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ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

アトランティスの記憶<後期アトランティス9>

2013-02-23 09:00:47 | 『日常』



前宇宙の記憶。

それは塔に存在していて。そして、惑星意識自体も、実は前宇宙の記憶からなるものであったりする。

ある時、それを思い出した。

トリョウに話すと、それが惑星意識と繋がる存在を導きだす方法だ。と乗り気になってくれた。

惑星意識とリンクする。

塔の情報にアクセスして、そこから地球の意識へと繋がる。同じ「前宇宙」の情報ソースであれば、それは可能となるはずだ。
惑星のコアには、前宇宙の記憶がある。
前の宇宙で、そこで体験したすべての時代、すべての人物、すべての体験がそこにあり。
それが惑星の意識を形造っていた。

人の意識が、細胞や内臓にもある意識を統合し、脳で「自分」を感じているのと同じように。

コアには多数の意識が存在しているが、その中に、惑星の自我を担当する意識がいくつか存在する。
その自我にアクセスする。

地球意識のソースをそこで得ようという考えだが。
惑星の意識は膨大で、塔の情報ですらも入りこめぬほど入り組んでいる。

力技で行こうとしたが、それでは中に入り込めない事に気が付いた。

方法を変えてみる。
地球意識にある側面から情報を抽出することにする。

宇宙意識との繋がりを得やすい、同じレベルの情報側面を探し出す。

多面的な情報パターンがめのまえに現れ。その中にある塔の情報とリンクしやすいものを探し求める。

この空間では情報粒子は役に立たない。
自分の持っている「情報」を塔と惑星意識にリンクさせていくしかないのだ。
コーディネーターはある程度の情報量を個人で確保できるようにできているが、今回はその情報量をはるかに超えている。

なので、トリョウと私の二人で、それぞれで意識の情報部分を分割して作業に当たっている。

私は地球意識と塔の接触できそうなポイント。トリョウは宇宙意識と塔にある情報の接触。

一人でやった場合は、どちらか一方しかできないが。2人でやればどうにか両方を処理することが可能となる。

しかし、それでも一部の情報しか扱えないのは変わらない。
肉体を持つ以上、コーディネーターにも限界があるのだ。

それを補うため、カプセル内にある情報粒子に片っ端からリンクを張り、情報の断片を記憶させていく。

我々の容量を超える情報はすべて粒子に記憶させ、我々は作業を優先させる。

私は潜っていく。

上からはトリョウの情報が私へと繋がり。
私は潜水夫のように情報の中へと潜ってゆく。

私の持つ光に反応するものを探す。
それは光に見えるが、情報の塊であり。
それに反応するものは、今必要な情報の側面を持っている。

まだ見つからない。
カプセル内の情報粒子では記録しきれなくなったので、今は公園の我々の作業部屋にも粒子を満たして記録を取る。

私は作業へと意識を集中し、深い情報の中へと潜り込むためにだけ、情報の圧力を使う。

まだ反応が無い。

そろそろ、トリョウからの情報リンクも細くなり始めてきた。
もうじき引き上げか。

そこで、情報圧を細く長くして。目の前にある情報を薄くそいでみた。潜るのでは無く、横を見るために。
今自分の周りは自分の持っている情報で囲っているので、私は今私であり続けている。
しかし、それでは回りの情報が見えなくなる時があるので、たまに自分の情報をキャンセルする必要もある。

すると、そこには新たな情報が広がった。
そして、向こうには光のポイントが。

なるほど、近くにきていたのに、自分の情報で周りを覆ってしまっていたのか。
見つけたポイントは光り輝く真珠のような存在。
そして、そこに私は光のポイントを接続した。

よし、
上からのリンクも細くなってきたので、一気にトリョウに引き上げてもらう。

情報の接続作業は終わった。
あとはこちらでの抽出と調整だ。

意識が次第に上昇する。そして、肉体の感覚が戻ってくる。

「まずは水だな」
そう言う声が聞こえて、目を開けると横にトリョウがいた。
カップを持って笑っている。
一仕事完了した満足の笑顔だ。
私も満足の笑顔を返しながら、トリョウの手からカップをもらう。

