まるの日<へミシンクとミディアムな暮らし> まるの日圭(真名圭史)の公式サイト

ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

アトランティスの記憶<後期アトランティス3>

2013-02-17 09:01:02 | 『日常』


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そこは重い空気の中、湿気のある空を飛んでいた。
透明な翼を震わせて。
もう3日は何も口にしていない。
下に見えるのは青い海と、右手には森。
どこに行けばいいのだろう?

迷い。恐怖。そして、孤独。

外へと放り出されて、それからいろいろなモノに襲われた。
強力な牙をもつ人狼、巨大な翼をもつ女。
陸にも空にも落ち着ける場所は無い。
だから。海を飛んでいた。
でも、ここも怖いモノ達はたくさんいる。

どうしよう。私はどうすればいいんだろう。
あの時、私を引っ張ってくれた人はどこだろう?戻ったら迎え入れてくれるんだろうか?

一人は怖い。寂しい。

私は細い腕で自分の体を抱き寄せた。
一人ではいやだから。

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ふと意識が戻ると、私は両手で肩をだいてしゃがみこんでいたみたい。
立ちあがると、一斉に拍手の音が聞こえてくる。

私は手を振って、それに答えた。

ヨルハンを見ると、拍手をしながら、ものすごく輝く表情でこちらを見ている。
「素晴らしかったです。力強くも物悲しい踊り。見ていて、なんか涙がでてきました!」
とほめてくれた。

私は手を優雅に下して、ヨルハンに答える。
「ありがとう、最高の観客が居ればこその踊りよ。」
ヨルハンは「最高の観客」というところでちょっと照れたみたいだけど。可愛いわね。

踊りを踊ると、なぜか昔の記憶のようなものが良く見えてくる。
これが情報粒子というもののせいなのかな?
それにしても、あの寂しい気持ちは何だったのだろう?

鐘の音が楽屋に響き渡る。
バタバタと扉をあける音、何か声を出してから外に出る人。
自分なりの時間を、自分なりのやり方で消化して。
そして、本番へと向かう踊り子たち。

私もヨルハンとお話した後は、少し楽屋に戻って自分の踊りについてのイメージを起こしていた。
光、感覚、流れ。
そして、愛。

本番前の控室に全員集まる。
今回は全員で12名の踊り子が物語を表現することになるけど。
全員が常にそこに居るわけではなくて、順次入れ変わりながら動きとともに流れを作っていく。
私の出番は結構ある。
最初、そして中盤。最後のクライマックスにも一人の見せ場がある。
若い踊り子、と言っても私が若くない訳じゃないけど、
まだ踊りを始めたばかりの女の子は場面ごとに入れ替わって、あまり全編を通じて登場することはないけど。私のようにある程度力量をつけてきた踊り子は、登場する回数が多くなる。
今回も主役級の私よりも年上の人は、最初から最後まで、ほとんど出ずっぱり。
それだけ体力も気力も使うから、一度主役をするとしばらくは舞台に上がれなくなるくらい。
でも、主役を務められるのは、それだけ技術を認められている事だから皆が目指しているところでもあるの。
私は最近、やっと準主役くらいの役をもらえるようにはなって来たから。もっと精進しないとね。
主役は一人、準主役級は私も含めて4人。他のメンバーは場面ごとの入れ替わり。


時間は全部終わるのに午後から夜までかかる(3時間くらい)から、途中に休憩も入るくらい。

舞台の説明、監督からの話。
トレーナーが今の会場の状況と客層について、全員瞑想することでそれを感じる。
私達は常に会場の人達と波長を合わせないとだめだから。
最初に「チューニング」という形で瞑想を行うの。

次に神官の人が現れて、今日の情報粒子の流れを説明してくれる。
神殿内を漂っている情報粒子には、時間によって濃度の濃い薄いがあって。
その濃淡に合わせて舞台の動きもある程度決めておく必要があったりする。

舞台上のピークは夜に入ったところ。でも会場でのピークは夕方前。
だから、強い訴えをするときは会場の濃度がピークになっている夕方前に行うのがいいという感じかしら。

でも、踊っているとそんなこと考えている余裕無いからわかんないわ。
体でその濃さと伝わりと、繋がりを感じているから。慣れてきた踊り子にはこういう話はあまり必要ないんだけど。
まだ新人さんもいるから、その子たちがこの流れを把握して、メインの踊り子の邪魔にならないように動いてね、という配慮もあってのことなんだけどね。

