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ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

アトランティスの記憶<中期アトランティス11>

2013-02-09 11:19:40 | 『日常』

美麗イラストが入る部分も多くあるのですが、私がいれ損なっている場合もありますので。
思い出したら追加していきますね。
今回は、前回の話ヤーフルと僕のやりとりの部分のイラストをいれております。
絵師の方は、ディープキャットナップ、を書いておられる、cord-Sさんです。
ディープキャットナップはヒーリングサロンネコオルで1巻~3巻まで販売してますので、興味ある方はご覧ください。再販の予定はちょっと無いので。
在庫のみ、という感じですが。


それでは、明日から出張なので、月曜に戻ってきてから連載再開しますので。またお楽しみくださいませ。

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<中期アトランティス>






ハッとして意識がこちらに戻った。
目の前にあるのは青い瞳。
長が俺を見つめている。

「なんですか?今のは?」
すると、長は何かを促すような目をしながら、
「あなたの魂が記憶している、あなたの昔の時代です。」
そう言った表情には、少し寂しげな感じも見える。

「俺の過去生?」
「そう、あなたの情報がある場所からの記憶です。」
「これも粒子のせいですか?」
「そうではありませんが、きっかけにはなっています。」
俺は混乱した。
昔の自分?
それに、見た世界は、海岸にあるクリスタルの建物が街を埋め尽くしている感じだった。
それに、粒子というものをみなが使っている様子で。
今のように俺達や神殿の人間だけのものではないように見えた。
あんな子供ですら使えるのか。
では、なぜあの世界は今のようになってしまったのか?

長は俺の疑問を理解したような表情でこちらを見ている。
「少し、話をさせていただきます。」

そういって、長は語り始めた。
世界の変化を。


長は情報粒子を使って、俺に話を始めた。
今よりももっと過去の話。

その頃は、今見たような粒子技術で世界が動いており、エネルギーも循環を基本とした世界となっていた。
すべての情報やり取りが粒子で行われ、人の意識も近くなり。
差別や貧困、そういうものは存在していなかった。
すべての人が同じレベルの生活を送ることができて。
年齢による制限などはあるにしろ、すべての情報を共有して生活することも可能であった。
その時代が長い間続いた。
長い間、同じ感覚ですごしていると、人々の意識にはひとつの方向性が現れてきた。それは個人が思うものではなく、人の意識が潜在的に思い始めた事だった。
「変化が欲しい」

それは日常の生活を送る個人が冒険にあこがれるように、
荒々しい生活を送る個人が平和な暮らしにあこがれるように。

意識はバランスをとるために動き始めた。安定から変化へ。
そこには善悪も存在せず、ただ集合的意識の進む方向に街は変化し始めていた。
人の意識で動く粒子技術は、その集合的意識により新しい動きをはじめた。
粒子は、「時間」だけではなく、新たな犠牲を欲した
それは「分断」
人の潜在意識を受け取り、粒子はそれに反応しただけ。
その流れに地球と宇宙の、集合的意識とも同調した。
そのときから変化が始まり始めた。
街は海岸沿いに存在し、それらを粒子のネットワークで結んでいたものが、
大陸沿岸部の水没が徐々に起こり始め、
人々のネットワークが途切れ始めた。
塔を中心とした「街」から送り込まれる粒子が明らかに少なくなってきたのだ。
そこで、街から町をつなぐために「神殿」が建設され、粒子技術を限定して用いるようになったのであった。
その「分断」で得た経験、情報を次の時代に、融合の時代へと伝え、持ち越すために。
それが先に教えられていたエネルギーシステムの理由。

中央に「情報」を蓄積するためのシステム。
それを、粒子の再生システムと結びつけ、そして辺境の創造的な情報を創りだす力をつけるための「お金」、という循環システムを作り上げ。

「それが今の世界。」

長は静かにそう言った。
俺はあまりの内容に、半ばぼうぜんとして椅子に座っていた。
なんだ、その流れは?それで俺達はこれほどの苦労をすることになっているのか?
その意識というのは何なんだ?

「あなた方、『分断された民』にはわかりにくいかもしれませんが。今の意識だけがすべてではないと言う事です。世界がこの町だけではないのと同じで。
すべてのバランスをとるように動く意識が存在しています。大災害も、あなたたちの創造性を引き出すためのキッカケでもありました。」

長が俺の思考を読んで答えてきた。

「分断された民?」

俺が言うと、長は頷いて

「あなた方を私達『統一された民』はそう呼んでいます。」

その言い方に腹が立った。
俺達は分断させられているのではないのか?統一された民ってなんだ?

