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ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

アトランティスの記憶 <アトランティス中期 2>

2013-01-31 08:21:22 | 『日常』

ここから、長の方面でのやりとりも入ってきますので。
ちょっと場面がいきなり変わりますが。長のところは「・・・・・・・・・・・・・長・・・・・・・・・・・」切り替わると「・・・・・・・・ヤッシュ・・・・・・・・」という具合にあいだに入りますので。
それでご勘弁を

<>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>



・・・・・・・・・長・・・・・・・・・・・・

ヤッシュが、帰ったあと、長はひとり奥の部屋へと入る。
そこは薄暗く、奥にはリングのような丸いテーブルのようなものがあり。その中央に人が座れるような椅子が存在している。長が近づくとテーブルの一部が開き、中央の椅子へと腰をかけた。その椅子には力粒子が働いていて、長の体型に合わせてやさしく包み込む。

同時に、テーブルの周りに青いスクリーンのようなものが立ち上がり、そこに様々な数値と映像が映し出されていく。

そこにある映像には泥に埋まった建物や、高潮の害から逃げる人々、
それに住むところを無くしてさまよう町の住人の姿などが映し出されていた。
しかし、これは今この町の様子ではなく。ほかの「町」の様子であった。
その意味や内容、場所などを情報粒子から受け取り、その被害の様子などをほかの街とリンクさせる。
こちらの被害状況も役人からの提出資料情報を載せて発信する。
たいていの町で、半分以上の住人がなんらかの被害を受けいてるようだった。

その被害額も大きく。中央からの予算でまかないきれるかどうか。という提案が多くされていた。
町によってはその予算が全て高潮の後始末に回されてしまって。本年度の町の維持が危うい状況になっているところもあった。

長はため息を付く。

自分の治める町だけではなくて。この被害は大陸全土にでている。しかもそれは改善することはなくひどくなるばかり。

情報のやりとりを終え、長は帽子を外した。
長い銀色の髪が揺れて流れる。

「お疲れのようですね。」
役人の一人がいつの間にかこの部屋に入ってきていた。背後から声をかけられたが、驚く様子もなく長は

「このような状況を打開する手法が有りながら、私達にはなにもできない。
これはストレスの貯まるものですね。」

と役人を見るわけでもなくそう言った。
「新しい時代の、融合の歴史を作るには、こうするしかないのです。
我々の仕事は見守ること。そしてバランスを維持すること。それをお忘れなく。」

「それは心得てます。でも、それでも私の心は、そうは簡単に割り切れないところもあるのです。」

「あなたはお優しいから。」

そう言うと長はふっと笑って
「そうではありません。卑怯なだけですよ。」

と言って立ち上がり、部屋をあとにした。
そこに残った役人も体を翻して部屋をあとにする。全身を覆うこげ茶色のコートを着ていたが、その服がなびく瞬間、襟元からは美しい金色の髪の毛が覗いていた。


・・・・・ヤッシュ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


扉をたたく音で目が覚めた。
家の扉には圧力センサーが付いているので、それを変換した音が家中に響く。
「朝っぱらから、誰だ」

資料をまとめるのに朝までかかったので、もう少し寝たいところであったのだが。
モニターを付けると、外の人物の顔が映し出された。
俺の秘書をしているシャレだ。茶色の長い髪を後ろに縛った、まだ若い女性。
半周期前から秘書として来てもらっているのだが。
今日は議会とかも無いから、用事ないのになぁ。

そんな事を考えたが、相手には用事があるのだろう。
「なんだい?朝っぱらから。」

俺がモニター越しに聞く。こちらの姿は無しの音声のみにしている。

「なんですか、もうお昼近くですよ。議場に来ないから家までお迎えに来たんじゃないですか。」

「え?なんで議場に行かないといけない。」

「あなたの仕事場は議場です。」

「まだ議会は先の話だろう。」

「それまでに資料のまとめとか、打ち合わせとかあるでしょう?それを一緒に行おうと思って待っていたんですよ。」

「別に一緒にする必要ないんじゃないか・・・。」

「なんか言いました?」

「いや、別に。 ちょっと待っててくれ。俺は今起きたところなんだから着換えくらいさせてくれ。」

「待ってますからお気になさらず。」

この新しい秘書、シャレは仕事熱心なので困ったものだ。
前も夜中に「質問があって」とか言ってきた時もあって。
家に上げるわけにはいかないので(家の中が片付いてないとか、変な想像されると困るとか、いろいろ理由はある。)、また議場の部屋に戻ってやり取りした事もある。
何にしろ、家に直接きてもらうのは困るものだ。

