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ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

アトランティスの記憶 <終末期 22 >

2013-04-02 09:12:07 | 『日常』

だいぶ佳境に入ってきました。ここからも書き足し部分は結構ありますので。そのあたりも見てくださいね。
一応、終末期、及び「アトランティスの記憶」の最終話は<終末期 26 >になる予定です。

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カズール達の耳にも、中央で26の存在の目撃例が多発しているという話は盛んに交わされるようになっていた。
「なんで、僕達は一生懸命脱出のためにはたらいているのに。僕らには姿みせてくれないんだよ。カズールばっかりずるいよ。」
「それは、俺がサボっていると言う事を言いたいのか?」
「そりゃあそうだろう、こんなふうに丘の上でフルーツかじっていれば。」

カズールとフルカは、農園の丘の上にすわって、黄色い色の柔らかい果実を味わっていた。
これは、今一つ甘みが足りない。
内心思ったが、自信を失くしてもらうといけないので口には出さず。

「ちゃんと働く者の前にしか姿を見せてくれないんだよ。」
「でも、一回くらい姿みた方が、モチベーション上がるってもんじゃない?」
「今度会ったら話しておくよ。」

そんな会話の後、実際の行動パターンの打ち合わせに入った。
すでに、空港跡地の人々は、順次地下空間に入っていって。それぞれの船に乗り込むようになってきていた。
決行の日まであと一週間ほどになったので、船の生活にも慣れてもらうために、いくつかのグループに分けて乗船を行っている。

その間、
人間とはこうも扱いにくいものか、
と現場では経験させてもらっているので。
カズールとしては農園でフルカと会話するのがひと時の安らぎになっているところはあった。

船には長期間の旅と、その先で使用する道具などを積み込むために、巨大なものになっていて。
1つの船に1000人ほどの人数が100日間は滞在できるようにすべてが用意されていた。食事量や水、そのあたりの循環施設。それに家畜や動物達の場所もあって。
1つの町がそのまま動き始めるような姿になっていた。
1つの船が1つの町、のようになっていて、辺境から地下通路を通ってきた人々も合流して。
地下空間は一気ににぎわいが出てきたが、
その分、問題も出てくる。

どの船がどこに行くのか、それをまだ決定していないのであった。
26の存在が導いてくれる。
と言う話を聞いてはいるが、実際にあっている人はほとんど居ないので。
それについてはカズール達も何とも言いようがなかった。
「あの人達は人間のペースで動いてないから、人の焦りが分からないんだ。」
とカズールが漏らした事もある。


脱出組の、一般の方がほぼ乗船し終わったのは決行日まであと2日と迫った頃だった。
いきなり多くの人が消えた事で、シェズ達もそれに対して調査を行うように命じた。
脱出組が地下の通路に入って行く姿を発見されていたので、シェズはその出口を押さえておけば問題ないだろう、と言う結論に達して、そこに軍を配備して様子をうかがう事にした。
この地下通路は、今後自分の政治を行う際に利用できる。
そんな事をシェズは考えていた。

前に見つかった塔の地下にある通路には、全長20キロくらいあるらせん状になっている部分も見つかって。
その最深部には、太い柱とその周囲に丸いクリスタルの巨大な球体がくっついた、そんな部屋も発見されていた。
ただ、これは粒子を動かすための施設とは関係なさそうなので、後日調査となっている。

脱出組は地下に隠れ、粒子の影響が及ばないようにしているだけだろう。
なので、粒子技術が正常に稼働し始めれば、飽きて地上へと出てくる人々も増えてくるはずだ。

実際、特殊部隊のメンバーが数人その中に紛れ居ていて。
地下へと共に行動しているはずである。
今は連絡を取る手段が無いのでどのようになっているのかが不明ではあるが。

