さてと今作、ひとつの軸になったのは「豊臣秀頼と松平忠輝の関係」です。
智本作品、主役ともうひとりの関係が、
物語の軸に据えられていることは珍しくなく、、、
『関ヶ原群雄伝』は大谷吉勝と小早川秀秋。
『本能寺将星録』は蒲生氏郷・・・と言いたいところですが、細川忠興と珠子ですね。
前者は幼馴染で、後者の鬼蛇は言わずもがなの夫婦な訳ですが。
さて、それでは秀頼と忠輝は?
この2人を語る時、避けては通れない名作があるのはよくよく知っております。
それを、漫画化した作品も名作です。
この作品において、2人は「親友」でした。
『豊臣蒼天録』の場合、「ライバル」という感じで組み立てて見ました。
そして、両者がそれぞれ相手に、ある種の「コンプレックス」を抱いていると。
この「ライバル関係」の強調は、
担当氏の「もっと、秀頼が忠輝にライバル意識持つとか・・・」
から生まれたような気がします。
(忠輝の出した「結論」は、物語開始時点から決めてありました)
これは1巻時点では、秀頼のほうが一方的に持っている感じです。
今、読み返すと序章の忠輝は、なんか余裕のある感じのキャラですね。。。
これ、実は1巻ラストから2巻スタート時点である程度、解消されてしまっています。
吉治のセリフにあった通りで、秀頼が井伊直孝の首を取ったので焦っている・・・と。
実のところ、秀頼はその後は別のことで悩んでいます(w
忠輝のほうは豊臣軍内での己の立場に苦しむので、ちょっと浮いていて空回りです。
まあ・・・このあたり、
担当A田氏曰く、「浮いていることが彼のポジション」ですね。
なんか、鬼っ子というか、苦労人?のような感じさえしてました(w
でも、物語を終始、引っ張ってくれたのは忠輝の存在です。
特に3巻、最終巻の前半で主役がずっと気絶しているという、
おそらく歴群の歴史にないであろう状況でした(w
最終的に忠輝は一度、秀頼を認めて兜を脱ぎかけますが、
秀頼の方が「盟友」関係に引っ張り上げました。
その過程で、「野風の笛」を真っ二つにしてしまいましたが(w
そして忠輝自身、追い求め続けた父・家康とみずから決別し、
秀頼とともにこの国を担って行く決意をします。
終章において忠輝は関東に大領を得ています。
それは一種、豊臣政権が直接的に介入しない土地でもあります。
そこで、忠輝がどんな君主になるのか・・・
史実の彼が政治的な足跡を残していない以上、作者が知る術もありません。
まあ・・・当面は徳川残党の処理で大変でしょうが・・・そこは幸村もいるので。
大久保長安がいなくなるので、すごく大変そうですが。
おそらく、秀頼より長命を誇る彼ですので、
伊達政宗から煽られつつ、関東経営に腐心して行くでしょう。
あるいはこの国に危機が訪れれば、その時は真っ先に「将軍」として立つでしょう。
秀頼は太刀を捨てましたが、何かの時に武器を取るのも忠輝の役割なのですから。
なんかやっぱ、損な役回りのような気がする。。。
あとは、五郎八姫と富める時も、貧しい時も共に(w