歴史作家 智本光隆「雪欠片―ユキノカケラ―」

歴史作家 智本光隆のブログです。

桃山乱戦奇譚 天下人の血―そのあとがき①―

2013-08-25 18:52:58 | 桃山乱戦奇譚
さて、今回はまだあとがきを書いていなかったわけですが(もう8月も末ですが)
この『桃山乱戦奇譚 天下人の血』はまず、
「まだ、これまでに描いたことのない時代」ということで話がありました。
もう1度「関ヶ原もの」というのもあったのですが、
その時に同時並行で関ヶ原作が2作くらいあったのかな?


『関ヶ原群雄伝』がその関ヶ原、『本能寺将星録』がそのまんま本能寺の変、
そして『豊臣蒼天録』は大坂の陣です。
大坂の陣とはいっても二条城会見からスタートなので、「関ヶ原後の政局」でもある訳で。
なので、1600~1610くらいが舞台も今回はなし・・・となり。
それでは・・・と考えたのが「秀次事件」です。
天下人・豊臣秀吉の晩年に暗い影を落とし、豊臣政権崩壊の序章ともなった粛清事件・・・これを書こうと!
このあたり、歴群的にもちょっと「空白地帯」っぽくもあります。


えっと・・・確か担当・A田氏はそのまんま、秀次を主人公に推した・・・んだった気がします。
ただ、僕のほうがちょっとイメージ沸きづらかったのと、過去に歴群で秀次主役作品あるということなので、、、
「なら、弟の三代目秀勝は?」となりました。
その前年のNHK大河ドラマにも出てましたので、知名度もけっこう上がっているかな・・・とか考えた(w
隻眼説を採用しようと最初に決めたので、なら伊達政宗も出そうと。
これはやや、ノリで決めたに近い(w
前作、政宗をちょい書き足りなかったのもありましたね。


さて、、、その『天下人の血』なんですが、過去の智本作品と明らかに違う点は、

「主人公が武闘派」「主人公の生まれが武家ではない」

まずこの二点。細川忠興とかかなり武闘派っぽく描いたつもりでしたけど、まあ無骨ではなかったか。
今回、秀勝に関してよ~く言われたのは、
「豊臣蒼天録の松平忠輝に似ている」です。
当初、忠輝よりも直情なぶっちゃけおバカな感じを想定していたのですが、何せ巻がなくてですねぇ。。。
結果的に似ていると言えば、まあ似ているのか?


そしてその出自、
これは、物語を形成して行くにつれて、
「尾張中村の百姓屋で生まれた男」という面が強調されました。
大谷吉勝、細川忠興、そして豊臣秀頼との最大の違いはここです。
前二者はそれぞれ秀吉、信長の「青年将校」的なキャラ付けがありました。忠興は特に。
秀頼様に関してはもう、本人が関白の跡取りですから。


その点、秀勝は関白・豊臣秀吉の甥というのは貴種ですが、その秀吉は元々が百姓出。
しかも、九州征伐後の「空白の二年」を放浪期間として、諸国をぶらぶらとさせました。
そんなわけで智本作品初、「槍一本で道を切り開く、ガチの武闘派」と相成りました。
本音ではこの放浪期間、ちょっと書き込みたいかも。。。


そしてもう一点、これは重要な点なのですが、

「現実には死亡している世界を、主人公が生きる」です。

豊臣秀勝は朝鮮出兵の最中、巨済島にて陣没しています。
本作では片目を失いながら、一命は取り留めました。
これは、「豊臣秀勝がもし、秀次事件まで存命していたら?」という物語です。
まあ・・・その後は話の都合で、秀次事件より前の年で完結していて。。。
でも、これも秀勝の生存が、事件を早めた!というこで・・・苦しいか(w



智本光隆

最新の画像もっと見る

コメントを投稿