『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第616号 別冊編集後記
第616号(No.616) 2022/4/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界(2)演奏時の腕の移動方向」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン
右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第616号(No.616) 2022/4/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界(2)演奏時の腕の移動方向」
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「左手・左利き用楽器」による左利き楽器演奏について考える、
の2回目です。
演奏の際の腕を動かす方向という観点から、
右手・右腕演奏と左手・左腕演奏の違いについて考えてみます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界 (1)
◆ 左手・左腕の流れは「右から左」 ◆
~ 左利き演奏という選択肢 ~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
●左利き用ピアノ
今回は、初めに「左利き用ピアノ」について少し書いておきます。
「鳥」さんのブログ↓
左利き用ピアノ
2020-08-13 12:26:00
https://ameblo.jp/haibisukasu-kawaii/entry-12617423050.html
には、
左利きピアニストで、自分で左利き用ピアノを作り演奏している
クリストファー・シード(Christopher Seed)さんを紹介しています。
シードさんの演奏動画も紹介されています。
Left-Handed Piano
https://youtu.be/uIgO4LqvU-0
The Left Handed Piano
https://youtu.be/v8wCS4d02TU
左利き用のピアノは、世の中にないわけではないのです。
しかも、シードさんは何の苦もなく弾き分けておられるように感じます。
鍵盤の配置についてはよく観察できませんが、
左用は、逆転しているのでしょう。
右用で習得した技術・技能であっても、
左利きの人は、左用が自然と弾けるのではないでしょうか。
要は、「ないからできない」というだけの話のようです。
●演奏時の腕の移動方向
ピアノ演奏で思うことは、
メロディラインを右手で伴奏を左手で、といったこともですが、
音階のキーボードの並び順についてです。
音階を弾くとき、「ドレミ~」と上がって行き、
「ドシラ~」と戻って(下がって)きます。
これはあくまでも私の個人的な感じ方かもしれませんが、
「ドレミ~」と上がってゆくときは、
心が伸びやかに上昇してゆくような高揚感を持ちます。
一方、「ドシラ~」と下がってくるときは、
逆に気分が落ちてゆくような、沈んだ感じを受けます。
で、ピアノを弾く場合、音階を上がってゆくのは、
「左から右へ(⇒)」と鍵盤を移動してゆきます。
右腕を「引く」ような方向に動かします。
【右用ピアノの鍵盤】
(音階が上がる)⇒⇒⇒
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(左)ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド(右)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(音階が下がる)←←←
(左腕を押す)⇒┃ ┃⇒(右腕を引く)
(左腕を引く)←┗(身体)┛←(右腕を押す)
字を書くときの横画や横書きの時の方向と同じです。
この方が右腕の自然な滑らかな動きになるように思います。
一方、左利きの場合、
この「左から右へ(⇒)」の方向は腕を押すように動かします。
字を書くときも、左から右へ横画を引いたり、横書きする場合、
ペンを押すような「押し書き」になり、
左手や左腕に必要以上に力が入るような書き方となりがちです。
ピアノで鍵盤を弾く場合も、「左から右へ」の場合は、
どうしても左手や左腕に力が入る動きになるように感じます。
滑らかさよりも力強さが勝ってしまうような気がします。
右利きの人は、この「左から右へ音階を上がっていく」方が
演奏の方法として正解のように思います。
しかし、左利きの場合は、ぎこちなさが出やすいように思います。
●<きき手による運動機能の違い>
視覚と運動の面でこういう説があります。
八田武志さんの『左ききの神経心理学』の「第2章 きき手について」
[5.きき手と動作]<きき手による運動機能の違い>p.31 によりますと、
《きき手による運動機能の違いは左右手や足だけにとどまらない》
といい、眼球の動きについての研究についても記述されています。
読書の際の眼球の動きは、滑らかに文字を追うのではなく、
所々で停留したり飛越したりするのがふつうで、
《この眼球の飛越運動は読書習慣によって
左から右方向へ向かう方が逆の方向よりも速いのであるが、
(略)
その運動潜時すなわち飛越運動が生じるまでの反応時間を、
左ききと右ききの成人で比較したのである。
その結果、右ききの被験者は
左から右方向への飛越運動の潜時が速かったが、
左ききでは運動方向による差異がみられなかった。》
といいます。
《このような結果を
右ききでは右方向への眼球の運動系を支配している左脳が、
