★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇モントゥー指揮ロンドン交響楽団のドビュッシー:牧神の午後への前奏曲、夜想曲(雲/祭り)/ラヴェル:スペイン狂詩曲、なき王女のためのパヴァーヌ 

2021-12-20 09:38:54 | 管弦楽曲


ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲/夜想曲(雲/祭り)
ラヴェル:スペイン狂詩曲/なき王女のためのパヴァーヌ

指揮:ピエール・モントゥー

管弦楽:ロンドン交響楽団

発売:1980年

LP:キングレコード K15C 8041

 ピエール・モントゥー(1875年―1964年)は、フランス、パリ出身の名指揮者。パリ音楽院卒業後、1906年にコロンヌ管弦楽団を指揮しデビューを飾る。ストラヴィンスキーの「春の祭典」、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」など、20世紀の名作バレエ音楽の初演を手がけたことでも知られる。1929年にはパリ交響楽団の創立時の常任指揮者を務める。1935年からはサンフランシスコ交響楽団の常任となり、黄金時代を築く。1961年にはロンドン交響楽団の首席指揮者となり(この時実に88歳)、亡くなるまでその地位にあった。静寂さと透明性を堅持しつつ、自然と沸き立つようなロマンの香りが馥郁とするその演奏は、多くのファンの心を掴んで離さなかった。このLPレコードは、ロンドン交響楽団の常任として入れた最初の録音で、しかも、「牧神の午後への前奏曲」と「スペイン狂詩曲」の録音は、意外にもこれが最初という。ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」は、ドビュッシー30歳の時の作品で、これによりドビュッシーは一躍脚光を浴びることになる。この曲はマラルメの詩「牧神の午後」に付けた管弦楽曲であり、楽器の音色の変化を微妙に描き分け、幻想的な世界を表現することに成功している。ドビュッシーの「夜想曲」は、1899年に作曲された曲。第1曲「雲」、第2曲「祭り」、第3曲「海の精(女声合唱付き)」の3曲からなるが、ここでは第3曲は省かれている。この曲で、ドビュッシーは、印象主義による音楽を、完成域まで高めることに成功した。ラヴェルの「スペイン狂詩曲」は、ラヴェルの最初の管弦楽曲で、1907年32歳の時に作曲された。全体は、「夜への前奏曲」「マラゲーニア」「ハバネラ」「市場」の4つの部分からなり、豊穣なオーケストレーションが印象的で、生き生きとしたリズムと色彩感が溢れた音が見事に調和して、リスナーを飽きさせることはない。ラヴェルの「なき王女のためのパヴァーヌ」は、ラヴェルがパリ音楽院の作曲科で、フォーレに学んでいた時に作曲したピアノ曲「なき王女のためのパヴァーヌ」を、1910年に作曲者自身で管弦楽用に編曲した作品。3部形式で書かれており、パヴァーヌ舞曲は、弦のピチカートを伴奏にして、哀愁を含んだホルンの主題が印象的な曲。このLPレコードでのモントゥーは、曲の隅々まで目の行き届いた指揮ぶりを見せ、静かな中にも曲の生き生きとした表情を巧みに描き切っている。正にフランスきっての名指揮者の面目躍如といったところだ。(LPC)


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