粒子技術が成功したら、脱出組を扇動して暴動を起こさせ、
そしてカズール達をつるしあげにして逮捕する。

すべてがうまく行った後は、それですべてを納めるつもりであった。


「シェズのスパイが入っている可能性はあるな。」
そんな話題はすでにされていたが、通路の扉を開くには特殊なプレートが必要であるし、
実際に通路を歩いてきているわけではなくて、カズールやトエウセン、ファロウ等の一部の責任者のみが一瞬で移動する技を使っているので。
そのスパイが地上へと情報を持ち出す事はまず不可能なので。

「カズールが狙われないように、そのあたりでしっかりとしておけば大丈夫だろう」
という事にはなっていた。
それに、シェズは今はそれどころでは無いはずであるし。




・・・・・・・・・・・・・

アレスは数日前にみた26の存在らしき姿の事を誰にも話してはいなかった。
今自分が行うべき事は、粒子発生装置の本稼働と、そして国中に粒子を満たす事。

そのためにクリスタルを配置したり、放出口の確保をしたり。
その流れをシュミレーションして、偏りそうな粒子のパターンが出たら、それを拡散させるための特殊なフィルターを配置したり。

その確認だけで一日過ぎてしまう。

・・・・・・・・・・・・・・・









その日、地下空洞ではどよめきが起こっていた。
突然、何の前触れも無しに、
それぞれの船の舳先に、翼をもった存在達が降りたってきたのだ。
「私の名はシャーギル」
そう言った存在は、虹色の翼をもつ、肩まで流れる黒髪の姿をしていた。東洋的な生き生きとした美しさを備えている。
「私の名はスフェンソ」
その存在は白い翼を持ち、シルバーの髪をした、白い肌の存在。妖精のような美しさをもっていた。
「私の名はアリュー」
その存在は白い翼を持ち、はちみつ色の緩やかに巻いた髪の毛をもっており、それは少女のような美しさをもっていた。
「私の名はシェラシン」
その存在は漆黒の翼を持ち、その姿は精悍な長い長髪を1つにまとめた姿で現れてきた。すべてをに通すような目を持ち、それは神秘的な輝きをもっていた。
「私の名はエドレヌ」
その存在はクリスタルグリーンの翼をもっていて、髪の毛もみどり色であり。
その姿は幼い少年のような、そんなあどけなさをもっていた。
「私の名はスケンシーグ」
その存在は深い青い髪の毛を長くのばし、水色の翼をもっていた。
賢者のような深い知性を感じさせる目をしている。
「私の名はスレーソフ」
その存在は白い透き通るような翼と、肌を持ち、まっすぐで黄金のように輝く髪の毛はエルフの娘のように神秘的な容姿をしていた。
「私の名はヨレフォス」
その存在は黒くたくましい肉体をしていて、その背中にある翼もワシのような力強いものであった。茶色の短い髪に、精悍な顔。男性的な美しさを持っている存在であった。

この8の存在がそれぞれの船に降り立ち、
「私達が、責任を持ってこの船を導こう。」
と声をそろえた。

それを聞いて、そこの空間にいた人々は歓喜した。

すべてはその時に向けて、動き始めていた。

地下の空間では26の存在達が現れた事で、脱出組の士気は上がっていた。
そして、地上では。

農園に隔離されていた人々が夜の闇にまぎれて移動をする手はずになっていた。
政治犯収容所であるこの農園には400名ほどの人間がおり。このままシェズの政治が続く限り農場で一生を過ごす事になるので。
ほぼ全員が脱出計画には賛同していた。
中には、すでに年を重ねたため新たな土地へ移動する気の無い者も居て。
そんな一部の人々は最初からこの計画には参加してはいなかったが、食料の生産、貯槽等では積極的に手伝ってくれていた。

「若いもの達の未来には、食い物が一番重要だからな。」
と笑いながら。

フルカは外に出て、夜の星を眺めながらこれからの計画を思い浮かべていた。
最初は女性と年若い男性。
そして、経験の豊富な男性が続き。
最後に、すべての計画を見届けて、今回の責任者が最後に入ってくる。
それぞれに船に振り分けられていたので、その順番に移動するのだが。

