フォーレ:チェロソナタ第1番/第2番
エレジー
チェロ:ポール・トルトゥリエ
ピアノ:ジャン・ユボー
LP:RVC(ΣRATO) ERX‐2021(STU‐70101)
フォーレがチェロを愛していたことは、このLPレコードを聴けば即座に納得できる。特に、このLPレコードのB面に収められた有名なエレジー(悲歌)を聴けば誰もが納得するに相違ない。これは、チェロという楽器の持つ、物悲しくも、奥行きのある音色を、最大限に発揮させたチェロの小品の古今の名曲である。フォーレは、ピアノ伴奏付き独奏曲を全部で13曲作曲しているが、そのうち8曲がチェロとピアノの曲ということからも、フォーレのチェロ好きが偲ばれよう。チェロとピアノの組み合わせは、実に相性がいい。チェロの内省的な篭った響きに、ピアノの歯切れのよい引き締まった音が絶妙な味わいを醸し出す。フォーレは、1917年にヴァイオリンソナタ第2番を作曲しているが、その後に作曲したのが2曲のチェロソナタである。この2曲とも、とても70歳を超えた作曲家が書いた作品とは思われないような瑞々しさに溢れた最晩年の佳曲である。チェロソナタ第1番の第1楽章アレグロは、力強く、流れるようなドラマティックな展開がリスナーに充実感を与える。第2楽章アンダンテは、フォーレの持ち味を存分に発揮させた叙情的で、内省的なメロディーが印象に残る。もうこれは、チェロとピアノが奏でる詩そのものと言ってもいいほど。一方、チェロソナタ第2番は、何と言っても第2楽章アンダンテの雰囲気が如何にもフォーレらしい内省的な音楽を形作っており、何とも印象的だ。かつて「葬送歌」として作曲したメロディーをテーマに展開される。終楽章は、とてもこの2年後に亡くなった人の作品とは思えないほど、華やいだ雰囲気に満ち溢れ、リスナーはチェロの醍醐味を存分に味わい尽くすことができる。チェロを弾いているのはフランスの名チェリストであったポール・トルトゥリエ(1914年―1990年)である。パリに生まれ、6歳の時からチェロを学び、16歳でパリ音楽院を首席で卒業。その後、カザルスに師事。モンテ・カルロ交響楽団、ボストン交響楽団、パリ音楽院管弦楽団の首席チェロ奏者を務め、独奏者としても人気があった。このLPレコードでの演奏は、完全にフォーレに同化した名人芸を披露している。ジャン・ユボー(1917年―1992年)は、フランスのピアニストで数多くの録音を今に遺している。このLPレコードでは、ポール・トルトゥリエとの息もぴたりと合い、室内楽演奏の醍醐味を存分に味あわせてくれている。(LPC)