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左利きの人生を考える(10)見えない差別(3)生き方の幅-週刊ヒッキイ第608号

2021-12-05 | 左利き
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第608号 別冊編集後記

第608号(No.608) 2021/12/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その24―
 左利き本のために――左利きの人生を考える(10)
 見えない差別(3)ケイパビリティ――生き方の幅」


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  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第608号(No.608) 2021/12/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その24―
 左利き本のために――左利きの人生を考える(10)
 見えない差別(3)ケイパビリティ――生き方の幅」
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 「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その24―
  左利き本のために――左利きの人生を考える(9)
  見えない差別―個別事例(2)書写教科書」

 の7月以来の10回目です。

 日にちがたってしまい、何について書いてきたのか失念しています。
 改めてバックナンバーを確認して、この稿を書き始めましたが……。

 さて、どうなりますか。
 
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 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その24―
  (左利き本のために)――左利きの人生を考える(10)
  ◆ 「見えない差別/隠れた差別/意識されない差別」 ◆
   ~ (3) ケイパビリティ――生き方の幅 ~  
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 ●人間的に公平な「左利きという生き方」を考えるために

前々回、前回とここまでは、左利き差別の実態として、
「ハサミ」と「書字」という個別事例について見てきました。

今回は、個別事例について云々するまえに、
ちょっと思うところを書いてみたいと思います。

 ・・・

最近読んだ本(いつか読みたくなるだろうと思い、
 すぐに買ってそのまま置いてあった本)、
神島裕子さんの
『正義とは何か 現代政治哲学の6つの視点』中公新書 2018/9/19



の中で、「ケイパビリティ」という言葉を知りました。

同書は、
ジョン・ロールズの『正義論』に始まる現代正義論の思想をたどり、
「公正な社会」とはどういうものか、どうすれば実現できるのか、
といった「正しい社会のあり方」についてだけでなく、
「社会における個人の幸福」について考えるための材料を提供する、
というものです。

社会における正義――公平な富の分配、権利の平等など、
基本的人権を維持するための方法を考える政治哲学関係の本です。

その本の中で気になったのが、「ケイパビリティ」という言葉でした。


 ●「ケイパビリティ」とは

1998年のノーベル経済学賞を受賞したインド出身の
アマルティア・セン(1933-)が、
1979年のスタンフォード大学の連続講義「何の平等か?」のなかで
論述した概念を著わす言葉のようです。

「ケイパビリティ(capability)」の英語としての意味は、
「能力、才能、性能、可能性」といったことです。


 《センが持ち出した「ケイパビリティ(潜在能力)」とは、
  ある人が何かを行ったり、何かになったりするための、
  実質的な自由のことです。》p.56

といい、

 《センは人間の多様性も考慮に入れています。
  人びとはその外的な特性
  (相続した資産や自然的・社会的な住環境など)や
  個人的な特性
  (年齢、性別、病気に対する抵抗力、身体的・精神的な能力など)
  において多様であり、同じ種類で同じ量の財が分配されたとしても、
  同じケイパビリティ――生き方の幅――
  を享受できるとは限りません。》


全員に同じ自転車を配っても、
足の不自由な人はその自転車を用いて移動したり、
サイクリングを楽しんだりはできない、

同じ生活保護費を支給しても、医療費がかさむ病弱な人は、
食費や他の費用に当てられる金額は少なくなる、

という例を挙げ、こう説明しています。

 《基本的ケイパビリティの平等のためには、
  財を不平等に分配しなければならないのです。》


 ●左利きに当てはめると

これを左利きに当てはめて考えますと、
人間個人としての潜在能力は同じ――右手が得意、左手が得意――でも、
社会環境が「右利き優位」、あるいは「右利き偏重」、
「左利きを無視・否定する」状況では、左利きは不平等であるため、

《同じケイパビリティ――生き方の幅――を享受できるとは限》らない、

ということになります。


例えば、ハサミというものは非常に便利なものですが、
ハサミには右手用と左手用の別があります。

右利きの人は右手で使う右手用が便利ですが、
左利きの人は左手で使う左手用が便利です。

ところが、右手用は色々なタイプのものが多数発売されていて、
自分の用途に合った製品を手軽に手に入れることができます。

しかし、左手用は種類も少なく、
お店によっては取り扱っていないこともあり、
自分の欲しいものが手軽に手に入るとは限りません。

時にはお値段が右手用よりも高い場合もあります。

自分の好みのものを手に入れるために手間がかかったり、
お金がかかったり、余計な負担が必要だったりするとしたら、
これは
《同じケイパビリティ――生き方の幅――を享受できるとは限》らない
といえるでしょう。


