★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇チェコの名指揮者ターリッヒ指揮チェコ・フィルのスーク:弦楽セレナード/組曲「お伽話」

2021-02-11 10:07:35 | 管弦楽曲

スーク:弦楽セレナードOp.6
    組曲「お伽話」Op.16

指揮:ヴァーツラフ・ターリッヒ

管弦楽:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

発売:1979年9月

LP:日本コロムビア(SUPRAPHON) OW-7810-S

 これは、チェコの作曲家ヨセフ・スーク(1874年―1935年)の弦楽セレナードOp.6と組曲「お伽話」Op.16を、チェコの名指揮者であったヴァーツラフ・ターリッヒ(1883年―1961年)が名門チェコ・フィルを指揮した記念碑的なLPレコードである。録音状態は比較的良く、充分に鑑賞に耐え得るレベル。我々はヨゼフ・スークという名前を聞くと、チェコの名ヴァイオリニストのヨゼフ・スーク(1929年―2011年)を思い浮かべるが、このLPレコードの同姓同名の作曲家ヨセフ・スークは祖父にあたる。作曲家ヨセフ・スークは、プラハ音楽院でドヴォルザークに学び、ドヴォルザークの娘オチリエと結婚した。弦楽セレナードは、後に結婚するオチリエへの想いが込められた作品だけに、甘く夢見るような優雅な雰囲気を持つ、ドヴォルザークの弦楽セレナードに似た佳品。スークは、新ロマン派の詩人のユリウス・ゼイエル(1841年―1901年)と親交を結んでいたが、ゼイエルが書いた2つの戯曲のための付随音楽を作曲した。その一つのお伽話劇「ラデゥースとマフレナのためのもの」Op.13から4つの部分を抜粋して管弦楽用に編曲したのが組曲「お伽話」である。このLPレコードでこれら2曲を指揮しているのがチェコの名指揮者ヴァーツラフ・ターリヒ(1883年ー1961年)。ターリッヒは、プラハ音楽院を卒業し、アルトゥール・ニキシュの推薦を得てベルリン・フィルのヴァイオリニストとなり、コンサート・マスターに就任。しかし、その後ターリッヒは指揮者を目指した。1908年には初めてチェコ・フィルを指揮することになる。それまでヨーロッパの地方オーケストラの一つにすぎなかったチェコ・フィルを現在あるような国際的なオーケストラにまで高めたのはターリヒの功績であると言われている。このLPレコードにおける弦楽セレナードのターリッヒの指揮ぶりは、実に明快であり、しかも正統的な優美さに溢れた演奏を聴かせてくれる。スークの弦楽セレナード自体が郷土色満点なこともあって、懐かしさが込み上げ、ロマンの香りが一面に降り注ぐような演奏内容である。弦の響きがこれほどまでに色彩感を持って演奏される録音は滅多に聴くことはできない。一方、組曲「お伽話」は、如何にも劇付随音楽らしく、物語性を強く含んだ性格を有した曲。メンデルスゾーンの「真夏の世の夢」を思い起こさせる。ターリッヒの指揮は、そんな幻想的なお伽話の世界を、巧みに描き切る。チェコ・フィルの演奏もメリハリが利いて耳に心地良い。(LPC)


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