ドヴュッシー:交響詩「海」
管弦楽曲「牧神の午後への前奏曲」
管弦楽曲「夜想曲」
指揮:ポール・パレー
管弦楽:デトロイト交響楽団
発売:1976年
LP:日本フォノグラム(フォンタナ・レコード)
このドヴュッシーの管弦楽曲3曲を収めたLPレコードのジャケットには、葛飾北斎の浮世絵である富嶽三十六景「神奈川沖波裏」が採用されている。これはドヴュッシー:交響詩「海」が1905年に出版された時、スコアの表紙に「神奈川沖浪裏」が使用されたことに倣ったものであろう。作曲の時、ドビュッシーは海の見えないブルゴーニュ地方にいたのだが、これまでの海の記憶を頼りに作曲を開始したのだという。曲は、「海の夜明けから真昼まで」「波の戯れ」「風と海との対話」というタイトルが付けられた3つの部分からなる。初演時には、賛否両論が起こり、必ずしも成功とは言えなかったようであるが、数年経った後からは、高い評価が与えられるようになって行く。2曲目の「牧神の午後への前奏曲」は、1892年から1894年にかけて作曲された管弦楽曲であり、詩人マラルメ の「牧神の午後」に感銘を受けて書かれた作品である。牧神の象徴である「パンの笛」をイメージする楽器のフルートが重要な役割を担っている。3曲目の「夜想曲」は、1897年から1899年にかけて作されたた管弦楽曲。「雲」「祭」「シレーヌ」の3曲からなる。これらドビュッシーの管弦楽曲3曲を演奏しているのは、ポール・パレー指揮デトロイト交響楽団。フランス出身の作曲家兼指揮者であったポール・パレー(1886年―1979年)は、このLPレコードで演奏しているデトロイト交響楽団を世界有数のオーケストラに育て上げたことで知られる。パリ音楽院で学び、当初は、作曲家として頭角を現し、ローマ大賞を獲得している。第一次世界大戦後に指揮者としての活動も行うようになる。モンテカルロ・フィル、コンセール・コロンヌ、イスラエル・フィルの音楽監督などを歴任後、1962年からデトロイト交響楽団音楽監督・首席指揮者に就任し、同楽団を世界有数のオーケストラに育て上げた。このLPレコードでのポール・パレー指揮デトロイト交響楽団は、指揮者と楽団員とが一体化し、固く結ばれた信頼感に基づいて演奏していることが、手に取るように分かる。指揮者と楽団員とがこんなにも一体感で結ばれた演奏を私はほかに知らない。演奏内容は、3曲ともフランス的なセンスに溢れた名演だ。アメリカのオーケストラがここまでフランス的な演奏をするとは驚きだ。印象主義の絵画を見ているような、茫洋とした音楽表現に、しばし、夢の中を彷徨する思いがする。数ある、これら3曲の録音の中でも白眉と言っても言い過ぎではない録音となっている。(LPC)