容だ。



第二十二夜 怪談 校舎横のプール

2010-07-21 17:47:02 | 不思議夜話
 今日も暑いですね~ 。と言うわけで怪談話でも一つ(全然怖くないですが…… スミマセン《汗》)。


 どこの学校にも一つや二つの不思議話はあるもんで、いわゆる学校の七不思議というやつですね。多分に漏れず、自分が通っていた中学校にもあったわけでして、特に戦後まもなく創立されたものだから60年以上経ってたりするんです。
 だから、七つ以上の不思議があるんですよ。
1.体育館裏の開かずのトイレ
2.音楽室の怪
3.理科準備室の頭蓋骨
4.渡り廊下の節穴
5.野球場バックネット裏に立つ首吊りの木
6.校舎横のプール
7.グランド隅の焼却炉
8.図書室の怪
9.体育館2階の開かずの間


 などなど、自分が覚えているだけでもこれぐらいあったんですよね。


 その中から6番目『校舎横のプール』を紹介します。


 自分が通っていた中学には、プールが2つあるんです。1つは新しく建てたもので、校舎からメイングランドを挟んで向こう側にあり、もう1つは鉄筋校舎のすぐ横にあるんです。
 新しく建てた方のプールは何らないのですが、古い方のプールは現在(自分が中学に通い始めた頃には既に)では、使用されておらず、なぜか一年中水が張ってあって、その水も長い間変えたことがないみたいで、中は藻が群生していて水が緑色になっていました。
 そして、古いプールなのですが、それを2メートルほどもある真新しい金網で囲ってありました。


 これはクラブの先輩に聞いたのですが、以前は1メートルほどの金網で囲ってあって、誰でも中に入ることができたそうですが、ある事件をきっかけに新しく金網を設置し直したそうです。


 それはある男子生徒が、そのプール囲いを越えて中に入ったのですが、その頃にはすでにそのプールは進入禁止になっていたそうです。
 すると、学年主任の先生が、血相を変えてやってきて、その男子生徒を叱ったとのこと。


 「何やってんだ! ここは立ち入り禁止だ。早く出てこんと呪われるぞ」と言ったそうです。


 ――呪われるって、どう言うことですか―― と、話をしてくれた先輩に自分が問いただすと、以前にこのプールが使われていた頃、立て続けに事故が起こって何人もの生徒が亡くなったそうで、以来ここでは遊泳禁止になり新しくプールを建てたと言うことしか知らないと。


 納得に行く説明は聞けませんでしたが、でも不思議です。新しくプールを建てたなら、この古いプールは、なぜそのままなのか? ふつう壊すと思うんですが…… 。
 しかも、なぜ水を張ったままなのか? それこそ事故につながると思うので、水は抜いておくと思うのですが…… 。


 案の定、事故は起こってしまいました(厳密には違うかもしれませんが)。先の無断で侵入した男子生徒は、翌日から行方不明―― 。その生徒が履いていた上履きスリッパーの片方だけが、例のプールに浮いていたとか…… 。そしてそれっきり行方不明でいまだ消息はつかめていないとことです。
 当然、プールをさらったそうですが、何も見つけることができませんでした。しかし、奇妙なことに、その時もプール水は抜かなかったそうです。


 そして、中に容易に入れないように金網を新しく新設したそうです。何ででしょうか? プールを壊せばそんなことせずに済むのに…… そんな不思議な話です。
 



「悲運な予言者・カッサンドラー」

2010-07-21 10:39:01 | ギリシャ神話

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 「的中率100% でも誰も信じない予言」


 太陽神アポローンに好かれてしまったゆえに、不幸になってしまった美女の話。
 清楚で控え目な、それでいて、黒き瞳に燃えるような情熱を湛えたカッサンドラー。アポローンは、その心を虜にされてしまう。
 永遠の若さと美貌を備え、限りない知恵と力の持ち主であるアポローンに愛されるのが、どうして不幸なのかって? まあ、カッサンドラーにだって選ぶ権利があるってことかな(太陽神だけに暑苦しかったのかも…… 失礼しました)。


 カッサンドラーは、どういう理由からか、アポローンからの求愛を拒み続けていた。しかし、アポローンは、ともかくアタック。――押してもダメなら押し破る―― と、いろんな贈り物をせっせと彼女に与えた。


