★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇パレナン弦楽四重奏団のフランク:弦楽四重奏曲 ニ長調

2022-11-07 09:47:13 | 室内楽曲(弦楽四重奏曲)


フランク:弦楽四重奏曲 ニ長調

弦楽四重奏:パレナン四重奏団

LP:東芝EMI EAC-40144

 セザール・フランク(1822年―1890年)は、ベルギー出身で、フランスで活躍した作曲家、オルガン奏者である。1837年、パリ音楽院に入学。その後、教会オルガニストとして地道な演奏活動を送る。その間、作曲活動を行い、交響曲ニ短調、ピアノ五重奏、ヴァイオリンソナタ、歌曲「天使のパン」など、現在我々がしばしば耳にする名曲を生み出したのである。このため他の作曲家とは異なり、華やかなイメージとは程遠く、禁欲的な教会音楽家としてのイメージの方が定着している。セザール・フランクは、ネーデルラント連合王国のリエージュに生まれ、1837年にパリ音楽院に入学し、作曲、ピアノ、オルガン等を学ぶ。1858年に就任したサント・クロチルド聖堂のオルガニストの職には、その後生涯にわたってとどまった。最晩年の1885年ごろから、現在よく知られる代表作を次々に作曲。フランクの死の年に作曲された唯一の弦楽四重奏曲 ニ長調は、そんなフランクの資質を体現したような曲である。他のフランクの曲と同じように、聴けば聴くほど深い精神性が滲み出てくる弦楽四重奏曲であり、全体がフランス音楽の特徴に彩られた美しい弦楽四重奏曲に仕上がっている。ここでもフランクの特徴でもある、いくつかの主題的な材料を各楽章で用いる循環形式が使われており、対位法の駆使と相俟って、最晩年の充実した作風が聴いて取れる。このLPレコードで演奏しているのは、嘗てフランスの弦楽四重奏団として名を馳せた、ジャック・パレナンによって1943年に結成されたパレナン四重奏団である。その影響を受けた作曲家達は“フランキスト”と呼ばれ、のちにドビュッシーらの印象主義音楽と対抗することになる。ジャック・パレナンはパリ音楽院で著名なカルヴェに師事。このカルヴェの指導の下、同音楽院で学んだ3人と共に弦楽四重奏団を結成した。1957年と1961年の2回、来日を果たしている。同弦楽四重奏団の特徴について「そのひびきは、ウィーン四重奏団のものともボヘミアの四重奏団とも違う。まさに、フランスの団体そのものであり、どちらかというと明るい音色だが、その明るさを特に強調しているわけではない。それに、つややかであるというよりも、もっと鋭敏な反応を示しそうな張りつめた緊張感をみせもする」とこのLPレコードのライナーノートにおいて門馬直美氏はその演奏の特徴を紹介している。その演奏を聴くと、まるで透明感溢れる水彩画を見ているようでもあり、LPレコードの良さがひしひしと伝わってくるのである。(LPC)


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