p239
あの話ですが、ヴィーゼルのなんという本に載っていましたか。
『夜』だったかなあ。
それが、ないんですよ。
ない。…
p243
…そこで少年が「ぼくはけっしてしあわせになることはありませんから」とつぶやいたのは、…消し去ってしまったら、それは自分の中にあるなにかたいせつなものを覆い隠すことになってしまうという感覚。…しあわせになるという生き方が陥りがちな、閉じてゆく方向性、他者への関心の喪失、それがもたらす人間存在の陰影のなさを突いている。
p244
「…人は死ぬものだということに対する不思議なわきまえみたいなものを…ごまかせない人たち…」