★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ブルーノ・ワルター指揮ウィーン・フィルのマーラー:「大地の歌」

2023-08-28 09:35:18 | 交響曲


マーラー:「大地の歌」

指揮:ブルーノ・ワルター

管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

コントラルト:カスリーン・フェリアー

テノール:ユリウス・パツァーク

発売:1964年

LP:キングレコード MR 5036

 マーラーは、交響曲としては、1~10番(第10番は未完の遺作)のほかに「大地の歌」を書き遺している。本来は全部で11の交響曲となるのだが、「大地の歌」だけには交響曲としての連番が付けられていない。つまり、「大地の歌」は、交響曲か否かという疑問が残る。この「大地の歌」の楽譜の副題は「テノールとコントラルト(またはバリトン)独唱と管弦楽のための交響曲」と書かれているが、ウニヴェルザール出版社から出版されている決定版総譜には「大地の歌」とだけ記されていて、「交響曲」とは記されていない。このため現在は「大地の歌」だけの表記が一般的だ。「大地の歌」のテキストは、中国の詩集をドイツ語訳した「支那の笛」と題した本から取っている。マーラーは、それまで「さすらう若人の歌」「亡き子をしのぶ歌」「リュッケルトの詩による歌曲」など、管弦楽付きの歌曲を作曲してきた実績を持つ。では、どうして「大地の歌」も管弦楽曲付き歌曲に終わらせなかったのであろうか。多分、中国の詩人が書いた詩というエキゾチックな雰囲気に浸るうち、歌曲以上に管弦楽のパートに力が入ってしまい、気が付くと交響曲がで出来上がっていた、といった風にも取れる。このLPレコードでの指揮は、マーラーの直弟子で、ロマン的な曲を指揮させれば当時、右に出るものはいなかった指揮者のブルーノ・ワルター(1876年―1962年)。そして、管弦楽演奏は、マーラー自らが指揮したウィーン・フィルという黄金コンビ。それに加え、独唱陣がコントラルトのカスリーン・フェリアー(1912年―1953年)、テノール:ユリウス・パツァーク(1898年―1974年)と当時考えられる最高の歌手を揃えている。カスリーン・フェリアーの深く思慮深い歌声は、中国の詩人の歌を歌わせればぴったりだし、ユリウス・パツァークの明るく澄み切った歌声は、中国の詩人たちの伸びやかな詩の世界の表現にこれほどのものはなく、共に説得力は充分だ。このため、今でもこの録音は、数ある交響曲「大地の歌」の録音の中でも、ベストワンに数え上げられているほどの名演となっている。コントラルトのキャスリーン・フェリアは、イギリス、ランカシャー州出身。正式な音楽教育を受けてはいなかったが、後に本格的音楽教育を受けた。作曲家のブリテンは、彼女のために多くのパートを作曲した。テノールのユリウス・パツァークは、ウィーン出身。クレメンス・クラウスに見いだされ、ドイツやオーストリアを中心に活躍した。(LPC)


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