逆方向の運動を支配している右脳よりも優れるが、
左ききでは
眼球の運動系に関係する左右の脳機能に差がないためである
と説明している。》
とあります。
外国の研究ですので、当然読書の習慣は左から右への横書きです。
日本でも近年、学校の教科書などは、
国語科以外は横書きになっているようですので、
同じ傾向だろうと想像できます。
特に音楽では和楽器以外は、みな横書きの楽譜です。
で、手や腕、足だけでなく、眼球の動きにも、
利き手の違いによる運動能力の左右差が生まれる、
という考えは興味深いものがあります。
ここでも右利きの人においては、
「左から右への方向性」が有利だとされています。
この研究では眼球の運動に関して、
左利きの人の場合、右利きの人の場合ほどの偏りはないといいますが、
それでも全くゼロとはいえないのではないか、
という疑問が私にはあります。
左が利き目だとしますと、視覚的にも右方向に進むよりは、
左方向への進行の方が左利きには向いているように思われます。
左利きの人において、視覚的にも左優位が存在するとすれば、
腕や指の動きという面でも左方向への進行が優位と思われますので、
左方向に音階を挙げてゆくという音階順のキーボード配置の方が
左利きの演奏者には向いているように思うのですけれど、
どんなものでしょうか。
*参照:
『左ききの神経心理学』八田武志/著 医歯薬出版 1996.11
―左利き研究の専門書。
20年余の左利き・利き手研究を研究をまとめたもの。
http://www.amazon.co.jp/dp/4263233174/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
●左利き演奏者の場合の音階順
音階の並び順を左右逆の入れ替えてみればどうなるでしょうか。
【左用ピアノの鍵盤】
(音階が上がる)←←←
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(左)ド・シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ド(右)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(音階が下がる)⇒⇒⇒
(左腕を押す)⇒┃ ┃⇒(右腕を引く)
(左腕を引く)←┗(身体)┛←(右腕を押す)
左利きの人の場合、音階の方向を、
「左から右へ(⇒)」「ドレミ~」と上がっていくのではなく、
逆に、左から「ドシラ~」と下がっていく逆の配置にすると、
左手で弾くとき、腕を引く方向で「~ミレド」と
滑らかに上がってゆくことができるのではないでしょうか。
右手はそれを追うように、
右腕を押すように動かすので、伴奏の際も力が弱くならないで、
力を入れやすい形になる(?)のではないでしょうか。
そういう風に考えてゆきますと、
左利きの演奏者の場合は、従来の音階順ではなく、
その逆の左方向に音階を上がってゆく
逆転型のキーボードが適切ではないか、と考えます。
●利き手別理想の音階順キーボード例
利き手別の理想の音階順キーボードの例を下に示してみます。
<右利きの演奏者の場合>
(右手・右腕)【右に引く方向(⇒)】
ド⇒レ⇒ミ⇒ファ⇒ソ⇒ラ⇒シ⇒ド
<左利きの演奏者の場合>
(左手・左腕)【左に引く方向(←)】
ド←シ←ラ←ソ←ファ←ミ←レ←ド
こういうキーボードが誕生すれば、
左利きの人はきっとこちらの方が扱いやすい、
と感じるのではないでしょうか。
当初は、違和感があるかもしれませんが、
しばらくいじっていれば、自然となじんでしまうのではないか、
と思います。
これは私自身の経験から感じることでもあります。
私自身は、右用のハサミ(を左手で使う)で育ち、
30代半ば過ぎから左用を使うようになって、
その時の経験では初めの数回はうまく使えなかったのですが、
すぐに慣れてしまいました。
特に線にそって切るという場合などは、
線を自然な角度で実際に見ながら切れるので、感激でした。
また、半田付けなどの作業でも、初めは右手で教えられ、
その方法を身につけましたが、
すぐに自己流に左手でやる方法に慣れました。
左手は利き手なので、右手でやるうちに、
自然に脳内で左手でのやり方もマスターできているように思います。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「★600号までの道のり」(12)第231号 ~ 第240号
第231号(No.231) 2010/10/2「創刊6年目に当たって」
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
創刊6年目に当たって
第232号(No.232) 2010/10/9
「《矯正/直す》表現に思う(6)親御さんへ」
▲左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ▲ ..第ニ土曜日掲載
―その17― 《矯正/直す》表現に思う
(6)左利きの子を持つ親御さんへお願い
第233号(No.233) 2010/10/16
「名作の中の左利き(10)「左ぎっちょクラブ」ギュンター・グラス」
≪左利き学入門≫ ■名作の中の左利き■ ..第三土曜日掲載
―その10― 「左ぎっちょクラブ」ギュンター・グラス
ギュンター・グラスの短編小説「左ぎっちょクラブ」
(『僕の緑の芝生』飯吉光夫訳 小沢書店 1993.10.20)
第234号(No.234) 2010/10/23
「<左利きプチ・アンケート>第67回50年後21世紀後半はどんな社会?」
●<左利きプチ・アンケート>● ..第四土曜日掲載
第67回 50年後21世紀後半はどんな社会?
