さて、これから最後の「終末期」に入る前に、ストーリーをまとめる総集編的な意味合いの話がちょっと入ります。
粒子とは? ヒトヲメンバーとは?
なぜアトランティスが生まれたのか?
そういう話になりますので、これまでの内容を思い浮かべながら読んでいただけましたら。
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<アトランティス初期 ヤベーへの章 >
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初期アトランティス
ギャロットは次第に塔へと近づいて行く。
今日は塔にある施設で、粒子技術に関する勉強会。
以前施設見学で来た時と違って、もう僕らも家では上の方になってきたので。
いろいろと社会的なものを勉強させられるようになってきた。
前は実践的なもので、これから理屈って感じかな。
次の周期(来年みたいな感覚)には1つ上の家に移る事になるから。
そうなると、もっといろいろ勉強しないといけないんだろうなぁ。
社会の構造とか他の大陸の事とか。
僕らの今は、粒子についての扱い方やどうやって街を循環しているかとか。そういう話が多くて。その根本的な発生についてはまだ話を聞いていない。
今日はやっと、それに関する講義があるので、ちょっと楽しみ。
スーべロスの時代、それから今に至るまでに粒子と言うのは存在していて。
そもそも、どこからこの粒子というものが現れてきたのかが分からない。
今日はそのあたりを、ヒトヲメンバーが来て説明してくれるはずだから、昨日ヤーフルと話していた事を聞いてみようと思っていた。
ギャロットの隣の席にはヤーフルが乗っているが。僕がさっきから昨日の情報をせっせとまとめているのに、のんきに曲なんか聞いてくつろいでいるし。
僕が情報粒子の塊を送り込んでその邪魔をすると、ムッとして僕を睨む。
「なんだい。無粋な情報で私の楽しみを邪魔して。」
「ちょっとは確認しなくていいのかい?僕ばっかりまとめているけど。」
「いいよ、君がまとめたのなら問題ないだろうから。」
と言って、また音楽に集中する。
やれやれ、信用されているのか、ただ面倒くさいのか。
ギャロットは次第に塔へと登って行く。
昔は、この中には情報しか存在せず、中身は分からない感じだったけど。
今は粒子を循環させる中心的な施設として動いている。
でも、この塔の中枢には施設見学でもまだ入った事がないから、まだそういう場所が存在するのかもしれない。
創世記の記憶でみたモノと比べても、その巨大さは変わらない。
この巨大なものが、始まりの時に星星の海からやって来たなんて。
なぜ、これがこの星にやってくる必要があったのだろう?
でも、もし来なかったら今の僕らはいないんだし。
なんて事を考えていると、ギャロットは塔の1/3くらいのところで停止した。
ここから目的の場所に移動する。
今回はそこから小さなギャグ(一人乗りギャロット。セグウェイ?)にのってみんなでぞろぞろ移動する。
途中見えてくる風景は、粒子を作り運用するモノらしき機械群。
それは巨大であり。この動きが大陸すべての粒子を操っている。
まさに、大陸の心臓部だ。
こんなに普通に動いているのに。
なんでこの後には粒子技術が失われていくんだろう。
今の状態が普通の僕達にとっては、これから来る世界のほうが信じられない感じはするけど。
そして、講堂に入る。
それぞれギャグから下りて、席に着く。
そこは、中央に球体のスクリーンがあって、それはどの角度から見ても、見ている人の正面に画像が来るようになっているもの。
僕らの席はその周りに丸く作ってあって、それぞれの席にゴーグルも置いてある。
ここのゴーグルは透明度調整式のもので、自分の目の前と、中央のスクリーンも意識を変える事で見る事が出来るようになっていた。
家庭用のモノよりも薄く軽いので、普通にかけていても気にならない。
こういうのあれば、調べ物するのに楽なのに。家にも欲しいと思う。
全員、ゴーグルをつけて、バンダナを調整。
部屋の中は30人も座ると一杯になるくらい。
だいたい1つのメンバーくらいしか入れないようになっている。
あれ?そういえば。僕らはおなじくらいの成長で集められたメンバーだと言われていたけど。僕らの上、下の家族(同じ施設に入っているメンバーの事)をみても必ずこの部屋に入れるくらいの人数でおさまっている気がする。
なんでだろう?
