★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇カラヤン指揮ベルリン・フィルのベートーヴェン:交響曲第1番/第2番

2023-12-04 09:54:53 | 交響曲(ベートーヴェン)


ベートーヴェン:交響曲第1番/第2番

指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1961年12月27日~28日(第1番)/1961年12月30日、1962年1月22日(第2番)、ベルリン、イエス・キリスト教会

LP:ポリドール(グラモフォンレコード) MG4001(2535 301)

 このLPレコードの録音記録を見ると、ベートーヴェン:交響曲第1番が1961年12月27日~28日、同第2番が1961年12月30日、1962年1月22日とある。場所は、ベルリンのイエス・キリスト教会である。この頃、カラヤンはどのような指揮活動を展開していたのであろうか。カラヤンが生まれたのが1908年であるから、この当時、53歳と指揮者としては正に円熟期を迎えたときの録音となる。カラヤンは第2次世界大戦後、1948年にウィーン交響楽団の首席指揮者に就任。1951年には、戦後再開したバイロイト音楽祭の主要な指揮者として抜擢されている。そしてフルトヴェングラーが急逝した翌年、1955年にベルリン・フィルの終身首席指揮者兼芸術総監督に就任し、1989年まで34年もの長期間この地位にとどまった。1957年には同楽団と初の日本演奏旅行を行う。また、1956年にはウィーン国立歌劇場の芸術監督に就任(1964年に辞任)し、正に“帝王”の名をほしいままにしていた。このLPレコードの録音は、丁度その頃行われたもので、カラヤンの“帝王”ぶりが、いかんなく発揮された演奏内容を聴くことができる。第1番の第1楽章は、ゆっくりと始まる。実に恰幅のいい演奏である。こんな堂々とした「第1番」は滅多に聴けるものではない。何かこれから始まるベートーヴェンの傑作交響曲の出現を預言するかのような指揮ぶりだ。一般にベートーヴェンの交響曲第1番は軽く、軽快に演奏されることが多いが、カラヤンとベルリン・フィルは、軽く、軽快には演奏しない。カラヤンもベルリン・フィルもその真逆を行くのだ。第2楽章は、静かな広がりが印象的。第3楽章になって、ようやく軽快なベートーヴェンの足取りが聴き取れるようになる。第4楽章におけるベルリン・フィルの演奏技術の巧みさとカラヤンの演出力の確かさには脱帽だ。特に交響曲第2番は、カラヤンとベルリン・フィルの本領発揮の録音。第1楽章は、張りつめた緊張感がひしひしとリスナーに伝わってくる演奏内容だ。第2楽章の、この輝かしさと美的感覚のバランスの良い名演奏ぶりはどうだ。第3楽章は、伸び伸びと機智に飛んだ演奏とでも表現したらいいのか。そして第4楽章は、ベートーヴェンとカラヤンとベルリン・フィルの心が一つとなって、音楽を楽しんでもいるかのような、厚みのある音と盛り上がりがとにかく素晴らしい。これは、巨匠カラヤンの存在感を存分に見せつけた録音だ。(LPC)


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