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ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

アトランティスの記憶 12

2013-01-25 10:03:43 | 『日常』

明日から出張なので、続きは帰ってきてからアップしますので。
火曜日あたりからの連載再開になります。
ややこしい部分に入ってきてますが、ここを抜けると分かりやすい話になっていきますので(笑)
もう少し、この2人のやりとりにお付き合いくださいませ。

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コーディネーターの記憶。

それは、記憶、と呼ぶには膨大であり、アクセスする領域によっては自分の感覚では理解できない情報が膨大にある。
だから、ヤーフルが感じるコーディネーターの記憶、とは肉体をもった時期の、一部の記憶でしかない。
という前置きをされてから話し始めた。

生まれた時の記憶は特になく、すでにそこに存在していた記憶しかない。
その時から、自分は区に居る存在達を合成する仕事をしていた。
光のゆりかごから情報を「公園」に一旦引き出してくる。
そこからカプセルに1つの生体情報を合成する。

その基準は、光のゆりかごから来る記憶によって、決めて行く。
全体にある情報から、今ひつような固体を作りだし、それを合成していく。
その姿は多数の生物の特徴を持ち、それは故郷と、前宇宙にある記憶の中から導き出されたもの。

今の地球の大気組成、生物の分布。

地球に発生している生物との関係はなるべく無いように意識して作られる。

地球意識が作り上げた生物は、まだ自分たちの合成した生物と「質」が違うので。互いに影響を与えないように、環境は借りるけど、大きく影響を及ぼさない範囲で、「星の意識と地球の意識」をつなぐ存在を作りだす実験を行っている。

今までに生み出した存在は、100を超える。
なぜか、必ずその存在は一体しか作らない。ペアにはしていないのだ。

自分の作る存在達はなぜ、ペアにはならないのだろうか?
トリョウに聞いてみた事もある。すると、彼は
「自分たちの作る存在は、完全ではないからだろう。」
と言う。
そう、完全な存在であるなら、必ずペアが必要となり、それを補い合うパートナーと共に対話することで物事を進めて行く事が可能となる。
そういう事をトリョウは言う。

完全な存在は、ペアでないといけない、
ペア出ない存在は完全ではない。

そうなのだろうか?
自分は、そんな存在を作り続けているのは、これも意味がある事なのだろうか。

ふと、そんな事を思う。
今自分のしている事は、本当に何かの目的があってやっていることなのだろうか?

他の公園、他のコーディネーターとのやり取りは存在しない。
コーディネーターとして独立しているのは、自分とトリョウしか存在していない世界に居る。

なぜ、我々のようにペアにしないで、この存在達は一人ずつになっているのだろう?

トリョウと対話を行う。
トリョウは、まだ完全ではないから、一人ずつにしてあるのではないか。
そして、外の環境に出て、そこで完全になる必要があるからではないか。

と言う。
確かにそうかもしれない。
我々は完全であるがゆえに、思考するためにペアが存在する。
意識のやり取り、変化を作りだすために。

しかし、一人ではそれが難しい。
そういう話をしていると、
「それは、『思考』、というプロセスを作り上げるためだ」
とトリョウは言う。

思考する事。自分たちは思考と対話、そして情報の共有。
それを行う事で現在の仕事をしている。

しかし、この作られる存在達には対話がないので。思考することを重視して今作られているのだろう。
それは分かる。
自分もトリョウと情報を共有しているから、感覚として理解はしている。
しかし、なぜかいつも思うのが「どうしてこの存在が一人なのだろうか?」というもの。

これは、自分の中にある私に特徴づけられた性質なのだろうが。

トリョウはそういう事は考えていないようで。
すべて、自分たちの考えで行動することが、すべてのバランスを取っている。
と認識しているようだ。


そして、自分たちは思いつくまま、感じたままの存在を多数生み出していく。
その間も、トリョウとは一人しか作らない事に関しての話を良くする。
それに、前宇宙の記憶を与えてしまうべきかどうか。
そういう事も話会う事は多い。

結果的にはその時の感覚で作業を行うのだが。話し合う事はたくさんある。
それにより、双方の意識が同じ方向を向くときもあれば、違う方向を向くときもある。

今回、1つの存在に「記憶」を与える事、そして、記憶を思い出せるようにすることを実験した。
これは、トリョウとの対話の結果。これを行う必要があると感じたからであって。
それは「中央情報塔」とのアクセスから得られた感覚なのだ。