トリョウは横のカプセルに居たのだが、引き上げのほうは意識の戻しが早く済むので私よりも先に目覚めていたようだ。

久々に深く潜ったので、すっかり体がおかしく感じる。
肉体を持っていると、何かと不便ではあるが、それの1つに情報リンクした後に疲れるというもの。

さて、これからつなげた情報を見る必要があるが。

「しかし、こうも疲れていると行かんな。ちょっと休んでくる。」
そいって、私は自分の睡眠用カプセルへと移動した。
10分くらいで戻れるだろう。


それから、私とトリョウは新しい方針で「抽出された存在」を作りだすことに取り組んだ。

部屋中にあふれた情報を整理してゆくが、あまりに膨大な量なのでとても処理しきれない。
必要に応じて引き出すような感じで、そのまま情報を部屋の中に粒子に記憶させておく事にしていた。

日常に生活しているのには特に影響はないので。
情報粒子が部屋に満ちていても、気にはならない。意図しないとそれに繋がる事は無いのだから。

スーべロスはたまに部屋にやってくる。他愛のない話をしたり。
いろいろな知識の話をしたり。
時間があるときはリングの内部を案内してあげていた。
好奇心があり、教えた事に対してかならず何か質問を返してくる。
私達には無い視点を持ち、その質問内容も興味深い。
トリョウとは違う、私の心が動く感じがしていた。
知識と情報でリンクするのとは違う感覚。
これはなんだろうか?
胸のあたりがざわざわする感じがある。
肉体にある意識が反応するのか?


今日も新しい抽出された存在の居る区へと連れて行って、それが目覚める様子を一緒に観察していた。
そこで、スーべロスはこっちを見て言う。
「ねえ、なんで起きるのかな。」
「?どういう意味?」
「そのまま眠っているほうが、気持ちいいし。何も怖い事も体験しなくて済むのに。」

私は存在が起きて、活動して行くことが当然と思っていたので。そういう見方ある事を初めて理解した。
作る側からの目線でしか見ていなかった事に気付く。

外の世界で、自分以外仲間もおらず、恐怖と不安の中に生活していたスーべロスには起きた事自体が間違いだったと思っているのかもしれない。

「私達にとっては、スーべロスが目を覚ます事、そしていまここに居る事がとても大切だったんだよ。だから起きてもらった。」
そう言って、スーべロスの肩を抱き寄せる。

「必要だから目を覚ます。それだけのことだよ。」
スーべロスは頷いた。一人でいた心細さを少しでも今、解消できていればいいのだが。


部屋に戻ると、トリョウが先にカプセルに入って情報を分析し、チェックしている。
私も隣のカプセルに入ると、トリョウが話しかけてきた。

「スーべロスとのやり取りも、ある程度にしておかないと。」

「なぜ?」

「あの存在は、今必要なサンプルであり。情報源なのだから。
我々の情報と思考で影響を与えてしまってはサンプルの価値が低くなるだろう。」

トリョウらしい話しの持っていきかたで、ちょっとおかしかったが。
要は一人の存在にあまり肩入れし過ぎると後で困るぞ、と言いたいのだろう。

「彼女とやり取りすると、こちらのほうが影響を受けてしまうよ。新しい見方は新鮮だからね。」
「それが必要ならばそれもよかろう。しかし、スーべロスの行動パターンはこれまでの存在達とすべて違っていて。面白いサンプルであるな。」
「だからそれを知りたくなる。これは我々としては必要な事だと思うが?」
「そうか、ならば私も今度接触してみる事にしよう。」

その瞬間、なぜか私の胸にちょっと痛みが走った。
なんだ?物理的なもの?
いや、感情の動きか。
しかし、この感情はなんだろうか?