そう思って横のヤーフルを見ると、すでにゴーグルに何か拾ってきた情報を映して遊んでいる。
まったく。
「何見てんの?」
僕が聞くと、ふいっと僕の方にも情報を送ってくれた。
それは、この部屋の見取り図のようなもの。
椅子の配置、スクリーンの位置。そして、入り口出口の情報がそこに表現されている。
部屋にはそれぞれに部屋の情報が置かれているので、それを見てから非常口などをチェックしたりもできる。
もっとも、ヤーフルは単にどこから講師が入ってくるのかを知りたかっただけみたいだけど。
この部屋、僕らの入ってくる通路は外部からの直通で、中の人が入ってこれるかんじではなかったし。
といって講師用の入り口が別の壁にあるようにも見えないし。
確かに、ちょっと気になる事は気になる。
それで、ついついヤーフルと探していると、カッシュとか他のメンバーも入り乱れての議論となってしまった。
「ここからくるんじゃないか?」 「いや、そとから まわってくるんだ。」
「スクリーンに映し出されるだけで、人はこないんじゃないか?」
とかいつの間にか盛り上がっている。
それぞれにゴーグルに映し出したり、情報粒子で皆に送ったり。それを受け取ってまた交換したり。
一瞬でそれぞれの考え方が交換され、その都度やり取りが発生し。
街全体の見取り図まで引き出してきたやつもいたし。
その結果、1つの場所得を皆が示した。
「たぶん、ここから来るんじゃないか?」
と言う事で。
どうやら、この講堂の大きさと配置が塔とリングの配置の数値に近いという事が判明し(誰がこんな情報見つけてきたんだか)。
ならば、この講堂の位置が有る場所に何かないか。
と言う事になって、調べてみるとそこ何かの開口部が存在していた。
部屋の見取り図では、どこに繋がっているとも何も書いていないけど。
でも、ここは大人一人も通れないくらいの狭い感じに見える。
掌くらいの大きさしか空いてない通路なので、空気用の穴にもみえるけど。
でも、すべての可能性とすべての流れを情報粒子から読みとって、
ここだろう、という結論に達した。
この通路の周囲は移動可能なブロックで作られているのを見つけたメンバーがいて。
そこに力粒子を働きかけたら動く事もみつけていたから。
すると、その開口部から音がし始めた。ゴリゴリと言うブロックの動く音。
目の前で、開口部がみるみる広がって行く。
力粒子の反応が高くなり始める。
ちょうど、大人一人分くらいを移動させるのにいい量の粒子反応。
そして、現れてきたのは銀色の光に包まれた人物。
それは粒子を周りにまといつつも、シルバーコートでそれを防いでいるので、粒子が摩擦を起こして微妙に光が発生している状態。
中央の丸いスクリーンの下に現れたのは、ヤベーへだった。
「ご名答。今度のメンバーは結果が早くて助かったよ。いつまでも気がつかないメンバーの時は、私は下で待ってないといけないのだから。」
と言って笑いを誘っている。
すでに、最初から僕らは試されていたみたいだった。
情報粒子を使うやり方を、実践的に行わせてみたのかもしれない。これからの講義の時は、僕らもどんどん参加して行く感じになるから。
「じゃあ、もしも誰も気付かなかったら、本当に出てこないのかな?」
とヤーフルが小声で僕に聞く。そんなの知らないよ。
「さて、すでに粒子の使い方に関しては君たちは問題ないと思われるので。これから粒子についての話をする。準備はいいかい?」
と僕の方を見て言うので、ヤーフルの声は聞こえていたのかもしれない。
「なるべく、思考はオープンで行きたいと思う。だからバンダナの調整を、この情報が見えるくらいに調整してくれるかな。」
と言って、スクリーンに大きな木のイメージが映し出された。
僕らはその木にアクセスする。
すると、情報が木の葉のようにそこに書きこまれていくのが分かる。
メンバーそれぞれに木の枝が与えられ、それが太い幹に繋がって。
その幹にはヤベーへの情報が存在していて。
ここに居るメンバーすべての意識が、1つの木を形作っていた。
一人ひとりの枝には特徴があって、ゴーグルで見ると視覚化されていて面白い。
四角い葉をつけていたり、紅葉していたり。
花盛りの枝もあれば木の実がなっているところもある。
僕は、普通に丸い葉っぱと、それに小さな白い花が咲いている感じ。
ヤーフルを見ると、南国のカラフルな花が咲き乱れていて。
そこだけ場違いな印象を持ってしまうくらい。
まあ、そういう意識状態ってことなのか。
普通、リンクする場合は同じような波長に合わせようとするので、見た目もそろほど差は無い感じになるんだけど。
そういうセオリーも無視するところがヤーフルらしいといえばそうかな。
その木の様子を見て、ヤベーへも少し笑って。
「なるほど、良い木をしている。良いメンバーだな」
とつぶやいていた。
リンクの姿でそう言う事が分かるのだろうか?
