青い花

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鬼平犯科帳 劇場版

2015-04-28 06:06:25 | 日記
監督は鬼平犯科帳のテレビシリーズの監督も務めている小野田嘉幹。1995年の松竹創業100周年記念作品。
監督が同じなせいか、テレビ版とあまり出来栄えの差が無くて、正直「わざわざ劇場版にしなくても良かったのでは?」と思った。決して面白くなかった訳ではないのだけど…。テレビ版の出来が良いので、期待しすぎたようです。

原作の何話かを組み合わせた脚本で、使用されたのは、『鬼平犯科帳二』の「蛇の目」、『鬼平犯科帳六』の「狐火」、『鬼平犯科帳八』の「流星」、『鬼平犯科帳二十二』の「迷路」あたりと思われる。ただし、話の流れを整えるために上記の短編以外からもエピソードを持ってきているようである。
白子の菊右衛門の名が出るのは、第一巻の「暗剣白梅香」。また、荒神のお豊は劇場版オリジナルの人物。ただし『鬼平犯科帳三』の「艶婦の毒」に登場するお豊がモデルであるようだ。

江戸の盗賊たちに鬼と恐れられる火付盗賊改方長官・長谷川平蔵。
その平蔵の前に狐火を名乗る盗賊が現れる。しかしそれは本物の狐火の勇五郎ではなく、異母弟の文吉であった。狐火の掟に反して、文吉は凄惨な急ぎ働きを繰り返した。そのため、勇五郎は文吉の殺害を図る。
密偵のおまさは、勇五郎と恋仲にあった。おまさは、そのことを平蔵に告白し、勇五郎の救出を願ったが、平蔵に一喝されてしまう。実は、平蔵には考えがあったのだ。
勇五郎とおまさは、文吉一味に追い詰められていた。それを救ったのが平蔵だった。平蔵は、盗賊稼業から足を洗うことを誓った勇五郎の右腕を落とすことで見逃した。そして、おまさを密偵から解き放った。二人は、共に江戸を去った。

時を前後して、白子の菊右衛門一味が江戸に乗り込んできた。菊右衛門は、荒神のお豊に接近した。刺客を送り込んで平蔵を消す計画である。しかし、平蔵を甘く見ていないお豊は、そう簡単に計画が成功するとは思っていなかった。そこで、お豊は菊右衛門との共闘を保留にし、平蔵の息子・辰蔵を誘惑することにした。しかし、親子喧嘩の末に辰蔵が失踪したことで失敗に終わる。
菊右衛門の次の手は、火付盗賊改方同心の妻女の殺害だった。平蔵は激怒する。だが、敵の正体が掴めない。そんな折、おまさが江戸に戻ってきた。勇五郎が流行り病で死んだのである。そして、おまさは再び密偵として働くことになる。おまさは重大な情報を持ってきた。なんと、お豊は若い頃に平蔵と恋仲にあった女だったのだ。裏が分かってきた平蔵は動き出す…。

冒頭で書いたように作品としてのスケールはテレビ版とあまり変わりがない。ただ、長くテレビ版に携わってきた監督なので、別々の短編のエピソードを上手く纏めていると思う。
何より配役が豪華なのだ。故人の名がいくつか見受けられるのが寂しい。もうこんな贅沢な組み合わせは叶わないだろう。

主役・長谷川平蔵の二代目中村吉右衛門をはじめ、妻・久栄が多岐川裕美。密偵のおまさを梶芽衣子。小房の粂八を蟹江敬三。大滝の五郎蔵を綿引勝彦。五鉄の三次郎を藤巻潤。相模の彦十を江戸家猫八。
そして、敵役として、荒神のお豊を岩下志麻。白子の菊右衛門を藤田まこと。沖源蔵を石橋蓮司。狐火の勇五郎を世良公則。吉五郎を本田博太郎。百蔵を平泉成。文吉を遠藤憲一。蛇の平十を峰岸徹。等々…。

個人的には本田博太郎氏を見ると時代劇だなぁと安心する。まだ若かった遠藤憲一氏が、冷酷無比な文吉を好演していた。お豊の前での傍若無人な振る舞いと、刑場への馬上での死んだ魚のような眼のギャップが印象的だった。
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