「庭の片隅の私(ボケの花)」
昔からの習慣で寝る時に何かしらの本を読みながらでないと眠れないタイプであった。
本を持って読んでいて、やがて眠くなっていつの間にかバッタリと眼鏡を掛けたまま
寝入ると言うことが多い。その所為かよく見る夢もとてもハッキリ見えるようで、
総天然色の様な気がする。
夢に色があるのは精神的に一寸怪しいと言う説もあるとか。しかしモノクロサイレント
よりはよっぽど楽しく良いものだ。
本を丁度読み切ってしまっても眠れぬ時は深夜放送を聞いている。するとこれは耳の問題が
ありかなり聞こえ難くなって居るので、ハッキリ意味が聞き取れない事が多い。
それでも無音、サイレントのあの耳の奥がジーンとするような静寂よりは良い。
或る晩、途切れ途切れに「今日は一番若い」とか何とか言っているのがやっと聞き取れた。
本の題名なのか、何か歌の文句なのか、何だろうと考えてしまってよけいに眠れなかった。
私の勝手な解釈だが、自分の人生の中で今が一番若いという事で、これからの人生の中では
今が一番若く明日は今日よりも年を取っているのだ。だから……、
という教訓的な言葉なのだろうか。慰め励ましの言葉であろうか。
成程、今日の自分は明日の自分、明後日の自分より、ましてや来年の自分等より若いのであって、
今日のこの若さはもう二度とない。だから今日というこの一番若い日を無駄にするな、真摯に生き
なさいという教えの言葉だろうかなぁ、それとも考え過ぎかなぁなんて考えていたらやっと眠りに
ついたようだった。今朝起きた私は一番若いわけだ。
でも昨日と変わらずあまり実感として感じられなかった。