そして、トリョウと二人で、1つの存在を作りだした。
記憶を持って、そして、これまでに作ってきたなかで、一番美しい外見をもつものを。


自分は、美しい存在を抽出する事を考え、トリョウもそれに賛成した。

美しい、とはどういう存在なのだろう。
塔からの情報から来る、[感覚]でその状態を決めて行く。

塔からの情報は一瞬でこちらに伝わり、そして解読され。
抽出するカプセルへと情報は送られる。
そこに時間、というものは存在しない。すべてが一瞬で行われるのだ。

情報の内容は膨大な量に及ぶ。
前宇宙で存在した、生き物の持っている特徴から。
すべての世界で、最も繁栄した姿と、その存在達の中にある「美」という意識を統合して。

それらの中から、すべてにおいてバランスの良い姿と形が選びだされた。

すべてに広く存在した生物。その中から、強い個体の「記憶」を今回は入れ込む事にして。

今までの存在は、地球環境では、地球の意識や他の存在の意識からの影響を受けて。
まだ自我のようなものがあまり発達していない。
記憶もなく、情報とのつながりもないため。
そこに強い恐怖の感情が存在し、それが行動の原理となっているのはこれまでの実験で明らかになっている。

それを今回は防ぐため、塔との情報とつながりやすくするために「記憶」を持たせるようにしてある。
以前の生、そして、自分の生まれる前の記憶をかすかにでも覚えておくことで、それは自分の自我を作ることにもなり。
その記憶から、自分の存在を意識し、広くつながる世界の一部に自分が存在していると言う意識を持ってもらう。
それが記憶を持たせた今回の目的である。

そして、自分が全体の一部であると感じる時、その存在は「美しい」ものを感じる事ができる。
すると、美しいものを自分で判断し、美しいものを今度はその存在が作りだして行けるようになる。

美しい存在とは、自らが美しく、そして、美しものを感じられる存在。

そして、その存在は今、カプセルの中から抽出されようとしている。

それは、つややかな鉱物のような茶色の髪をしていて。
透き通るような肌。姿は、自分達コーディネーターと同じ。
ヒューマノイド。

ヒューマノイドは前の宇宙では広く存在した種族であった。
なので、コーディネーターも同じ姿をしている。

しかし、今回抽出しようとしている存在には、羽が付いている。
それは、大地と空と、すべての世界を広く見て行けるように。

それは虹色に輝く、透明な羽だった。

その作業を開始し、地球が1周期ほど恒星の周りをまわる頃、
トリョウと共に美しい存在をいくつか設定し、抽出作業を行っていた。
トリョウは自分と同じ感覚を持ちつつ、それとは違う視点で物事を見ている。なので、この存在に対しても。記憶を持たせる事に関しては、まだ結果を見ないと、という感じでいるようだ。

「前の生の、微かな記憶により、塔の情報にアクセスするキーワードを持たせているようなものだ。」

と言っても

「そのキーワードを自覚していないなら、それは私達の勝手な意識の操作になるのではないのか?」

と言う言い方をする。確かに、自分たちの意識で操作していると言うのは、地球と宇宙をつなぐ存在を抽出するのに影響を与えそうではあるが。


その存在は、すでにカプセルより抽出され、それは区へと送り込まれていた。

他の存在の確定作業が終わり、その「美しい存在」を確認するために、区へと向かう事になった。

結晶質の通路を通り、1つの隔壁の前に来る。
この隔壁は自分たちの方からは透明な状態にして見えるようになっているが、中の存在にストレスを与えないため。
中からは見えないようになっている。

トリョウと隔壁の中の様子をうかがう。
すると、中には透明なカプセルに包まれた、虹色の羽をもつ存在が浮かんでいた。

それは、今の自分の状態に気が付いたのか。
周囲を確認し、今の自分のいる場所を認識しようとしている。
それも、以前の記憶の微かな情報をもとに。

私は喜んだ。

「彼女は自分で判断して周りの状況を把握しようとしている。これまでの存在とは違うようだ。」

トリョウも頷く。

「確かに。記憶を持ったがゆえか。情報とのアクセスもスムーズに言っているようだ。もう、周囲の状況を把握している。」

中の存在が安定したところで、自分たちは隔壁の中へ入った。

隔壁に入ると、その存在は私達へと近づいてきた。
それも、微妙な距離を保っている。私達のやや斜め上。
明らかに、自分を守る防衛反応が出ているようだ。
初対面の存在と距離を置く。
これは、いままでの存在には無かった事だった。

その存在はカプセルの中に入っているが、美しい茶色の髪の毛は長く体を覆い、白い肌はきめ細かく。そして、体のラインは「女性」をモチーフにした、生命力あふれる曲線で構成されている。
青い目で私達を見ている。