トリョウの言葉が私には少し痛く感じた。
それは私に何か原因があるのだろうか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

初期アトランティス


「何それ、嫉妬?」
僕が面白そうにヤーフルに言うと、ヤーフルは少しふくれて、

「昔の私だから今の私とは関係ないよ。ここまで見せるんじゃ無かった。」
と言ってスラルのジュースを飲む。

どうやら、この場面は自分の中に置いておこうと思ったみたいだけど。

そこで、創世記の物語を思い出した。
アームの物語を。

『アームとは。

この星に降り立った最初の人間であり、神話の時代。創世記を語る上で、もっとも重要な存在である。
そのころ、星の上には意識を持ち、それを他の惑星規模で広げて行く存在はいなかった。

惑星の意識と共に存在し、惑星の意識の中ですべては生まれ、育ち、子孫を残し、そして死んでいった。

意識は惑星の重力の範囲内で循環し、他の惑星と意識のつながりを持つような、そんな存在は地上にはいなかった。

地球意識は、生物の進化と共に成熟してきて。
恒温的な生物が地上を占めるようになってくると、徐々に他の惑星との意識をやり取りする存在を生み出そうとしていた。

その時、星の海より、6の星が形作る門から意識のルートが開かれた。
それは地球に新しい意識の誕生を促し、そこから新しい惑星との意識をつなげる存在が一気に誕生した。その中に、最初の人間、アームも居た。

しかし、新しい意識を持った存在は、形も姿もこれまでの地球生物とは異なるので。それらは無秩序に活動し。
他の惑星意識とのつながりはできたが、地球意識とのつながりが希薄となり。
地上の生物たちに悪い影響を及ぼすようにもなってきた。

その時、最初の人間。アームがそれらの存在をまとめて行く。
地球意識とつながり、そして宇宙意識ともつながれる、双方の特徴を持つ存在を選別しだしたのだ。

そのため、他の惑星とのつながりが強い存在は、アームへと反感を持ち、そして、アーム率いる地球意識と宇宙意識を持った存在達(サルバスト)と、他の惑星意識に強くつながっている者たち(イーヘルト)との争いが起こっていく。

人間の力では想像のつかない意識の戦いが地球でおこり、
5つの大陸で1000の存在が滅んだ。

サルバスト達は次第にイーヘルトを地球の重力外へと追いやり、地球をサルバストの星へと変えてしまった。

そして、アームはそのサルバスト達を率いて、地球各地にサルバスト達の拠点を築き。

イーヘルト達がまた戻って来ないようにと結界を張った。

アームは「光のゆりかご」を作りだし、そこでより、地球意識と宇宙意識をバランスよく体現できる存在を選別することをした。

すべてにバランスの良い巨大な個体か。

小さくとも集団で意識を分担することで、広くすべてを覆う存在か。

いろいろな方向性を考える上で、アームは、自分と同じ、すべてにおいて地球と宇宙意識とのつながりを常に持つ存在を一人選別し、そばに置いた。

それは自分と同じであり、すべてにおいて不都合は内容に見えたが。

同じであるがゆえに、何も変化がおこらなかった。

ただ、そこに存在しているだけである。

そこで、次にその自分と同じ存在に対して、反対の属性を持つ存在を作りだし、そばに置いた。

すると、それは互いに引きつけ合い、
そして、変化が多く起こった。

しかし、その新し存在(イーフ)はアームをも引き付け始めたのであった。

アームは迷った。自分が自分の作りだしたものにひきつけられるはどうしたことなのか。
そして、自分と同じ存在がイーフを奪う敵のように見えてきたのだ。
3つの存在で、いろいろな感情が表れ、そして特殊なエネルギーも生まれてきた。

仲間、愛し合う存在、敵、憎しみ合う存在。協力、不協和音、怒り、悲しみ。

アームは心の中かた出てくる、あらゆる感情に揺れ動いた。

今までにない、たくさんの感情が情報として蓄積されていく。

そして、その中から、小さな1つの光を見つけた。

一つの大きな存在ではなくて。小さな多くの存在達の活動が、より強い光を発する事を。

アームは今の自分たちの情報をすべて分割し、それをすべての小さな存在に分け与え。

そして、地球へと送り出した。』


そういう物語を思い出す。
さっきまで見せられていたヤーフルの記憶とこの創世記の神話には何か共通点がたくさんあるように思える。
それに、図書館で見た資料とちょっと流れが違うような気もする。

そんな事を考えていると、僕の考えを読んだのか、ヤーフルがニヤッと笑って言う。

「そして、私達はサルバストを作りだした。」

その記憶が僕に送られてきた。










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