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中国の古典編―漢詩を読んでみよう(10)漢代(2)武帝-楽しい読書295号

2021-06-01 | 本・読書
 ―第295号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2021(令和3)年5月31日号(No.295)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(10)漢代(2)武帝」



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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2021(令和3)年5月31日号(No.295)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(10)漢代(2)武帝」
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 「中国の古典編―漢詩を読んでみよう」の10回目。

今回も引き続き、漢代の英傑たちの作品から紹介します。

 まずは漢の武帝の作品から。

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◆ 楚調の歌 ◆
 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(10)漢代(2)
  漢代の英傑たち
  ~ 漢の武帝 「秋風辞」 ~
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今回の参考文献――

『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
 江原正士、宇野直人/著 平凡社
「三、楚調の歌――漢代の英傑たち」より


(画像:書影(タイトル部分)『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』(江原正士、宇野直人/著 平凡社 2010/4/20))

(画像:武帝 (漢)(出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』))

 ●武帝「秋風辞」

前漢の半ば、紀元前100年前後、
このころから中国の歴史に英雄豪傑が数多く現れ、
色々なエピソードとそれにまつわる詩が登場するといいます。

武帝(紀元前156~前87)の全盛時代、
文化政策の推進で文化人が優遇され、色々な人材が登用されました。

そのうちの二大文化人が、司馬遷と司馬相如でした。

まずはその武帝の詩から。
(『文選(もんぜん)』巻45、『古文真宝』などに収録。)


「秋風辞」秋風の辞 高祖武帝

 上行幸河東、祠后土。顧視帝京欣然。中流与群臣飲燕、上歡甚。
 乃自作秋風辞。曰、

 上(しょう) 河東(かとう)に行幸(ぎょうこう)し、
 后土(こうど)を祠(まつ)る。
 帝京(ていけい)を顧視(こし)して欣然(きんぜん)たり。
 中流(ちゅうりゅう)に群臣(ぐんしん)と飲燕(いんえん)し、
 上(しょう) 歓(よろこ)ぶこと甚(はなはだ)し。
 乃(すなわ)ち自(みづか)ら「秋風の辞」を作(つく)る。曰(いわ)く、


 秋風起兮白雲飛  秋風(しゅうふう)起(おこ)って
          白雲(はくうん)飛(と)ぶ
 草木黄落兮雁南帰 草木(そうもく)黄落(こうらく)して
          雁(がん)南(みなみ)に帰(かへ)る
 蘭有秀兮菊有芳  蘭(らん)に秀(はな)有(あ)り
          菊(きく)に芳(かんば)しき有(あ)り
 携佳人兮不能忘  佳人(かじん)を携(たづさ)えて
          忘(わす)るる能(あた)はず
 泛楼舡兮済汾河  楼舡(ろうこう)を泛(うか)べて
          汾河(ふんが)を済(わた)り
 橫中流兮揚素波  中流(ちゅうりゅう)に橫(よこたは)つて
          素波(そは)を揚(あ)ぐ
 簫鼓鳴兮發棹歌  簫鼓(しょうこ)鳴(な)つて
          棹歌(とうか)発(はつ)す
 歓楽極兮哀情多  歓楽(かんらく)極(きわ)まつて
          哀情(あいじょう)多(おほ)し
 少壮幾時兮奈老何 少壮(しょうそう)幾時(いくとき)ぞ
          老(お)いを奈何(いかん)せん

 (『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
   「三、楚調の歌――漢代の英傑たち」より )


 ●宇野直人さんの解説から

第一段 最初の三句――季節感の描写

 秋風が吹き起こり、白い雲が飛んでいる。
 草や木は黄ばみ落ちて、渡り鳥の雁は南に帰る季節になった。
 蘭は愛らしい花を咲かせ、菊は馥郁たる香りを放っている。

秋の悲しさを歌い、動植物が出てくるところは、
宋玉の影響で、武帝は宋玉を意識していた、

『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』宇野直人さんの解説。

第二段 次の四句――今の自分の状況を描写

 今祀ってきた美しい女神のことが忘れられない。
 こうして屋形舟を浮かべて汾河を渡り、
 流れを横切りながら白波をかきたてている。
 舟の上では縦笛や鼓が華やかに鳴り、舟歌が威勢よく湧き起こる。

ああなんという楽しいひとときだろう、
武帝が地の女神を祀ったときのものなので、
「佳人」は女神ととっていい、と宇野直人さん。


第三段 最後の二句――そこから触発された感情を描写

 喜びや楽しみが極まり尽きると、
 かえって物悲しい気分が広がって来る。
 私のこの若い元気のよい時はいったいいつまで続くのか。
 しのびよる老年にどう対処したらよいのだろうなあ。


従来楚調の歌といえば、屈原の君王から受け入れられぬという、
鬱積した悲憤慷慨が基調にあったものですが、
ここでは、誰にでもあるような人生への歎きになっています。

積極策で漢帝国の版図を広げ、全盛期を築いた帝王といえども
どうしようもないのが、寿命や健康という問題です。
ある意味ではてっぺんを取ったものにしか言えない歎きかもしれません。


 ●ネットから

漢武帝:秋風辞 - 漢詩と中国文化 - 東京を描く
https://chinese.hix05.com/Han/han04.butei.html

の作者:壺齋散人(引地博信)さんは、
こんな説をとなえておられます。

 《それにしても、皇帝の歌にしては余りにも人間臭く響くのは、
  この歌を流れている老荘思想のためだと思われる。
  漢は歴代儒教を重んじ老荘思想を排してきたが、
  武帝はこの思想に親和性を感じていた節がある。》


また、

秋風の辞 - 沈思翰藻(2017年9月24日) 
http://chugokubungaku.hatenablog.com/entry/2017/09/24/202200

によりますと、
(前言にもありますように、)
 
 《この詩は汾河において祖先をまつる祭祀を行い、
  そこで群臣と宴会を催したときの作とされています。

  当時は漢の国威が最高潮に達したときであり、
  その満ち足りた思いを詠い上げますが、
  さらには迫り来る老いを悲しむものとなっています。
  武帝は晩年に老いて死ぬことを恐れ、
  不老不死の仙術を求めていたと言います。

  この詩における秋風はもの悲しさを感じさせるものであますが、
  以降この秋風のイメージが継承されるようになります。》

  (原文のママ)


とあります。

てっぺんに立ったものには、
てっぺんに立ったものなりの悩みというものがあるようです。

人間の欲望の深さというものでしょうか。

 ・・・

では、今回はこのへんで。

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 ● 漢詩の入門書等を読む

★『漢詩入門』一海知義/著 岩波ジュニア新書 1998.6.22
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▲★『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
江原正士、宇野直人/著 平凡社 2010/4/20
―漢詩の歴史をたどるシリーズ全4巻。第1巻は『詩経』から屈原の
 『楚辞』、漢や三国時代を経て東晋の陶淵明まで。
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 を対話形式でわかりやすく読み解く。
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★『漢詩入門』入谷仙介/著 日中出版 1979/01
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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
中国の古典編―漢詩を読んでみよう(10)漢代(2)武帝-楽しい読書295号

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