第235号(No.235) 2010/10/30
「<LYグランプリ>2011候補・2010年左利きの人・事・物」
第5回<LYグランプリ>2011読者大賞候補・
2010年左利きの人・事・物 総ざらい(part1)
<LYグランプリ>2011候補を総点検。2010年ここまでの
左利きの人・事・物を総ざらいしてみましょう。
第236号(No.236) 2010/11/6
「<LYグランプリ>2011候補・2010年左利きの人・事・物(2)」
第5回<LYグランプリ>2011読者大賞候補・
2010年左利きの人・事・物 総ざらい(part2)
<LYグランプリ>2011候補を総点検。2010年ここまでの
左利きの人・事・物を総ざらいしてみましょう。(part2)
第237号(No.237) 2010/11/13「左利きの教本について考える(1)
ある幼児向け生活技術教本の不思議(前編)」
▲左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ▲ ..第ニ土曜日掲載
―その18― 左利きの教本について考える
(1)ある幼児向け生活技術教本の不思議(前編)
内容:某社から出版されて、好評だという生活技術を教える図鑑。
この本の目次にはある注意書きが示されています。
これが一見当然? その実、非常に恐ろしい!内容で…。
第238号(No.238) 2010/11/20
「名作の中の左利き―番外編―2 夏目漱石『坊っちゃん』は左利き?」
≪左利き学入門≫ ■名作の中の左利き■ ..第三土曜日掲載
―番外編―2 夏目漱石『坊っちゃん』は左利き?
第239号(No.239) 2010/11/27「<左利きプチ・アンケート>
再版 第4回 貴方の好きな左利きの呼び名は何ですか?」
●<左利きプチ・アンケート>● ..第四土曜日掲載
再版 第4回 貴方の好きな左利きの呼び名は何ですか?
前回の●<左利きプチ・アンケート>●
第67回 10.10.23 50年後21世紀後半はどんな社会?
第240号(No.240) 2010/12/4「<LYグランプリ>2011候補・
2010年左利きの人・事・物(3)」
「第5回<LYグランプリ>2011読者大賞候補・
2010年左利きの人・事・物 総ざらい(part3)」
内容:
<LYグランプリ>2011候補を総点検。2010年ここまでの
左利きの人・事・物を総ざらいしてみましょう。7-8月。
――10号ずつの紹介です。
第一土曜は、<LYグランプリ>2011候補の紹介
第二土曜は、<左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ>
《矯正/直す》表現に思う → 左利きの教本について考える
第三土曜は、≪左利き学入門≫ 番外編
第四土曜は、<左利きプチ・アンケート>
第五土曜があるときは、臨時増刊で、バックナンバーの紹介
引き続き、この時期は欄外で、【おまけコーナー】として、
最新の左利き情報をメモ的に紹介していました。
*各号のタイトルを見て、「これ気になるなあ、読んでみたいなあ」
というものがございましたら、リクエストをお願いいたします。
再配信なり、現時点での加筆・修正を行っての配信など、
改めてお届けすることも考えています。
リクエストは、本誌に返信してください。
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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(2)演奏時の腕の移動方向」と題して、今回も全紹介です。
今号もバックナンバーの紹介は、10号ずつとしました。
内容は、音楽・楽器と左利き対応についてで、ピアノのキーボード――音階の配置についてです。
初めに左利き用のピアノについて書かれているブログを紹介し、そこに東上する左利きのピアニスト、クリストファー・シードさんにふれています。
この方については、もうずいぶん昔に一度紹介した記憶があります。
調べ直すのが面倒でチェックをおこたっていますが、どこかでまたチェックし直しておこうと思います。
・・・
弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。
*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
『レフティやすおのお茶でっせ』〈左利きメルマガ〉カテゴリ
--
『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
" target="_blank">左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(2)-週刊ヒッキイ第616号
--
第616号(No.616) 2022/4/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界(2)演奏時の腕の移動方向」
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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン
右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第616号(No.616) 2022/4/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界(2)演奏時の腕の移動方向」
