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ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

アトランティスの記憶<後期アトランティス 最終章 >

2013-02-27 10:29:55 | 『日常』

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初期アトランティス


「チェリスはどうなったんだろうね?」
僕が聞くと、ヤーフルは少し寂しそうに
「すべての存在の、その中に有るようになったんだよ。チェリスは自分を情報のソースに戻して。そしてすべてのアトランティスの民に分け与えた。そう言う感じ。」
僕らの中には、チェリスの一部が常に有るのか。
ということは、チェリスは形を変えてまだ存在しているという事になるのかもしれない。
この大陸全体の民が、それ自体がチェリスと言えるのかもしれない。
しかし、コーディネーターは8の公園に2人以上いたはずだったのではないだろうか?
フロルの記憶で見る感じでは他のコーディネーターはまったく出てこなかったから、そもそも存在自体がよくわからないけど。なので、ヤーフルに聞いてみた。
「他の公園のコーディネーター達はどうなったのかな?」
ヤーフルはちょっとストローをいじってから、
「まだ、今もどこかに居る。」
とぽつりと言った。
「へ?まだ生きているの?」
ヤーフルは頷く。そして、
「コーディネーターは情報と繋がっている限りは肉体の死を迎える必要はないのだから。アトランティスの民以外と共に、何処かの大陸や島に居るはず。幾人かは情報の源に戻った人もいると思うけど。」
「どこに居るか分からない?」
「それが分かればたぶん今私はここにいないと思うよ。」
そう言って、ヤーフルは笑った。
そうだ、そんな面白い事が分かっていたら、ヤーフルは真っ先に飛んで行っているはずだから。

何百周期も存在し、そして生きている人とは、どのようなことを考え、どのような生き方をしているのだろうか。
もしも会えるのならば、僕も会ってみたいと思う。

ヤーフルと情報粒子で先ほどから見ている事を交換していると、ある部分でヤーフルが情報を止めた。
「あれ? 粒子技術って、ヒトヲメンバーが作ったんじゃなかった?」
ヤーフルが驚いたように聞いてくる。
「そう言われているけど、これ見ると粒子というのはもともと存在していて。それを有効に使えるようにしたのが、この26の存在って感じだね。」
「ヒトヲメンバー出てきて無いよ?」
ペアとか家とかも、この時に設定されているみたいだけど。そんな話は今まで出てきたことが無かったし。

「今の僕らの社会の基本がここで出来上がっている気がするけど。ヒトヲメンバーって110番目の家族じゃないのかな?だったら時代が合わないよね。」
「この謎は何だろう?君の記憶にも私の記憶にも無いところだよね。」
「うーん、このあたりはどっちも分からないなら調べようがないな。」
と言うと、ヤーフルはニヤッと笑って、
「簡単じゃない。明日聞けばいいんだから。」
と言う。
そりゃぁそうだ。直接聞けば一番いいのかもしれない。

「明日、ヒトヲメンバーに会うンだから。」
明日は塔で粒子技術についての勉強会があるので、確かにヒトヲメンバーが居るはずだし。毎回僕らのときはヤベーへが出てくるので、今回もそうなると思うし。
前に見学に来た頃は、まだ教えてもらえなかった事を今は教えてもらえるかも知れないから。
「じゃあ、これまで見せあった記憶をちゃんと情報粒子に整理して、それで持っていこう。」
と僕が言うと、ヤーフルは嫌そうな顔をして。
「えー、面倒じゃない。そのまま持っていけばいいんじゃないの?」
「人に情報を送る時は、ちゃんとまとめておかないとダメだよ。あの創世記でいちゃいちゃして恥ずかしいところも見られていいのかい?」
「それはダメ!」
「じゃあ、ちょっとまとめようよ。」
「えー、君がやってよ。」
「ヤーフルの記憶もあるんだろう?ちゃんと責任もってまとめないと知らないよ。見て、ヤベーへが笑うかもしれないし。」
「それはそれでヤベーへが笑うところは見てみたいけど、笑われるのは嫌だな。」
「じゃあ、これからちょっと記憶まとめるよ。」
「ここで?」
「じゃあ、図書館行こう。」

と言う事で、僕らはショットを後にして、図書館の方へと移動した。
何気にこうやって使っている粒子技術も、いろいろな存在達の動きの中から生まれていて。
でも、時代が進むにつれ、この技術は次第に忘れ去られるような感じで。

なんで、こんなふうに変化していくんだろう。
いろいろな疑問が出てくる。
そもそも、どうして僕らは未来の記憶を見る事もしているのだろう。
やっている時は、なんとなく面白いのでしているけど、良く考えるとこれを知る事は必要なのか、分からなくなる事もある。

「ほら、難しい顔をしているぞ。」
ヤーフルが横から僕の顔をつつく。
「そりゃあ、ヤーフルほど気楽にはなれないからね。」
と言うと、ヤーフルが僕の手に捕まってきて、
「君にはスーべロス、私にはチェリスの記憶が濃く残っているから、こんなにも一緒に居る事になるのかな?」
と言う。
「それが、チェリスの望んだ事なのかもしれないね。」
と僕が言うと、ヤーフルは僕を見上げている。僕はちょっとカッコつけて言ってみた。
「創世記に行った過ちを、他の時間、場所で償うために。」
すると、ヤーフルは笑って、
「過ちじゃないよ、だって、今こうしているのはそのおかげなんだから。」
そう言って、僕の手に強く捕まってきた。
ヤーフルの言葉には、いつも驚かされる。
それが本当なのかもしれないな。



<アトランティス後期 フロルの章 終>






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