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ときどき旅、いつでも変わらぬジャニーズ愛

Burn.ーバーンー

2014-04-09 | ジャニーズ雑記
先月の発売日に購入してから、ゆっくりと読み進めてきた新作を、昨日読了した。 加藤シゲアキ著『Burn.ーバーンー』 渋谷サーガ3部作として、処女作『ピンクとグレー』(2012)、2作目『閃光スクランブル』(2013)を1年ごとに刊行、そしてそのラストとなるのが今作品。 アイドルという特殊な立場にありながら、1年に1作ずつ書き上げてこられたのは、もちろん周りのスタッフや編集者のサポートあってこそだが、やはりその土台に本人の強い意志があるからだと思う。 自分を自分で追い込んで、人に知られずに努力を重ねるタイプである加藤シゲアキだからこそ出来たこと。 あらためて、彼には『作家』という天性があったんだなあと思うのは、買いかぶり過ぎだろうか。 さて。 作品としては非常に読みやすく、読後感もすっきりとしており、また『家族』というテーマにより誰もが受け入れやすいストーリー展開になっている。 主人公が、子供から大人へと成長する過程、そして大人になった主人公が今度は子供を持つ父親へと変わる過程。 芸能界を舞台にしているのは、前2作と同じだが、その世界は、この作品の中ではほんの一部しか描かれていない。 描かれているのは、主人公レイジの、母と子一人というリアル家族と、ホームレスの徳さんとドラッグクイーンのローズとの疑似家族、そして、大人になってからのレイジが新しく作っていく家族、そのそれぞれの姿である。 家族という、誰にとっても普遍的な存在であるテーマが、読み手をすんなりと容易に作品の世界に招き入れ、そこから先は子供の時の記憶の一部を失った主人公が、謎に包まれた過去を遡っていくというミステリーとしての要素もあり、先の展開が気になって仕方がない。エンターテインメントとして素晴らしくバランスの取れた作品だと思う。 加藤シゲアキの内的世界観が随所に現れ、それが人によっては受け入れにくい点にもなっていた『ピンクとグレー』、加藤シゲアキらしい趣味嗜好がふんだんに盛り込まれた『閃光スクランブル』とは、明らかに作風が異なる。 わかりやすく言うと、過去2作品には『加藤シゲアキ』本人の影がちらつき、主人公の姿が本人と被ってしまっていた。それは、他の人の感想にも見かけたので、私だけが感じたことではないだろう。 ただそれは、彼をよく知るファンであればこその感覚だったかもしれない。もしかしたら、加藤シゲアキをよく知らない人が読めば、彼の影を感じることはなかったのかもしれない。 ただ、著者の影を感じなくても、前2作はある意味「クセ」のある作品だったと私は思う。 処女作が「ピンクとグレー」と色のタイトルだからというわけではないが、「加藤シゲアキの色」と「加藤シゲアキ的なこだわり」がそれぞれの作品の中にしっかりと根付いていた。 ひいき目もあるかもしれないが、私は彼のこだわりやクセが嫌いではないので、それをこのまま貫くのもありだと思っていた。 しかし、彼は今までと違うアプローチで今回の作品を作り出した。 雑誌のインタビュー記事によれば、今回はまずプロットから書き始め、書き始める前から編集者と相談しながら作品を構築して書いていったらしい。 その作業の中で、何百文字にわたって書いたストーリーを削らなくてはならなかったりと、テーマを際立たせるための大変な校正を進めながら、他人の意見を聞くということも、今回の彼はしてきたらしい。 作家としての彼なりのこだわりは失ってほしくないが、かといって独りよがりな作品ばかりを作っても、結局、万人に受け入れられず、書店の片隅に追いやられていく…というようなことは彼のファンとしてあってほしくない。 彼が望む、書店の『加藤シゲアキコーナー』がいつか実現するその日を目指すのなら、誰が読んでも『良作』と感じるような作品を、コンスタントに出し続けてほしいと思う。 アイドルグループNEWSの加藤シゲアキ、としての人気が今以上に出てくると、そうそう作品を書いてる余裕はなくなってくるかもしれないけれど(笑) ちなみに今回の作品で、私の中のレイジのキャストは藤原竜也でした。徳さんは吉田剛太郎さん。 ローズは誰がやっても面白そうと思って、特にイメージはなかったです(笑)