私も初めて舞台に上がるときは粒子の濃さを感じるよりも、よこで踊っている主役のかたのエネルギーに圧倒されて。
それに振り回されていた気がする。

今回の舞台でも、初めて舞台に登る新人さんが3人いるから、ちょっと声をかけてあげた。
見るからに緊張しているんだもの。

そしたらすっごい感激されて。ちょっと私が驚いたわ。
前から私の踊りが好きだったみたい。
その初めての舞台で共演できるので、感激です!って感じで・

私って、そんなに有名だったかしら?
確かに他の踊り子よりも多少かわいいのは自覚しているけど。

でも、こんなふうに感激してくれると、私も踊り子をしていて良かったなあ、と思う。
人の心に残る踊りをするのが私の生きる意味なんだから。


そして、舞台が開く。

観客は1000くらいある席をすべて埋め尽くし、
ライトが私達の舞台を照らす。

全身に鳥肌が立つ。
「さあ、最高の踊りをするわよ。」
私は小さく自分に言い聞かせた。

この瞬間、私は生きているのを感じる。



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・ショット〈 初期アトランティス 〉



「それで、この生では踊ってたって事?」
正面から緑色の瞳に見つめられる。僕は1つうなづいて、フルーツジュースを飲む。

ここはショット。さっきの博物館で見たモノを、ここで話しているところだった。
「今回僕が繋がったのは、どうも前回の時よりも何百年も後の話みたいだよ。」
「そんな感じね」
とバンダナを使って情報粒子を交換して。僕のさっき見ていたイメージをヤーフルと共有する。

「この様子だと、未来の君が水晶のネットワーク作ったあとだろう?しかし、だいぶ原始的な部分もでてきているね。」
「未来の僕って言い方もなんか変だけど。まあ、そういういい方もありではあるかな。
原始的、というよりも、粒子の使い方が明らかに変化しているよね。」
「なんでこうなったのかな?」
「それは分からないよ。その時代に繋がって無いから。ただ、前回一緒に見た時代の事件がこの流れを作るきっかけになっていたのは確かだね。」
「私を捨ててまで作ったネットワークだものね。」

緑色の瞳がじろっと僕を見つめる。
中期アトランティス。長とシャレの時の話をしているんだろうけど。

「今の僕にそういう目を向けられても困るよ。」
僕は僕なんだから。

今回、僕はさらに時代の進んだ未来を見ているのだけど、ヤーフルはどうだったんだろう?
聞いてみたら。
「私は『創世記』の頃を見てた。ずーっと過去の話。」
そう言って、ちょっと遠い目をしていたけど。
「見る?」

そう言われて見ない人はいないだろう。

情報粒子でヤーフルの記憶と接続をした。



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・ 宇宙意識と 〈 創世記 〉



スーべロスを放ってから、どうにも気になってしょうがない。
果たして、あの存在は地上で暮らすことができているのか?

少し時間を取って、情報リンクを行う事にする。
普段の意識状態では脳が仕事でフルに使われているので、一旦意識状態をシフトさせて別の状態に入り込む。
その別の状態になると、今まで時はなって来た、「抽出された存在」達の状態を知ることができる。
すべての意識は塔と繋がっているので、その意識が今地上にあるのか、そしてどういう状態かも知ることはできる。

情報リンク用の椅子に腰かけ、意識をシフトさせた。

ざっと見てみると、私達の抽出した存在は、8割以上がすでに地上での生命活動を終えている。
他の区から抽出された存在と比較しても、私の区から出て行った存在の生存率は低い。

他の区でも、単独で抽出した存在は私達と同じくらいだが、ペア、もしくは集団で抽出された存在は生存率が高かった。

高い能力を与えていても、単独では存在することが難しいという事か。

その理由は、我々と同じらしい。
私達は必ずペアで存在し、それで意見の交換や思考のやり取りをして新しい事を行う事ができる。
一人だと情報の源(アカシックレコードみたいなもの)か、塔(全宇宙の記憶)とのリンクだけで状況の判断を行わないといけないので、目の前に現れた新たな障害に出会った時、それを避ける事が出来ない場合もある。
意識のリンクは常に最高の状態では無い。
常に途切れる可能性があり、常に不安定となる。

特に、多数の意識体の中に紛れてしまうと情報の源との繋がりに障害がでるので、地上に放出した存在がそれで戸惑い、恐怖を覚えて混乱することが理解できた。

それと、生存率の高い存在は、ある特定の「宇宙」の意識と繋がっているパターンも多い事に気が付いた。

プレアデスのある方向に繋がる意識。オリオンの方向に繋がる意識。
他にもいろいろな方向から来る意識が存在し、それと繋がりを持つ存在が、なぜか生存率が高い事が判明している。