そして、ヤベーへが情報を流し始めた。
幹から光の情報が登ってきて、それぞれの枝に入りこむイメージが見える。
そして、その光の情報がバンダナににより、情報粒子を活性化させ、
僕らの頭の中にそれが入ってくる。
それは、粒子の発生、その理論だった。
しばらく、木のイメージで情報をリンクする。
今の粒子の状況、そして取扱いかた。
ヤベーへ達の仕事。粒子の管理、運用。
それについての質問や回答。
前に施設見学で見た内容のおさらいのように思える。
木の葉に情報が書きこまれ、すべての枝が充実してきた。
皆の知識レベルが一定に安定する。
枝には花が咲き乱れ。木が美しく輝きだす。
この状態になった時、全員の情報リンク能力が安定し、そして最高のスペックを導きだす。
そこで、急に木のイメージが消えた。
相互リンク状態から、一方通行の配信状態に切り替わったのだ。
なんだ、せっかくこれからってところなのに。
相互の情報リンクか最高の状態になると、互いの意思疎通がとてもスムーズになるので、一体感を感じる事が出来て心地よいのだけど。
今回はそういうやり方ではないみたいだ。
これまでがウォーミングアップで、これからが本番になるのかな?
ヤベーへが配信状態に切り替えた事を声で伝え、そして中央にある椅子に座った。
周りには鍵盤がずらりと並んで出てきた。巨大なオルガンのようなそれは、丸くヤベーへを包み込み、幾重にも重なり。
ヤベーへの周りに存在している情報粒子を形にするとこんなかんじになるのではないか、と思えるくらい有機的に存在している。
それを操る事で、どうやら僕らに情報を伝えてくるような感じなのだけど。
やはり、ここでもヤベーへは粒子をあまり使わない気のようだ。
情報粒子を使う場合は、ここでヤベーへの意識に皆で同調して。
情報粒子を介してリアルタイムでやり取りをした方が早いし、正確だし。
効率もいいのに。
鍵盤を使って行うという事は、リアルタイムのやり取りというよりも決まっている事を見てもらう、そういう感じが強いのかな、と思った。
毎年説明しているんなら、特に内容の変更も無いのかな?
