★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

アルテュール・グリュミオーのショーソン:詩曲/サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ、 ハバネラ/ ラヴェル:ツィガーヌ        

2024-07-18 09:37:46 | 協奏曲(ヴァイオリン)


ショーソン:詩曲
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ
        ハバネラ
ラヴェル:ツィガーヌ

ヴァイオリン:アルテュール・グリュミオー

指揮:マニュエル・ロザンタール

管弦楽:コンセール・ラムルー管弦楽団

録音:1966年3月(ショーソン/ラヴェル)、1963年4月(サン=サーンス)、フランス、パリ

発売:1980年

LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) 13PC‐242

 このLPレコードは、フランコ・ベルギー楽派の泰斗アルテュール・グリュミオー(1921年―1986年)が、ショーソン、サン=サーンス、ラヴェルのヴァイオリンとオーケストラのための名曲を収録した一枚。グリュミオーは、ベルギーに生まれ、ブリュッセル王立音楽院で学ぶ。その後、パリに留学してジョルジュ・エネスコに入門。デュボアとエネスコに学んだグリュミオーは、正統的フランコ・ベルギー派のスタイルを後世に遺したことで知られる。第二次世界大戦中は、ナチス・ドイツ占領下のベルギーにおいて独奏会や室内楽の演奏旅行を行った。第二次世界大戦後は、ピアニストのクララ・ハスキルをパートナーとした演奏活動などを展開し、”黄金のデュオ”と評され数々の名盤を遺した。そして、ソリストとして世界的な名声を得ることになる。グリュミオーは音楽界への貢献が認められ、1973年に国王ボードゥアン1世により男爵に叙爵された。1961年には来日も果たしている。グリュミオーは、録音を数多く遺しているが、それらが全て気品のある艶やかな美音で貫かれており、ヴァイオリンの持つ特性を最大限に表現しきった名人芸は、現在でも、多くのファンを魅了して止まない。特にモーツァルトの演奏には定評があったが、ドイツ・オーストリア系の作曲家の演奏においてもその力量は、遺憾なく発揮された。だが、やはりその特徴を最大限に表現したのは、このLPレコードに収容されたショーソン、サン=サーンス、ラヴェルなどのフランス系の作曲家の作品であろう。その意味からこのLPレコードは、グリュミオーの真価を知るには最適な一枚ということができる。歌うところは存分に歌い、しかも、その余韻を含んだ表現力は、ヴァイオリンの持つ特性を余すところなく発揮させている。ここでの音楽は、外部との戦いでもなく、心の葛藤でもない。あくまで何よりも詩的な情緒を大切にし、微妙で自由な振る舞いの音楽の中に身を預け、そして陶酔の一時を過ごす・・・。グリュミオーのヴァイオリン演奏は、そんな夢ごこちの心境に、リスナーを知らず知らずに導き入れてくれるかのようだ。マニュエル・ロザンタール指揮コンセール・ラムルー管弦楽団の伴奏は、グリュミオーのあくまでも詩的で優雅な演奏を、一層引き立て、その効果を倍増させることに見事に成功している。(LPC)


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