この地に残る事を選択した、そんな、数十人の人々をお置いて、この場から脱出することに心は痛んだが。

準備していた通りに、すべてを動かし始めた。

最初に、女性と若い男性。それに、それぞれのグループをまとめ、船に誘導する人々が同行し、地下通路へと入って行った。そこはカズールが使っていた場所であり、その上の丘はフルカと良くフルーツを食べていたばしょであった。
この場所も、これで見おさめか。

月の無い、真っ暗な夜空には星が輝き、フルカは丘の入り口で人々を誘導する担当になっていた。
順調に、最初の人々は移動終了し、次のグループに入る。
「フルカも、先に行ったらどうだ?」
農場の責任者で、面倒見の良いアテレスが声をかけてきた。
アテレスは最後に確認してから入る事になっているので、丘の入り口ですべての動きを見ていたのだが。



「僕は最後の方で大丈夫だよ。まだ若いんだし。」
「だから、先に行くべきではないのか?残っているのは中年のおっさんばかりだぞ?話し相手居ないだろうに。」
と笑いながら言う。
カズールの姿が一瞬頭をよぎり、
「いいさ、中年とは会話しなれてるから。」
「そうか、フルカの恋人も中年だったな。」
とアテレスが言うと、顔を真っ赤にして、
「違う!、恋人じゃない!」
と否定するフルカ。その様子を見てアテレスはまた笑って、
「好きな人の役に立ちたいって気持ちは分かるが、自分の事も大切にしなきゃな。」
と言ってまた笑う。
どうも、この人には見抜かれているようで。こう言う時に、人生経験の差を思い知らされるのであった。

「アテレス議長!」そんな声が聞こえてきた。アテレスは、シェズの前に議長として働いていた事もある人物であり、未だにその名で呼ぶ人々も多かった。

「軍が、農園内に侵入してきています。どうやら、この計画を見抜かれていたようです!」
アテレスがこぶしを握り締める。
「そうか、諜報員が気付いたか。」
これだけの政治犯収容施設になると、それだけ様々な動きが発生してきそうなものなので。
それに対して必ず数人の諜報員が政府から送り込まれている。
それが誰であるのかを知っていて、そのメンバーには今回の事などは一切教えずにいたのだが。
やはり、その道のプロにはかなわないのか。
軍が来ている、と言う事で移動する人々の動きが早まった。

その時、向こうで火の手が上がった。家屋が燃えているのだった。そちらは軍が侵入してきている方向。爆発音が聞こえて、
そして、銃声が上がる。




軍が農園に侵入してきた時、この地に残る事を決めていた人々は別の動きを始めていた。
「さて、そろそろお客さんがおいでなすった。盛大に出迎えてあげねばの。」

そう、この地に残る事を決めていた人々、というのはもしもに事態になったとき。
自ら盾となり今回の行動を守るために居残っていたのであった。
表向きは、多くの人には「この地で生まれたので、この地で死にたい」というものであった。それは確かに嘘偽りはなかったのだが。
「最後の最後に、1つ若者たちのために働きましょう。」

とアテレスには伝えられていたのだった。

軍の行動を阻止するため、家屋に火を放ち進軍の速度を遅くしているのだった。
ギャロットを道路に並べてバリケードを作り、農作物を入れるコンテナを配置し、車両の動きを制限して。
自家製の火薬で作った手榴弾と、火炎瓶。
爆破によって進軍を妨げるように建物を破壊していく。

戦車や移動砲台、ギャロットなどはそれにより足を阻まれたが、歩兵はそのあいだを抜けて前進してくる。

「ほい、火炎瓶」
「ほいさ、あいつらの上に全部落としてしまえ。」

一番高い塔の上では、老人が5人、歩兵の足を阻むために大量の火炎瓶をばらまいていた。
「若いもんたちのためにも、いっちょ働かんとな。」
「昔取った杵柄じゃ、このコントロールを見てみよ。」
そう言いながら放つ火炎瓶は狙ったところに正確に落ちていき、歩兵やギャロットの行動を阻む。