「なんだそれは!俺達はあんた達『統一された民』、の思惑で動かされているって事か!」

と言って席を立つと、長は少し悲しげに俺を見た。

「それはすべてのバランスをとるためです。」

「そのために、民は苦しめというのか?」

「そうではありません。全てバランスのためなのです。」

「未来に来る安定のため?そんなの知ったことか。今の俺たちの生活がなければ未来もないだろう!」

「そう言われましても・・・。」

長の悲しげな表情を見て、少し感情にまかせて言いすぎたことを感じた。
俺はその勢いのまま部屋をあとにして、神殿を出た。

そのままギャロットに乗らず、整理できない感情を持って歩いていた。
世界のバランス?
自分の意識?
「分断された民」と「統一された民」?
なんなんだ、今まで俺の考えたことの無い話が次々と入り込んできて、混乱している。
では、俺達はなぜ今、高潮の対策で必死になっているのか?
俺のやっている仕事ってなんなんだ?

空を見上げると美しい星がきらめいていた。
「俺は、何をするために・・・。議長になったのだろうか。」

誰も答えてはくれない。風の音だけが聞こえていた。


・・・・・・・・長・・・・・・・・・・・・



長は神殿の外を歩くヤッシュの姿を粒子によって知覚していた。
確かにあの人は思い出してくれた。
でも・・・・選んではくれなかった。

帽子を取り、頭を振った。
銀の美しい髪が流れる。

「もう、これであとは動きはじめることでしょう。」

いつの間にか金髪の直轄役人も来ていた。

「これで、方向は決まったのでしょうね。」

「決定しました。398回目にして、本来の方向へと動き始めたのです。」

長は立ち上がり、直轄役人の傍に立った。
身長は役人のほうが高く、長は見上げる形となる。

「私は・・・どうしたらいいのでしょうね?」

その目には涙が溢れていた。

「辛い役割を任せてしまって、済まないとおもってます。ただ、これが必要なことであり。
次のあなた達はより良い関係となり得るのです。」

「そう言われると、早く次の時代になって欲しいと思ってしまいます。もう、この世界からいなくなってもいいかと思ってしまうじゃ無いですか。」

「まだ、あなたにしかできない仕事はたくさんあるのです。それを今やっていくことです。」

「そのためにも、少し私に元気になれるものを見せてもらえませんか?」

金髪の役人は、そっと長を抱き寄せた。
その時も、翼のようなものがマントの下にあるように見えた。

・・・・・・・・・・ヤッシュ・・・・・・・・・・・・

「どうかしました?」
シャレがお茶を持ってきて、俺の顔をのぞきこむ。
ハッと、意識が戻る。
今日は他の2人は終日で議場にはおらず、議長室と秘書室には俺とシャレだけだった。
今は議場の自分の部屋に居るのだ。つい昨夜のことを考えてしまったが。
仕事に追われているときは忘れられるが、時間が空くとつい考えてしまう。
長達の派遣される中央に行ってみるべきか。
それとも、もっと長に詳しい話を聞くべきか。

昨日は頭に血が上っていたが、現状を知ることが次の打開策を得る方法となるのは常だ。
現状の高潮対策もある程度順調に行っている。
時間を作って、次はそこのところを調べてみるべきか。

「議長?また何か考えててます?」
またシャレに覗き込まれた。
すまない、といいながらお茶を受け取り、また思案する。
すると、横でため息の音が聞こえてきた。
見上げるとシャレが俺を見ている。
「議長、長と何かあったんですか?今日は朝から変ですよ、仕事中に上の空になることも多かったし。今なんか上の空の間に仕事しているようなものでしょ?どうしたんですか、私でよければお話下さい。」
やれやれ、秘書に気を使わせてしまうとは。
俺は頭をかきながらシャレに言う。
「ありがとう、だが、これは長とのやり取りの中で出た疑問だが、自分で考えないといけない問題なんだ。すまないが、ちょっとまだ話すことはできない。」
すると、シャレはニコッと笑って、
「では、話すときが来たら教えてくれるのですね。わかりました。
ただ、議長がこんなに考えているのははじめて見ましたから、ちょっと心配になって。」
と言って俺に背を向け、席に戻るために歩いて行った。
シャレにまで気を使わせるくらい、俺は考えていたのか。
俺はひとつ大きく息を吐き出した。そうだな、詰まっているときは流れが起きない。何か動きが必要なこともある。
「シャレ、ちょっと夕食付き合ってくれないか?」
シャレの背中に俺がそういうと、勢いよく、くるっと回転して、
「喜んで!」
と満面の笑みで返事をした。







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