 ●「生き方の幅」

この「生き方の幅」という言葉が、
私には、グッとくるものがありました。

個人の生活や幸福は、
「個人的な特性」と「(社会という環境の)外的特性」に
影響を受けるため、
各人が真に公平な生き方ができるためには、
これらにおける負の要素を埋める何かが必要だ、ということです。

先のハサミの例でいえば、
お金であったり、探すための手間暇であったり、です。


現状では、右利き優位の社会であり、その分だけ左利きの人は、
右利きの人に比べると「生き方の幅」が狭くなっている、
ということになります。

「選択肢」といってもいいかもしれません。


例えば野球でいえば、
右利き右投げの選手は、守れるポジションが9つ、どこでも守れます。
一方、
左利き左投げの選手では、ピッチャーと一塁手と外野手ぐらいです。

その他のポジションは、特に一塁以外の内野のポジションは、
左投げの選手には守りにくいポジションになっています。

プロ野球の試合を見ていましても、
左投げの二塁手や三塁手、遊撃手などはいません。

守れるポジションの選択肢が少ないのです。
当然レギュラー選手になれる機会も減ります。

すなわち、
左利きの人は「野球選手としての(生き方の)幅」が狭い、
ということになります。


 ●「生き方の幅」から見た「利き手差別」

野球に限らず、世間を見ていきますと、
左利きの人にとって
「生き方の幅」に制限がありそうな仕事や職業などが
あれこれ見つかるのではないでしょうか。


「生き方の幅」を広げる、あるいは障害となる溝を埋める、
そういう方法なり方策なりが必要になってくるようです。

左利きの人の悩みとしての
単純な左利きであることの不便や困りごとの羅列だけでなく、
「生き方の幅」という観点からも、
「利き手差別」というものをもう一度確認し直したいものです。

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 ★600号までの道のり(8)第161号~第180号

第161号(No.161) 2009/1/3「2009年新春放談~左利きの楽園~」
◆2009年新春放談~左利きの楽園~◆(1)【左利きの楽園】
欄外 おまけ...【左利きの雑誌】『モノ・マガジン』09/2/2号

第162号(No.162) 2009/1/10「新春放談~左利きの楽園~(2)」
◆2009年新春放談~左利きの楽園~◆
(2)【左利きの人とはどんな人か?】

第163号(No.163) 2009/1/17「2009年新春放談~左利きの楽園~(3)」
◆2009年新春放談~左利きの楽園~◆
(3)【左利きの人だけの問題ではない】

第164号(No.164) 2009/1/24「<左利きプチ・アンケート>第59回」
  第59回 左利きの問題は左利きの人だけのものか?
 ◎お知らせ◎
 『モノ・マガジン』2009年2月2日号左利きグッズ大図鑑 続報

第165号(No.165) 2009/1/31冬季臨時増刊号「既刊号一覧2008年後期」
 ◆ 既刊号一覧 ◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii 
  バックナンバーの案内 2008年後期発行分(No.140-160)

第166号(No.166) 2009/2/7
「<LYPG>2009発表&<左利きQ&A>(24)」
 ◎お知らせ◎「第3回<LYグランプリ>2009」発表
★左利き講座<左利きQ&A>★
(24)左利き・利き手について勉強する本(その3)

第167号(No.167) 2009/2/14「生活技術(6)ネジの回転」
 ▲左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ▲ 
  ―その16― 初めての生活技術(6)ネジの回転

第168号(No.168) 2009/2/21「左手書字の研究―実技編(10)」
≪左利き学入門≫「左手書字の研究―実技編」
  (10)横書き(その1)縦書きと横書きの違い

第169号(No.169) 2009/2/28
「<左利きプチ・アンケート>第58/59回現在の結果と感想」
  第58/59回アンケートの現在の結果と感想

第170号(No.170) 2009/3/7「<左利きQ&A>(25)左利き..本(4)」
★左利き講座<左利きQ&A>★ 
(24)左利き・利き手について勉強する本(その3)
    斎藤茂太/著『左ききの人はなぜ才能があるのか』

第171号(No.171) 2009/3/14
「生活技術(7)右手用しかないものは左手で扱う...」
 ▲左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ▲ 
  ―その16― 初めての生活技術
   (7)右手用しかないものは左手で扱う方法を教えよう

第172号(No.165) 2009/3/21「左手書字の研究―実技編(11)横書き(2)」
≪左利き学入門≫「左手書字の研究―実技編」
  (11)横書き(その2)横書きの難点と簡易対策

第173号(No.173) 2009/3/28「<左利きプチ・アンケート>第60回」
  第60回 将来どんな社会になればよいと思いますか?

