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ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

アトランティスの記憶<後期アトランティス 4 >

2013-02-18 08:32:06 | 『日常』

後期、と言いながらメインは創世記の続きなんですけどね(笑)楽しんで読んでください。


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・月影のスローダンス 〈 後期アトランティス 〉


舞台の照明が薄暗くなり。

踊りが始まる。
新人の踊りはまだぎこちないけど、ちゃんと動きの中に情報を表現出来ていて。
さすが、選ばれただけのことはあるのね。

そして、私の出番が来る。
半分透明の、トンボの翅のような色のながいスカーフと。
白い絹を巻きつけて体のラインを強調し、
そして私の金色の髪には、細かく宝石のちりばめられた。美しく輝くティアラ。

音楽と共に舞台に飛び出し、そして踊りだす。

手の先で音楽を触り。体には観客の熱気をまとわりつかせ。
足のステップには踊り子達の鼓動を感じ。

そして、粒子から得られる情報が体に流れ込み、
それが私の体を動かし始める。

主役の女性と絡み合い。舞台の上では踊り子たちの息遣いと足音が響き。

それを見ているお客さんが、恍惚となる雰囲気も感じてくると。
舞台は最高潮。

もう私の意識ではなくて。
観客と宇宙と。そういうものの意識で踊らされている感じ。

恍惚感。

その時、私の手を取る男性の姿が見えてきた。
前に端末を使っていた時に見えた男性だ・

私はその男性に手を引かれて、1つの建物に入ろうとしているところだった。
それは今の建物のように石で作られているわけではなく、つるっとした不思議な材質で作られていた。鉱物みたいな、硬い感じ?

大雨と嵐。
そんな中、私をわざわざ助けに来てくれた男性。
この人はだれ?

建物に入ると、私をみて安心させるためか微笑んでくれる。
このほほ笑み、どこかで見たような気が?


ハッと意識が戻ると、ここは舞台の上。
次第に踊りの流れも終盤に来ていて、私の出番がそろそろ終わるころ。

そして、舞台は無事に終了した。

舞台は終わって、皆にねぎらいの言葉をもらいながら楽屋に戻ってくると、テーブルの上には良く冷えたスラルのジュースが置いてあった。
こういう気の利いた事をするのはヨルハンだわ。

ちょっと嬉しくなって、倒れこむように舞台の服を脱ぎ捨ててソファーによりかかって。
半分裸でジュースを飲む。

この瞬間、解放された感があって、幸せ。

踊りを踊るときは、いろいろなイメージが見える事が多い。
今回のイメージは何かしら?
私には、今日の衣装みたいな透明の羽が背中についていたようにおもえたけど。

まあ、いいわ。
いつも見えるイメージはあってもそれは気にしないようにしているから。
毎回見ているものは違っていて。
自分が空を飛んでいる様子だったり。
いろいろな想像上の生き物と共に駈けまわるような様子もあったり。

楽しい、こころ踊る時もあれば悲しい時もあって。
それが観客の人達にも伝わって。


なんて、考えていると扉をたたく音が聞こえてきた。
扉には圧力で音がなる仕組みがあるから、叩き方でだいたい誰が来たか分かったりする。

この音はヨルハンね。

扉を開けてあげると、私の姿を見て真っ赤になっちゃった。
そりゃあそうかも。私はほとんど裸みたいな恰好なんだから。でも、

「こんなんで真っ赤になってたら、監督なんてできないわよ。」

そう言ってからかいながら、私もわざと谷間とか強調してみたりして。
「こ、今回の観客の感じたイメージを渡しにきました。家に戻ってからでも端末で確認してください。」
そう言ってチップを手渡して赤い顔のまま去ろうとしたので、呼びとめて。
「帰りのギャロットはいつ出るの?」
と言うと、振り返って不思議そうに聞いてくる。
「いつもの時間です。今日は食事会に行かないのですか?」

「舞台は明後日もあるから。そのあとで打ち上げの時にみんなと食べるわ。今日は疲れたし。」

「了解しました。それでは後で。」

「あ、それと、ジュースありがとね。」
と言って手を振ると、ぺこりと頭を下げて向こうに走って行った。

なんとなくからかうと楽しいのよねえ。
真面目で一生懸命。
真が優しいから、監督なんかできるか心配だけど。
でも私も応援したくなっちゃうなぁ。


そして、帰りのギャロットの中。
他にも「今日は帰る。」という踊り子も結構居て。
どっちかというと、ベテラン組は「もう帰る」派。だって、踊りの時間が長いんだから疲れるのは当然。
私も最初の頃はお食事会に行っていたけど、それは人間関係を作るためとか、監督とかの繋がりを得るためとか、そういう理由もあるから。
ベテランになると、あえてそういう場を新人の子に開けてあげるのも必要なのよ。

踊り子達と分かれて。
最後にはヨルハンと私の二人になる。

「毎回、送り迎えありがとね。お食事会にも出たいでしょう?」
私が聞くと、ヨルハンは
「僕はまだ勉強中ですから。こうやってベテランの踊り子さん達と一緒に過ごす時間も重要です。」
「勉強家ねぇ。」
「好きだからやっているだけで。勉強ってわけじゃないですよ。」
言われてみれば、私も踊りが好きだから体のラインとか食事にも気を使うし。
踊りについての勉強もかかさないけど。好きだからやっているだけなのよね。

視線をちょっと上にずらすと、ヨルハンの上には、三日月が美しく輝いていた。

「ちょっとヨルハン、そこで止めて。」

私が急にいったものだから、慌てて道を変えさせてしまったけど。
途中に小さな公園があるので、そこにギャロットを止めてもらう。
そこからは港のほうが見下ろせて、町中からも少し離れているので静かな雰囲気。