今日は秘書くらいにしか会わないので、髭も適当でいいだろう。
服を着たあとは自分の今の姿を立体に表示できるモニターの前に行く。
入り口脇にあって、スイッチを押すと自分の1/3くらいの大きさで自分の立体映像の姿がそこに現れてくるのだ。
それで髪型や服装をチェックして。まあ、よかろう。
という感じだったのでそれを消して家の窓にある覆いを全て開けるよう家のメイドネットに言葉で指示を与えて。
俺の居ないあいだに空気の入れ替えと寝床の布団乾燥を支持して、入口へとむかう。

扉をあけると、家の外壁に寄り掛かって、海を眺めているシャレの姿があった。
青い空と、白い外壁の家が立ち並ぶ様子は夏の装いで。
その中に、風に髪を揺らしているシャレが立っていると、一枚の絵のようにも見える。





なかなか、良い感じの風景だな。
と一瞬見とれていると、シャレがガッと振り向いてきて、
「なんですか、その髭は。議長なのにだらしないですよ。」

「今日は議会無いから良いだろう。」

「まったく、仕事以外は本当にだらしないんですね。ちゃんとご飯も食べているんですか?」

「さあね、仕事の合間に何か食っているような気はするが。」

と言うと、シャレはじっと俺を上目遣いに見て。

「今度ご飯も作りにきましょうか?」

と言ってきた。

「いいよ、ご飯を作って食べる時間がもったいない。」

そう言うと、シャレは呆れたような顔をして。

「仕事以外の事は頭にないんですかね。」

と言って、ぷいっとギャロットの方へと歩いて行った。

ギャロットは、運転手が一人いて、それは仕事で決まっている。そいつらは専用の訓練を受けているので、俺達はギャロットを運転することはできない。
ギャロットには運転席と動力の収められた部分と、その後ろに俺たちの乗る席があって、
運転手は後ろから見ると機械の影になって見えないが、モニターでつながっているので互の存在は確認できる。
運転手はギャロットの一番前に紺色のコートのような服を着て、頭に緑色のバンダナをしてガラス張りの席に座っている。子供たちにとってはあこがれの仕事の一つみたいで。
運転手もそれを誇らしく思っているところもあるようだ。

今俺の家の前に来ているのは議員専用のギャロット
やや作りがごついものの、ほかの一般的に走っているものに比べて特に代わり映えはしない。
ただし、ほかのギャロットと違うのは後部座席には防音粒子が満ちているのと、モニター機能を後部座席からカットする機能もついている。
が、このモニターを切るのは俺はやったことはない。

俺たちは後ろの防音粒子で囲まれたシートに座るが、この粒子というやつが俺にはどうにも苦手で。
目に見えないのであるのかどうかも分からない。
最初などは、中で一人に叫んでもらって、本当に外に聞こえていないのか試してから乗ったものだ。

防音粒子は椅子についているスイッチで操作する。
俺たちは席に座ると、すぐにスイッチを操作して防音粒子を作動させた。
これから仕事の話になるのだ。

昨日まとめた資料と、長との対談についてシャレと意見を交換する。
とりあえず、秘書にも理解出来ないような内容であったら、議会で人に伝わるわけがないので。
まず、長との対話については

「長は長の意見ですから。大切なのは議長のあなたの意見ではないですか?」

ごもっとも。
シャレは見た目はちょっと線の細い女性なのだが、意見をはっきり言ってくれるので助かる時もある。
へこむ時の方が大きいが。

座席脇にあるモニターに俺の持ってきたチップを差し込んで、二人でそれを確認しながら話を進めていくのだが。
資料に関しては、数値のあたりをもう一度見直す事で話を進めて、大まかな流れはだいたい理解してもらえたようだ。変更点を書き加えてから、モニターからチップを引き抜いて、自分のボードに情報を移していく。
それをジャレのボードにぶつけて情報をシフトさせた。

「しかし、これほどの計画はこれまでの記録にはないですね。」

シャレはそう言って、今度は手元にあるペーパーをぱらぱらとめくる。

俺たちの資料のやり取りは、チップに記録させたものをボードと呼ばれる板のような機械に読み込ませて、それを手で触りながら操作していくイメージになる。
立体的に数値やグラフが周囲を飛び交い、それを手で触れることで処理していく。
その映像を「ペーパー」と呼んでいる。
ボードを並べると、ペーパーのやり取りもできるので、その場で資料を作り上げる事もできるし、ぶつけたり重ねたりして情報をやりとりもできる。
神殿ではバンダナを使う事でチップやボードも使わなくていいのだが、あれはあれで慣れないとやりにくい。
俺としては、ペーパーのあるほうが感覚として分かりやすいが。





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