そう思ってゴーグルを透明モードにしてヤベーへの動きを見ていた。
おもむろに鍵盤に向き合い、そして指を滑らせる。
優雅に、そして舞うように手は鍵盤の上を動いていた。
一瞬その動きに見とれていると、すぐにゴーグルが透明モードから情報モードに切り替わり、バンダナから粒子を介して情報が送り込まれてきた。
どうやら、最初は粒子技術についての基礎的な話になるようだ。
物質、宇宙にあるモノはすべて細かい単位にまで分解できて、隙間だらけの状態で存在している。
それを結びつけている力、そこが「粒子」というモノだとか。
細かい単位の間にあるような希薄な状態が一番安定し、実際に使えるくらいの濃度に上げれば上げるほど不安定になっていく。
粒子は希薄な状態、原子や原子核の中に存在しているくらいの状態が一番安定し、すべての能力を内包しているのだけど、
濃度を濃くすれば、不安定になってきて、それぞれに特徴のある部分が突出してき始める。そこで、粒子を取りだし、圧縮する作業が最初に行われる手順となる。
それから、それぞれの目的、特徴をもった粒子を選別することが可能となる。
塔や街で行われている粒子を圧縮して循環させている仕組みは、こうやって使える粒子を選別する作業から行われているのだとか。
粒子はそのままの状態では人の意識で操作できるほどのエネルギーはないのだけど、力粒子、情報粒子、冷却粒子、温感粒子、音楽粒子、などなど、目的に応じてそれぞれの特徴を持つ粒子を分離することで、人の意識のエネルギーに反応しやすくなって。そして、街のシステムで粒子自体に最初からある一定のエネルギーを与えておくことで、それをまた希薄な状態に戻して町や目的の地域に分散して人が使えるようになっているみたい。
つい、自分の手を見てしまった。
粒子というのは、こういう風に自分の手やこのゴーグル、すべてのモノに存在していたのか。
粒子が存在するので、僕らはモノに触れるのだという話も見せてくれた。
目の前に木の板があって、それに手を置くと、固くて手の方が押し返されるような感じをうけるけど。
この場合は、木の粒子が力を発生させ、僕の手の粒子も力を発生させているので、互いに押し返されるような感じになるけど。
この粒子の力を弱める事が出来れば、僕の手は木の板をすり抜ける事が出来るらしい。
粒子で支えられている物質の最小単位は隙間だらけなので、粒子の力を操作できればそのような事も可能となるらしい。
粒子はあらゆる物質、あらゆる生物の中から抽出され、それは無限とも言える量が世界には存在している。
しかし、力粒子を弱めてすり抜ける事をあまり行っていると、自分の粒子の力も弱まる場合があるので。その分肉体がエネルギーを必要とするだろう。
ということ。
普通の人がもしもできたとしても、やる事自体にあまり有益性は無いという事なんだろうけど。
できるならやってみたいものだ。
ゴーグルをちょっとずらして隣のヤーフルを見ると、机に手をついて、一生懸命押し込んでみようとしているのが見えた。
やっぱり、やると思った。
結局無理と分かったのかあきらめていたけど。
しかし、粒子がそんな感じで無尽蔵に存在しているのだったら、どうしてその技術が失われていくような方向になっていったんだろう?
僕らが見てきた未来の姿は、粒子技術が次第に限定的にしか利用され無くなっているような状況が見えていたし。
一度、大陸全体のネットワークすらも消えていた時期もあったみたいだし。
そして、なぜ、粒子を使うと「時間」が犠牲になるのか。
思いきって、それをヤベーへに送ってみた。
質問は随時送ることができるので、これまでも、他のメンバーがいくつかそれを行っている。さっきの板を手がつきぬけない原理とか、そういうのも質問から来た回答だったから。
ただ、情報粒子でヤベーへとリンクしていないので、ヤベーへに誰が質問して、どこからがその回答なのかは分からない。
さっきの木のイメージがあれば、流れで分かるんだけど。それがないから。
通常はリアルタイムで誰が質問しているのか、誰が答えているのか分かるんだけど。
僕は、前に施設見学で言われた「時間を犠牲にする」という話を聞いてみる事にした。
僕が情報粒子を使って質問をすると、ヤベーへの前にあるモニターにそれが映し出されるみたいで。
情報粒子を介して僕の質問が直接ヤベーへに行っている分けでは無い事が分かる。
面倒な事しているなあ。と思ったけど。
すると、ヤベーへの指が鍵盤上を滑って、そして情報を送ってきた。この回答は全員が共有する。
配信するときは、鍵盤状の機械から情報粒子に乗って僕らの頭に流れ込んでくる。
粒子は物質すべてから採集できるので、モノがそこに有る限り、粒子を取りだし続ける事が可能となる。
しかし、人間が粒子を使うときは、情報粒子でも力粒子でも、使うたびに自分の体にある、もともと存在している粒子といくつか入れ替わってしまう。
本来、安定している粒子は肉体の状態を常に良い状態に保つようになっていたのだけど。
粒子を使う事で、自分の安定している粒子と、圧縮され不安定になった粒子がわずかずつだけれども入れ替わるようになって。
体にある原子やそのさらに細かい単位の結合が変化してくるようになってしまった。
地球上にもともと存在している生命は、肉体の粒子が結合して分離するまでのプロセス(誕生から死まで)が刻みつけられているので、そのサイクルを繰り返しているが、
アトランティスの民として生まれた存在は、もともとの地球発生の生命ではないので。
基本的にはその誕生と死までのプロセスは存在する必要が無かった。
しかし。粒子を活用することで、結合して分離するプロセスが肉体に起こり。それで、次第に肉体の老化が始まって、死という概念が誕生した。
という説明が情報粒子を使ってやってきた。
粒子を使えば使うほど、肉体は老化をしていく?