 「カッサンドラー、どうか私に振り向いてほしい。私は貴女を愛して止まないのだ。私の愛を受けてくれるなら、もっと素晴らしい贈り物をしよう」


 そう言って、彼女の意志も聞かずにアポローンは、自身が放つ光で彼女を愛撫した(よく分からんが、器用なことで)。


 すると、その光の影響で、カッサンドラーに未来を予言する力が身についてしまったのだ。その恐ろしく正確な予知能力をプレゼントされ、アポローンの半ば強引な求愛に膝を折ろうと考えた彼女だが、この贈り物はとんでもないことも見せてくれた。
 なんとアポローンが、後にカッサンドラーに飽きてしまい、彼女を見捨てていく姿を鮮明に映し出したのだ。


 「ひどいっ、あんまりですっ」


 これは痛い、痛いぞアポローン。当然カッサンドラーは前にも増してアポローンを拒むようになった。


 「アポローン様を信じようとした、わたしが愚かでした」(今頃気がついたか)


 拒むうえに冷淡になったカッサンドラーを、アポローンは謝るどころか、この贈り物にも後悔せず、彼女を憎み、呪った(元を糺せば、あんたに非があるんでしょが―― )。
 一度神が与えたものを取り戻すことは、プライドが許さない。


 「カッサンドラーは確かに真実の予言を行なう。だが、その予言を誰一人として信じるものはいないのだ……!」と、酷な付けたしをした。


 カッサンドラーは祖国トロイアの滅亡を予言したが、誰も彼女を信じなかった。彼女は、ギリシャ軍の総帥アガメムノーンに捕らえられ、妾にされて子供を儲けさせること、そして自分がアガメムノーンの正妻の手によって殺されることも予言する。
 当然、信じる人はいなかったが、予言どおりにこの世を去ったのだった。


 ここまでくると不幸というより悲劇だね。神の愛はまさに気まぐれというやつだねぇ。



第二十一夜 怪談 真っ黒な影人間

2010-07-20 12:11:02 | 不思議夜話
 ジメジメした梅雨も明けて、一気に夏の真っ盛り―― 。


 暑い日々が続きます、熱中症に気をつけましょう、と言うことで、今年のそろそろ怪談話を始めようかと存じます。


 これは兄貴の会社の同僚二人が体験した話。


 とある案件で、件の同僚たち(A氏とB氏と呼ぶ)が、九州の支社工場へ赴くことになった。二人の出張は短期間の2泊3日ものだった。
 宿泊先は、支社工場の寮へ泊まることになった。その寮は以前、某大学の寮だったのだものを、買い受けて会社の寮にしたのだ。


 その日の仕事も無事に終えて、寮の部屋に帰ってきたのだが、A氏は近くの街へ飲みに行こうとB氏を誘う。


 「俺、飲めないし、ちょうっと疲れたから、先に寝る」


 A氏は、仕方なく一人で飲みに行くことにした。


 寮は、以前大学の寮と言うこともあって、街からかなり離れた山の中腹にあり、街へ出るには車が必要となる。
 そこでA氏はタクシーを呼んで街へと出かけて行く。


 B氏は、寝床でスタンドの明りだけにして本を読んでいたのだが、日中の疲れからか、そのまま寝てしまった。
 それからしばらくすると、A氏は部屋の中の物音で目を覚ます。――Aの奴が帰ってきたんだな―― そう思ったB氏は、静かにするようにと言おうとした途端、金縛りに遭っていた。


 身体がまったく動かせない、声も出せない状態だ。それでも部屋にいるA氏に必死に助けを呼ぼうとするが―― 


 「Aじゃない!?」


 スタンドの明りに照らされたA氏と思っていた人物は真っ黒な影だった。いくら部屋を暗くしているからとはいえ、スタンドの明りは点いている。ある程度の明るさが部屋の中にあるにもかかわらず、その人物は真っ黒だった。