飛んでくる銃弾は建物の外壁に貼られた鉄板でほぼ防がれている。
持ち込んだ火炎瓶と手榴弾をリズムよく投擲し、順調に進軍速度を遅くしていた。

「やれやれ、これで少しは時間稼げるかの。」
火をつけて手わたしする係りと、投げる係りが息を合わせてやっていくので、隙がない。
部隊もなかなか建物へと近づけないでもいた。

下のほうではほかのメンバーが樽や火をつけたわら束を引かせた牛を放つなどで、混乱を広げているせいで、更に進軍速度が遅くなる。

ところが、しばらくすると特殊部隊は的確にその弱点をついてきた。
素人とプロの差である。
一気に地上の人々を掃討し、バリケードも破壊されていく。そしてついに砲台が塔へと照準を定めた。
「しまった、大砲がこっちむいておるわい。」
「そりゃあ困ったのう。」
「とりあえすありったけのばらまいとれや!」

そんな会話がされたあと、砲台が火を噴いた。


遠くで炎に包まれながら塔が崩れていく様子のあとに、フルカのところにも砲撃音が聞こえてきた。

「皆、すまない。」
アテレスはその方向を見てつぶやき、目を閉じた。

その表情を見て、フルカは悟った。何が行われているかを。
先日まで、共に収穫や食料生産の手伝いをしていた人々が、あの炎の向こうで自分たちを逃がすために動いている。

体が震えた。
自分達は、素直に脱出して、そして気楽にすべて進むと思っていたのに。
人の死とは向き合わなくても、すべて上手く行くと思っていたのに。

アテレスはそのフルカの様子を見て
「生き残るのが我々の最終目的だ。」
と言った。
フルカは頷いた。

人員の脱出もほぼ終わりに近づいた時、機械音と大勢の足音も聞こえてくる。
どうやら、軍がここまで来たようだ。そして、足元に銃弾が撃ち込まれ。
丘の周囲は包囲された。

「老人たちを犠牲にして、こそこそと逃げようとしていたようだが、そうはいかん。お前達全員を身柄を確保する。動いたらその場で射殺する。」

銃口がすべての人々に向けられていた。確かに一歩でも動けない。
アテレスがその中で司令官らしき人物に話しかけはじめた。

「今回の首謀者は私だ。私を捉えてくれれば、あとは許してもらえないだろうか。」
司令官は言う
「もちろん、そのつもりだ。全員を地下から引っ張り出して、その上でお前を処刑する。他のやつらは労働力として、もっと働いてもらわないといけないからな。」

「では私を連れていけ。」
そう言ってアテレスは手を差し出した。すぐに周囲に兵士が駈けより、手錠をかける。
他のメンバーは丘の方へと押しやられ、アテレスは司令官のところへと連れて行かれた。
その時、アテレスが叫んだ。
「すぐに走れ!」

と同時にアテレスから白煙が立ち上る。

周囲にいた数人からも白煙が立ち上る。
「爆発物か!」

一瞬、兵士たちの動きが止まった。
そのすきを逃さず、フルカは無我夢中でその場を走っていた。
銃声もいくつか聞こえたが、そんな事を気にせず、走った。
カズールにもらったシルバーのキーを握りしめて。

気がつくと、地下通路の中にいた。
足が焼けつくように痛いが、どうやら銃弾の1つがかすめていたようだ。
しかし、歩くのに支障はない。
自分の体を確認した後、周囲を見渡すと、人数の半分くらいは逃げ込めているようだった。

地下通路の入り口には、アテレスと先ほど白煙を出していた数人の姿が見える。
白煙はただの脅しであったようで、爆発物では無かったようだが。

「アテレス議長、はやく!」
すると、アテレスは振り返り言った。
「先に行け! ここで食い止め・・・・。」

言葉の最後に銃声がかぶさる。
アテレス達の肉体に銃弾が撃ち込まれる音。

「アテレス議長!!」

そして、地下通路の扉が閉まった。
青白い光が通路を照らす。


「生き残るのが最終目的だって言っておいて・・・。それは・・無いだろう。」

フルカはしばらくその場で泣いた。
すべての、犠牲になった人々のために。






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