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「左手・左利き用楽器」による左利き楽器演奏について考える、
の2回目です。
演奏の際の腕を動かす方向という観点から、
右手・右腕演奏と左手・左腕演奏の違いについて考えてみます。
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左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界 (1)
◆ 左手・左腕の流れは「右から左」 ◆
~ 左利き演奏という選択肢 ~
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●左利き用ピアノ
今回は、初めに「左利き用ピアノ」について少し書いておきます。
「鳥」さんのブログ↓
左利き用ピアノ
2020-08-13 12:26:00
https://ameblo.jp/haibisukasu-kawaii/entry-12617423050.html
には、
左利きピアニストで、自分で左利き用ピアノを作り演奏している
クリストファー・シード(Christopher Seed)さんを紹介しています。
シードさんの演奏動画も紹介されています。
Left-Handed Piano
https://youtu.be/uIgO4LqvU-0
The Left Handed Piano
https://youtu.be/v8wCS4d02TU
左利き用のピアノは、世の中にないわけではないのです。
しかも、シードさんは何の苦もなく弾き分けておられるように感じます。
鍵盤の配置についてはよく観察できませんが、
左用は、逆転しているのでしょう。
右用で習得した技術・技能であっても、
左利きの人は、左用が自然と弾けるのではないでしょうか。
要は、「ないからできない」というだけの話のようです。
●演奏時の腕の移動方向
ピアノ演奏で思うことは、
メロディラインを右手で伴奏を左手で、といったこともですが、
音階のキーボードの並び順についてです。
音階を弾くとき、「ドレミ~」と上がって行き、
「ドシラ~」と戻って(下がって)きます。
これはあくまでも私の個人的な感じ方かもしれませんが、
「ドレミ~」と上がってゆくときは、
心が伸びやかに上昇してゆくような高揚感を持ちます。
一方、「ドシラ~」と下がってくるときは、
逆に気分が落ちてゆくような、沈んだ感じを受けます。
で、ピアノを弾く場合、音階を上がってゆくのは、
「左から右へ(⇒)」と鍵盤を移動してゆきます。
右腕を「引く」ような方向に動かします。
【右用ピアノの鍵盤】
(音階が上がる)⇒⇒⇒
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(左)ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド(右)
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(音階が下がる)←←←
(左腕を押す)⇒┃ ┃⇒(右腕を引く)
(左腕を引く)←┗(身体)┛←(右腕を押す)
字を書くときの横画や横書きの時の方向と同じです。
この方が右腕の自然な滑らかな動きになるように思います。
一方、左利きの場合、
この「左から右へ(⇒)」の方向は腕を押すように動かします。
字を書くときも、左から右へ横画を引いたり、横書きする場合、
ペンを押すような「押し書き」になり、
左手や左腕に必要以上に力が入るような書き方となりがちです。
ピアノで鍵盤を弾く場合も、「左から右へ」の場合は、
どうしても左手や左腕に力が入る動きになるように感じます。
滑らかさよりも力強さが勝ってしまうような気がします。
右利きの人は、この「左から右へ音階を上がっていく」方が
演奏の方法として正解のように思います。
しかし、左利きの場合は、ぎこちなさが出やすいように思います。
●<きき手による運動機能の違い>
視覚と運動の面でこういう説があります。
八田武志さんの『左ききの神経心理学』の「第2章 きき手について」
[5.きき手と動作]<きき手による運動機能の違い>p.31 によりますと、
《きき手による運動機能の違いは左右手や足だけにとどまらない》
といい、眼球の動きについての研究についても記述されています。
読書の際の眼球の動きは、滑らかに文字を追うのではなく、
所々で停留したり飛越したりするのがふつうで、
《この眼球の飛越運動は読書習慣によって
左から右方向へ向かう方が逆の方向よりも速いのであるが、
(略)
その運動潜時すなわち飛越運動が生じるまでの反応時間を、
左ききと右ききの成人で比較したのである。
その結果、右ききの被験者は
左から右方向への飛越運動の潜時が速かったが、
左ききでは運動方向による差異がみられなかった。》
といいます。
《このような結果を
右ききでは右方向への眼球の運動系を支配している左脳が、
逆方向の運動を支配している右脳よりも優れるが、
左ききでは
眼球の運動系に関係する左右の脳機能に差がないためである
と説明している。》
とあります。
外国の研究ですので、当然読書の習慣は左から右への横書きです。