ゆっくりと、私はギャロットから降りて、御者代のヨルハンの方へと歩いていく。

「どうしたんですか?」
とヨルハンが驚いたように聞く。普通、止めたりしないから。
私は驚くヨルハンに手を差し伸べて。
「踊ろう?」

ヨルハンはどう答えたものかと迷っているのがわかる。

その手を強引につかんで、御者台から引きずり下ろす。

「さあ、私の手をちゃんと握って。」

そして、月の光の下で、一緒に踊りだす。

街灯がならんでいるなかで、軽やかなステップで舞う。
ヨルハンも、最初戸惑っていた割には踊りは意外と上手で。一緒にステップを踏んでも混乱することはなかった。

この感じ、いいなあ。

月の光。街灯の光。
公園にある川の音、遠くに聞こえる町の音。
そして、石畳を踏む足音。

ヨルハンとつないだ手も、なぜか妙な安心感があって。

この感覚、どこかで感じた事がある。
ヨルハンを見ると、私と目が合って。そして楽しそうに笑う。

あ、この目は。

と思った瞬間。あのイメージが浮かんできた。

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・創世記<スーベロス>


チェリスと一緒に、リングの中に入っていく。
久しぶりに見る知った顔に、ホッと安堵していると。
「スーべロス、すまないね。私達の見込み違いで危険な目に合わせてしまって。
しばらくはここでゆっくりしていてくれ。」
と声をかけられた。優しいその笑顔を見て、私も笑う。
すると、チェリスはちょっと驚いたような顔をしたように見えた。

私は部屋の長椅子に横になって、そのまま久しぶりにゆっくりと寝る事ができた。

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・初期アトランティス


粒子を用いた社会的な仕組みを最近勉強しているが。
なかなか面倒臭い。
粒子にも「情報粒子」以上に遠距離とやり取りのできる粒子の存在も聞いたりしたし。
他の大陸。海を越えた向こう側にも同じような「町」がある地域があって。
そこにも自分達と同じような人々と、他の星からきたような人々が暮らし居ているところがあるという話も聞いた。
実際にそこに行くのはまだ先だろうけど。情報粒子で見たところ、背の高い人や青っぽい人とか、いろいろな人がいるらしい。
僕らの世界はこの街だけじゃないんだなあ。
と思ったんだけど。他に、僕らの意識の世界、魂の世界も見ていくとさらに広がっていく世界。

今、ぼくらはそっちの世界も楽しんでいる最中だ。

勉強も終わって、ショットにて。

「で、君は私に捕まって。また戻ってきたシーンを見たわけね。」
そう言ってジュースを飲むヤーフル。
僕が、創世記の時にヤーフルに放り出されて難儀して。という話をした事をまだ根に持っているらしい。
ちゃんと助けているじゃない。ってことを言いたいんだろうけど。
「何のためにそうなったのかな?」
僕が何気に言うと、
「それはこれから私の記憶を見るしかないんじゃない?」
と言う。

なら、最初からそんな事言わずに見せればいいのに。と思ったけど口には出さず。

ヤーフルの情報にアクセスした。

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・創世記<ヤーフルの記憶>

トリョウと話あった結果、スーべロスを抽出した時のような構成で、新たな存在を作りだす事にした。
スーべロスのコピーのような存在を抽出しようと考えたのだ。
意識は「前宇宙の記憶」と繋がり、今の地球意識とも繋がる事ができて。
そして、「今の宇宙意識」とも繋がる事ができる存在。

しばらくスーべロスは自由に私達の区を動き回っていた。
トリョウもそれに関しては特に何も言わない。どちらかというと、この区で新たな知識を身につけてほしいような事は言っていた。

地上にある、あらゆる存在の中心軸になる存在を抽出する。
これが今の私達の目標となり、方向性となった。

変化を起こす軸となるように。

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<初期アトランティス>

「そうやって、生まれてきたのがあの存在たち。」
とヤーフルは言って、ジュースを一口飲んで。
「あの存在達が動き始めた事で、創世記の混乱は収束に向かって。そして今のように安定した世界になっているんだよ。」

しかし、創世記には多彩な存在がもっとたくさん居て、それらの混乱を収束させるというのは並大抵の事ではないような気もする。
宇宙にあるいろいろな意識が影響しあい、惑星の意識も影響して。
それらをまとめるなんて難しそうだけど。
と僕が言うと。

「「軸」になればいいのよ。周りが変化する様子をある方向に導いて行くね。
すると、コマとかでも軸の周りには一定の回転が生まれるでしょ?その方向性が出てきたら、それを加速させてあげればいい。
それを未だに私達があとを引き継いで行っているという感じ?」

「え、じゃあまだその混乱の収束は終わってないの?」
「まだ実行中。それが収束したら、たぶんこの軸は必要無くなるから。」
「それはどういう意味?」
すると、ヤーフルはちょっと笑って。

「でも、それはもっと先の話みたいだから気にしないで。だって、まだ君の踊り子の時代はまだ粒子とかもあるみたいだし。ということはこの軸が存在しているって事だから。」

「じゃあ、その先も見る必要があるね。」
と僕が言うと、ヤーフルは、
「ふふ、でも、今は君の踊り子時代の話をもっと聞きたいなぁ。
分裂のあとに来た融合の時代。なにかのんびりしていていいなあ。って思うから。」
「そう、じゃあこれから美術館に行って。続きを見ようか。」

と言うと、ヤーフルは頷いて、
「今度は浮気ナシかな?」
と聞いてきた。

それは僕にも分からない。







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