つい、みんなゴーグルとバンダナを外してしまった。
目の前には鍵盤を前に、ほほ笑むヤベーへの姿。
僕らのその姿を見まわして、
「君たちは、すでにサイクルに入っている。融合と分離を繰り返すプロセスに。」
と言った。すると、別のメンバーが
「それを防ぐ手段はないのですか?」
と聞いている。すると、
「永遠に生きる事がそれほど良い分けでもない。」
とヤベーへは言った。
そのときに、少し寂しそうな感じに見えたのは僕だけだろうか?
そして、言葉をつづけた。
「君たちは、次の『家』に移動してから、この融合と分離のプロセスについての勉強を始めるだろう。そのなかで、自分がどちらを選ぶのか、それから選択してみるのもいいんじゃないかな?今はこういう風なプロセスの中に自分が存在していると理解するだけで。」
すると、ヤーフルが質問をした。
「じゃあ、そのプロセスで永遠を選んだ人は今までいるの?」
すると、ヤベーへはゆっくりと首を横に振った。
「すべてを知って、あえてそれを選んだ民はこれまで一人も居ない。」
なぜだろうか。永遠に生きる事を選ばない理由はなんなんだろうか?
それよりも、それに答えた時のヤベーへの表情が僕には忘れられない。
しばらくして、ヤベーへに促されて皆はまた、ゴーグルとバンダナを身につけて。
ヤベーへからの情報を受け取る事になった。
粒子の具体的な抽出方法や、圧縮の時に使う仕組み。
そんな事を送られてきたけど、なんとなく上の空。
昨日ヤーフルと話していた事をヤベーへに質問すべきか。
と迷っていた。
個人的な質問になるので、今送ってもいいのか。
それとも後にしたほうがいいのか。
と迷っている間に講義は終わってしまった。
最後に、また木のイメージを作ってリンクして。
そして、皆の意識を同調させて終了。
よし、これからヤベーへに質問せねば。
と思って席を立つと、思いもよらず向こうからこちらに近づいてきた。
ヤーフルと僕の間に立って。
そして、ほほ笑んだ。
「さあ、二人はこちらに来なさい。」
と言って、僕とヤーフルをヤベーへが通って来た通路に導く。
僕が驚いていると、ヤーフルがウインクしてきた。
なるほど、ヤーフルが僕より先に質問いれていたのか。
こう言うときは頼りになるペアだったりする。
他のメンバーはなぜ僕ら二人が呼び出されたのか理由は分からないだろうけど、
いつもの事だから、と言う感じで僕らの事を見ている。
「後で仲良く戻ってきなシェアルームで話しているから。じゃ、ごゆっくり。」
と笑いながらカシェットに言われてしまうし。
「ヤーフルが暴走したらちゃんと止めてよ。」
とシェルが言って笑っている。
他のメンバーも似たり寄ったりで声をかけていく。
僕らは2人揃って1つ、って感じでみんな見ているんだよなぁ。
それぞれにペアとなる相手はいるはずなのに、僕らのように一緒に行動しているメンバーはあまり多くない。
というか、一緒に行動せざるを得ない感じになっているんだと思うけど。
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