日本でも近年、学校の教科書などは、
国語科以外は横書きになっているようですので、
同じ傾向だろうと想像できます。
特に音楽では和楽器以外は、みな横書きの楽譜です。
で、手や腕、足だけでなく、眼球の動きにも、
利き手の違いによる運動能力の左右差が生まれる、
という考えは興味深いものがあります。
ここでも右利きの人においては、
「左から右への方向性」が有利だとされています。
この研究では眼球の運動に関して、
左利きの人の場合、右利きの人の場合ほどの偏りはないといいますが、
それでも全くゼロとはいえないのではないか、
という疑問が私にはあります。
左が利き目だとしますと、視覚的にも右方向に進むよりは、
左方向への進行の方が左利きには向いているように思われます。
左利きの人において、視覚的にも左優位が存在するとすれば、
腕や指の動きという面でも左方向への進行が優位と思われますので、
左方向に音階を挙げてゆくという音階順のキーボード配置の方が
左利きの演奏者には向いているように思うのですけれど、
どんなものでしょうか。
*参照:
『左ききの神経心理学』八田武志/著 医歯薬出版 1996.11
―左利き研究の専門書。
20年余の左利き・利き手研究を研究をまとめたもの。
http://www.amazon.co.jp/dp/4263233174/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
●左利き演奏者の場合の音階順
音階の並び順を左右逆の入れ替えてみればどうなるでしょうか。
【左用ピアノの鍵盤】
(音階が上がる)←←←
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(左)ド・シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ド(右)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(音階が下がる)⇒⇒⇒
(左腕を押す)⇒┃ ┃⇒(右腕を引く)
(左腕を引く)←┗(身体)┛←(右腕を押す)
左利きの人の場合、音階の方向を、
「左から右へ(⇒)」「ドレミ~」と上がっていくのではなく、
逆に、左から「ドシラ~」と下がっていく逆の配置にすると、
左手で弾くとき、腕を引く方向で「~ミレド」と
滑らかに上がってゆくことができるのではないでしょうか。
右手はそれを追うように、
右腕を押すように動かすので、伴奏の際も力が弱くならないで、
力を入れやすい形になる(?)のではないでしょうか。
そういう風に考えてゆきますと、
左利きの演奏者の場合は、従来の音階順ではなく、
その逆の左方向に音階を上がってゆく
逆転型のキーボードが適切ではないか、と考えます。
●利き手別理想の音階順キーボード例
利き手別の理想の音階順キーボードの例を下に示してみます。
<右利きの演奏者の場合>
(右手・右腕)【右に引く方向(⇒)】
ド⇒レ⇒ミ⇒ファ⇒ソ⇒ラ⇒シ⇒ド
<左利きの演奏者の場合>
(左手・左腕)【左に引く方向(←)】
ド←シ←ラ←ソ←ファ←ミ←レ←ド
こういうキーボードが誕生すれば、
左利きの人はきっとこちらの方が扱いやすい、
と感じるのではないでしょうか。
当初は、違和感があるかもしれませんが、
しばらくいじっていれば、自然となじんでしまうのではないか、
と思います。
これは私自身の経験から感じることでもあります。
私自身は、右用のハサミ(を左手で使う)で育ち、
30代半ば過ぎから左用を使うようになって、
その時の経験では初めの数回はうまく使えなかったのですが、
すぐに慣れてしまいました。
特に線にそって切るという場合などは、
線を自然な角度で実際に見ながら切れるので、感激でした。
また、半田付けなどの作業でも、初めは右手で教えられ、
その方法を身につけましたが、
すぐに自己流に左手でやる方法に慣れました。
左手は利き手なので、右手でやるうちに、
自然に脳内で左手でのやり方もマスターできているように思います。
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「★600号までの道のり」(12)第231号 ~ 第240号
第231号(No.231) 2010/10/2「創刊6年目に当たって」
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
創刊6年目に当たって
第232号(No.232) 2010/10/9
「《矯正/直す》表現に思う(6)親御さんへ」
▲左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ▲ ..第ニ土曜日掲載
―その17― 《矯正/直す》表現に思う
(6)左利きの子を持つ親御さんへお願い
第233号(No.233) 2010/10/16
「名作の中の左利き(10)「左ぎっちょクラブ」ギュンター・グラス」
≪左利き学入門≫ ■名作の中の左利き■ ..第三土曜日掲載
―その10― 「左ぎっちょクラブ」ギュンター・グラス
ギュンター・グラスの短編小説「左ぎっちょクラブ」
(『僕の緑の芝生』飯吉光夫訳 小沢書店 1993.10.20)
第234号(No.234) 2010/10/23
「<左利きプチ・アンケート>第67回50年後21世紀後半はどんな社会?」
●<左利きプチ・アンケート>● ..第四土曜日掲載
第67回 50年後21世紀後半はどんな社会?