 「あ……っ、あ…… 」


 必死に声を出そうとするが、声がでない。すると真っ黒な人物が自分の寝ている布団の周りをぐるぐると回り始めた。


 ずっず、ずっずず、ずずずずーー


 畳の上をすり足で歩くような音がした。布団の周りを回りながら近づいてくるのだ。やがて、自分の身体の真上にくると(不思議と重さは感じなかったそうだ)、ふっと、立ち止まり、ぐっと身体を曲げてA氏の顔を覗き込んだ。


 真っ黒な顔で鼻も口もない、ただ二つの血走った目だけが、大きく見開いていた―― 。


 「わああああぁぁぁっ!!」


 その時、やっと大きな声が出た。


 一方、B氏は、街の飲み屋で飲んでいたのだが、一人の飲む酒は味気なく、早々に切り上げて寮へ帰ってきていた。
 そして、自分たちの部屋へ入ろうとした瞬間、部屋の中からB氏の大きな叫び声を聞いたのだった。


 「何事か!?」


 慌てて部屋のドアを開けようとする―― 、その途端、勢いよくドアがひとりでに開き、自分を押しのけるように黒い影が、猛烈な速さで脇をすり抜けて行ったそうである。それは真っ黒な影だった。
 初めA氏は、B氏が飛び出してきたかと思ったのだが、そのB氏は部屋の中で呆けたように寝床に座っていた。


 その後、二人で事の次第を話し合ったのだが、その黒い影が何だったのか、結局分からずじまいだった。ただ二人とも次の日は、会社に事情を話し、違う部屋へ変えてもらったそうである。


  会社の人間、曰く。


 「やっぱり…… 出てか…… 」


 そんな不思議な話でした。



「羊飼い・エンデュミオーン」

2010-07-18 16:21:58 | ギリシャ神話

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 「夢の中へ、行ってみたいと思いませんか…… 」


 月の女神アルテミスが銀の戦車に乗って夜空を駆け巡っていると、ラトモス山の中腹に一人の若者が眠っているのを見つけた。
 その眠りが安らかで美しいことに感動した彼女は、その若者の夢の中へ入り込んだ。


 「あ、あなたはいったい…… 、誰っ」


 驚く若者に女神は微笑む。


 「わたくしはアルテミス。あなたの寝顔があまりに美しく、平和で優しかったので、起こすのには忍びなく、こうして夢に現れました。 ……名を名乗りなさい」


 「僕の名はエンデュミオーン。羊飼いをしております。昼間の仕事に疲れてしまい、ここで眠っておりました。もしお気に障りましたらお許しを…… 」


 「何を言います、わたくしがこうして夢に現れたのは…… 」


 そう言ってアルテミスは、エンデュミオーンに優しくキスをするのでした。


 美貌と謙虚さを持つエンデュミオーンを、彼女はすっかり気に入ってしまったというわけ(なんと言う甘い展開っ、虫歯になりそうな…… 。勝手にやってくださいよ、と言いたくなってきた)。
 二人は夢の中で楽しい時を過ごす。エンデュミオーンは光栄で、嬉しさのあまり、こんなことを口走ってしまう。


 「ああっ、アルテミスさま。僕はこのまま、ずっとこの夢が覚めなければいいと願います」


 たぶん、戯れて言ったことだろうが、甘いっ、甘いぞ! エンデュミオーン。神さまというのは、冗談が通じないんですよねぇ。


 静かで、密やかなこの夢を守り続けたい。そう願っていたアルテミスは、渡りに船とばかりに喜んだ。


 「もちろんです。ましてやあなたが、老いて死ぬなんて考えたくもないわ」


 そう言ってゼウスに願った。


 「エンデュミオーンが夢をずっと見続けることができるよう、永遠の休みない眠りと永遠の若さをお与え下さい」


 好き者ゼウスは、喜んで願いを聞き入れた。
 こうして、エンデュミオーンは神話の時代が続く限り永遠に、ラトモス山の洞窟で眠り続けたという。


 アルテミスは、毎晩彼の夢に現れ、何と娘を五十人も儲けたそうだ(ううむ、五十人とは、たぶんギネスもんだね)。
 ちなみにアルテミスさん、アテーナーを敬愛していて、同じ純潔の誓いを立てていたんですが、な~にが神だ、聞いてあきれ……ああ、いえいえ、愛の前に脆くも崩れ去ったというわけ…… ええ、違うって、夢の中の出来事ですから…… なるほどっ。