その姿を見て、

私は嬉しくなり、つい声をかけてしまった。

「どうだい? そのカプセルにはもう慣れたかな?」

すると、その存在は首を傾げ、何かを考えるようなしぐさをした。
自分の置かれている状況を判断しているようだ。

トリョウが聞いてきた。

「言葉は理解しているのか?」

それを聞いて、目の前の存在は明らかに少し不機嫌になった。
感情も存在しているのか。
この状態を、周囲の情報とリンクさせて保管する。

少し、私はこの存在が理解しやすい言葉とイントネーションで会話してみる。

「ほら、今君の言葉で機嫌を損ねたみたいだぞ。ちゃんと理解しているさ。なあ、・・・・えーと名前なんだっけ?」

すると、その存在は返してきた。

「ナマエヲキクナラ。ソッチカラサキニイウノガレイギ。」

思いもかけない反応に、私は嬉しくなった。
自我がある、記憶も微かにあり、それが今の行動原理を作っている。。

つい、トリョウに言った。

「ほら、どうだい! ちゃんと人間の記憶もあるみたいだ。成功だよ、これは。」

トリョウはこの存在の反応を見て、驚いているようであった。

私はまた、この存在が聞き取りやすい言葉で返す。

「そうだな。確かにレイギというものがある。
こちらから名乗ろう。 僕はチリェス」

「私はトリョウ」

と自ら名乗ってみた。

すると、その存在は、少し胸を張るように答えてくれた。

「ワタシハ、スーベロス。」

横を見ると、トリョウの困った表情が見てとれる。
自分の名前を思い出すくらい、それくらいの記憶を与えてよかったのだろうか?という戸惑いを感じるが。
私はこれくらいの記憶は必要だろうと思っていた。
自分を個体識別していた頃の記憶。
これがないと、今の地上では存在できないと思ったから。

スーベロス。どこの星の記憶だろうか。シリウスか。
前宇宙のアファラット星系の記憶か。

そのあたりは後で調べてみるとしよう。
すべての情報は、スーベロスを囲むカプセルが記憶し、それを読みとればその出所はハッキリするのだから。

スーベロスの、虹色の翼の色が赤い輝きを帯びてきた。
どうやら、我々と接触したことで軽い緊張状態になっているようだ。
少し間を空けるとしよう。

私達は隔壁の外へ出た。
そして、スーベロスの様子をうかがう。

赤い翼の輝きのなかで、静かに眠る妖精。

そうか、これは妖精か。

「この存在を、妖精と名付けてみないか?」
私が言うと、トリョウは、
「それは今、私も思っていたところだ。」
と返してきた。

どうやら、同じ情報とアクセスしたらしい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「そして、チェリスはスーベロスを地球へと放ったのよ。楽園から、地獄へと。」

意識はこちら、美術館へと戻ってきていた。
目の前にはヤーフルの緑色の目が見える。
その目は、ちょっとさみしそうな感じがした。
どうやら、まだ先には別の話もあるみたいだったけど、
口に出すのは難しいのかもしれない。

「地球は、創世記の時はもっと楽園的なものじゃなかったのかな?」

僕が聞くと、

「あらゆる要素を、地上に配置することで。そこでいろいろな関係性を作っていったみたいだったから。安定した世界しか知らない存在にとっては、地獄でしょう。」

「でも、それは受け取り方次第だよね。」

「君は、スーベロスの記憶を見た時、それは恐怖におびえていたんじゃない?」

「それはそうだけど。」

「楽園には恐怖は必要無いじゃないの。」

「怖いとかおもわないと、危ない事が分からないじゃないか。」

「怖いって、気持ち自体があることが楽園では無いのではないの?」

「でも、怖いって気持ちは必要じゃない?」

「うーん!! 分かんない? 怖いって気持ちもっちゃだめなの!」

「それが分かんないけど?」

ということで、口で会話すると何かと情報のやり取りに不都合が生じるので。
粒子技術を使う事にした。
僕らは、なんのかんの言っても、これが無いと生活できないからね。

そこで、さっきの記憶の話と「光のゆりかご」に関しての情報をやり取りするために、ヤーフルと僕はバンダナを付けた。
美術館なので、ゆっくりと座って鑑賞する席がある。
そこで二人で座って。情報粒子に耳を傾けた。

それと共に、さっき自分たちで見てきた記憶のなかにある、情報の交換も行う。
今まで得てきた光のゆりかごに関する情報と、自分たちの情報を合わせて交換しはじめた。







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