第174号(No.174) 2009/4/4「<左利きムーヴメント>始めます!」
 ◎お知らせ◎ <左利きムーヴメント>始めます!
 ◎リニューアルのお知らせ◎

第175号(No.175) 2009/4/11
「親御さんへ速報!『左利きの子』教育・保育ガイド本」
 ▲左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ▲ 
  <特別編>左利きの子 右手社会で暮らしやすくするために
  ローレン・ミルソム/著 笹山裕子/訳 東京書籍(2009年4月)

第176号(No.176) 2009/4/18
「名作の中の左利き(1)『カラマーゾフの兄弟』」
新コーナー
≪左利き学入門≫ ■名作の中の左利き■
  ―その1― ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』

第177(No.177) 2009/4/25
「<左利きプチ・アンケート>第59回その後」
  第59回 左利きの問題は左利きの人だけのものか?
その後の経過は?

第178(No.178) 2009/5/2
「<左利きムーヴメント>宣言!(1)お役立ち情報..」
━<左利きムーヴメント>宣言!━ 
 ~その1~左利きのお役立ち情報リスト&リンク集を作る
 (1)左利きを知るための本

第179(No.179) 2009/5/9「<特別編>『左利きの子』続報」
 ▲左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ▲
  <特別編>左利きの子 右手社会で暮らしやすくするために
  ローレン・ミルソム/著 笹山裕子/訳 東京書籍(2009年4月)

第180(No.180) 2009/5/16「名作の中の左利き(2)『黄金虫』ポー」
新コーナー
≪左利き学入門≫ ■名作の中の左利き■ 
  ―その2―『黄金虫』エドガー・アラン・ポー


――引き続き、毎週異なるテーマで書いていました。
 第一土曜は、左利き講座<左利きQ&A>、
<左利きムーヴメント>宣言!
 第二土曜は、<左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ>
左利き子育て相談の疑問
 第三土曜は、≪左利き学入門≫「左手書字の研究―実技編」、
≪左利き学入門≫ 名作の中の左利き
 第四土曜は、<左利きプチ・アンケート>
 第五土曜があるときは、臨時増刊で、バックナンバーの紹介

2009年は、一部リニューアルを敢行。
第一土曜では、<左利きムーヴメント>宣言! で、
左利き啓蒙活動を!
第三土曜では、≪左利き学入門≫ 名作の中の左利き で、
左利きの人物が登場する世界的な名作を紹介。

また、第二土曜は、
私が巻末資料の作成に協力した左利きの子育てガイド本、
『左利きの子 右手社会で暮らしやすくするために』の紹介を!
絶版にはなっていますが、日本では出版されていない種類の本です。
有名なイギリスの通販の左利き用品店のオーナーでもある、左利きで、
左利きの子の母でもある著者の手になる本です。

*各号のタイトルを見て、「これ気になるなあ、読んでみたいなあ」
 というものがございましたら、リクエストをお願いいたします。
 再配信なり、現時点での加筆・修正を行っての配信など、
 改めてお届けすることも考えています。
 リクエストは、本誌に返信してください。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その24― 左利き本のために――左利きの人生を考える(10) 見えない差別(3)ケイパビリティ――生き方の幅」と題して、今回も全紹介です。

今回は、久しぶりのこのテーマということで、最近気になった言葉「ケイパビリティ――生き方の幅」に関して思うところを書いてみました。

左利きの人は、左利きであるということで、その生き方の幅が狭くなっているのではないか、ということです。

ネットでの活動を始めた当時、面接試験で左利きの人と判明すれば落とす(雇わない)、というある加工業の社長さんがいました。
特殊な加工をする会社で、その道具や機械が特殊で、右手用しかないので左利きの人は使いにくいから、というような理由でした。
私には差別ではないかと思えたものでしたが……。
(その後どうなったのでしょうか。)


「生き方の幅」を「選択肢」という言葉に置き換えてもいいかもしれません。

マイノリティーといわれる人はみな、それなりに「生き方の幅」が狭められている?

やはりこの世の中を生きていく上で、主流派の人は「生きやすい」のではないでしょうか――という疑問です。

 ・・・

では、弊誌を面白い、興味深い、これからも読んでみたいと思われた方は、購読のお申し込みを!

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』


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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
左利きの人生を考える(10)見えない差別(3)生き方の幅-週刊ヒッキイ第608号
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