第235号(No.235) 2010/10/30
「<LYグランプリ>2011候補・2010年左利きの人・事・物」
第5回<LYグランプリ>2011読者大賞候補・
2010年左利きの人・事・物 総ざらい(part1)
<LYグランプリ>2011候補を総点検。2010年ここまでの
左利きの人・事・物を総ざらいしてみましょう。
第236号(No.236) 2010/11/6
「<LYグランプリ>2011候補・2010年左利きの人・事・物(2)」
第5回<LYグランプリ>2011読者大賞候補・
2010年左利きの人・事・物 総ざらい(part2)
<LYグランプリ>2011候補を総点検。2010年ここまでの
左利きの人・事・物を総ざらいしてみましょう。(part2)
第237号(No.237) 2010/11/13「左利きの教本について考える(1)
ある幼児向け生活技術教本の不思議(前編)」
▲左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ▲ ..第ニ土曜日掲載
―その18― 左利きの教本について考える
(1)ある幼児向け生活技術教本の不思議(前編)
内容:某社から出版されて、好評だという生活技術を教える図鑑。
この本の目次にはある注意書きが示されています。
これが一見当然? その実、非常に恐ろしい!内容で…。
第238号(No.238) 2010/11/20
「名作の中の左利き―番外編―2 夏目漱石『坊っちゃん』は左利き?」
≪左利き学入門≫ ■名作の中の左利き■ ..第三土曜日掲載
―番外編―2 夏目漱石『坊っちゃん』は左利き?
第239号(No.239) 2010/11/27「<左利きプチ・アンケート>
再版 第4回 貴方の好きな左利きの呼び名は何ですか?」
●<左利きプチ・アンケート>● ..第四土曜日掲載
再版 第4回 貴方の好きな左利きの呼び名は何ですか?
前回の●<左利きプチ・アンケート>●
第67回 10.10.23 50年後21世紀後半はどんな社会?
第240号(No.240) 2010/12/4「<LYグランプリ>2011候補・
2010年左利きの人・事・物(3)」
「第5回<LYグランプリ>2011読者大賞候補・
2010年左利きの人・事・物 総ざらい(part3)」
内容:
<LYグランプリ>2011候補を総点検。2010年ここまでの
左利きの人・事・物を総ざらいしてみましょう。7-8月。
――10号ずつの紹介です。
第一土曜は、<LYグランプリ>2011候補の紹介
第二土曜は、<左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ>
《矯正/直す》表現に思う → 左利きの教本について考える
第三土曜は、≪左利き学入門≫ 番外編
第四土曜は、<左利きプチ・アンケート>
第五土曜があるときは、臨時増刊で、バックナンバーの紹介
引き続き、この時期は欄外で、【おまけコーナー】として、
最新の左利き情報をメモ的に紹介していました。
*各号のタイトルを見て、「これ気になるなあ、読んでみたいなあ」
というものがございましたら、リクエストをお願いいたします。
再配信なり、現時点での加筆・修正を行っての配信など、
改めてお届けすることも考えています。
リクエストは、本誌に返信してください。
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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(2)演奏時の腕の移動方向」と題して、今回も全紹介です。
今号もバックナンバーの紹介は、10号ずつとしました。
内容は、音楽・楽器と左利き対応についてで、ピアノのキーボード――音階の配置についてです。
初めに左利き用のピアノについて書かれているブログを紹介し、そこに東上する左利きのピアニスト、クリストファー・シードさんにふれています。
この方については、もうずいぶん昔に一度紹介した記憶があります。
調べ直すのが面倒でチェックをおこたっていますが、どこかでまたチェックし直しておこうと思います。
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弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。
*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
『レフティやすおのお茶でっせ』〈左利きメルマガ〉カテゴリ
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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
" target="_blank">左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(2)-週刊ヒッキイ第616号
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