全宇宙の記憶と地球の意識。それだけではまだ完全では無く。
今の宇宙にある意識とも繋がる事も大切である。

そういう情報が伝わってくる。
他の区分では、そういう「今の宇宙意識」との繋がりを強化し始めているところもあるようだ。

我々の区画では「前宇宙意識」との繋がりを強化している存在ばかりで、しかも単独であるので。
それが生存率を低くしいている原因なのかもしれない。

各種のデータより、そういう理由付けが出来そうであった。

そして、今の宇宙意識と繋がる存在の分布を見てみると、
それは各宇宙意識の来る方向によって集まっているのがわかる。
別の区から抽出された存在でも、オリオン方面の意識と繋がっている存在は自然と集中し。他の意識と繋がっている存在を排除しているように見える。

地球の表面にも、地殻を構成する由来物質がその宇宙意識と共鳴している場合。それぞれの宇宙意識と繋がりやすい土地が存在し始めて。
地球の塔より東側、西側、南側、とそれぞれに今の宇宙意識と繋がる存在達が、それぞれの方面意識で集まって、勢力を広げているのがわかる。

そんな状態の中に、塔との情報リンクがこれまでの存在と桁違いに高いものでも。
一人で放り出されては上手く行きぬく事もままならないかもしれない。

そんな考えが頭に浮かぶ。

少し方向性を相談するか。

今後の存在抽出に関して、トリョウと話し合う事にした。

区、に居るコーディネーター達は互いにやり取りはしない。
それが存在を抽出する仕事を行う上での約束事になっている。
しかし、塔の情報にアクセスしたり、現状の存在を見る事で他のコーディネーターの方向性を見る事はできる。

現在は今の宇宙意識と繋がる存在を放出している区は5つある。
他には今の惑星意識と繋がる存在を主に出しているところが2つあり。
「前の宇宙意識」との繋がりを強化しているのは、どうやら自分達の区だけのようである事も理解できた。

しかし、「今の宇宙意識」と繋がる存在達は得てして不安定な意識を持っているように感じる。
今の宇宙はまだ変化しているから、その影響を受けるのだから確かに不安定になろうというものだ。
しかし、その不安定さが新しい可能性を作りだし、それが生存率の上昇に繋がるのだろう。

「前の宇宙意識」と繋がる存在は、常に意識が安定しているので。
どういう状況に陥ってもそれほどの不安定さは見いだせないが、その分、安定しすぎて変化に対応できていないところも多い。

今の宇宙意識と繋がる存在は、不安定であるがゆえ。
そこに分断される恐れと、孤立する恐怖のようなものを持っているものが多いように感じられる。

それが理由で行われる争いも多数見られるようだ。

宇宙の意識ならばまだしも、今の惑星意識と繋がる存在はさらに不安定になっていて。
各地で争いの源になっている事もあった。

不安定さは変化を産むが
それが意識の繋がりを邪魔してしまうと、恐怖や不安という感情を作りだしてしまう。

「我々の目指す方向性はどうなんだろうね。」
粒子に記録されているデータが空中に投影されているのを見ながらトリョウと話していいると、
「変化や不安、そして今の宇宙意識と繋がる事は確かに変化が起こり、その過程であらゆる物事が起こってくる。
しかし、それは前の宇宙でも同じことだっただろう。情報を得てきて、それを処理できない状況に存在する場合は、得てして混乱を産む。
しかし、その混乱が無いとその先には進めない。今はその状況なのではないか?」
「この混乱を収める必要はないのだろうか?」
「それを収めるために、また新たな混乱が生じるだけだろう。」
「我々の目指すところはどうなんだろう?」
「宇宙意識と、地球意識と繋がった存在。」
「それは可能なのだろうか?」
「今地上にあらわれている存在達は、ある意味それを実践している。ただ、そのつながりが『集団』として存在した時に発揮されているという部分だ。
1つ1つの存在は特定の情報としか繋がっていないが、それが多数集まることで意識の繋がりを、ネットワークを作りだしている。」
「今私達が作っている存在とは考えかたの基本が異なるのだな。」
「私達は、1つの存在で、意識が繋がっている存在を作りだそうとしている。」
「では、どうする?このまま私達はこの路線ですすんでいくかい?」
すると、トリョウはニヤッと笑って。

「私達の作る存在を、集団にすればいい。」
と言った。

確かに、個別で前宇宙意識、今の宇宙意識の情報と地球意識と繋がる存在が集団で存在すれば、それは新たな存在となって地上に新しい勢力を作りだす事だろうけど。

「それをやると混乱が広がらないか?」
すると、トリョウは

「コマは回転している時に軸があれば、安定している。軸がないから今の地上はふらふらと動くコマのように、あっちに転んだり、こっちに転んだりと安定しない。
だから、その軸を我々が作る。」

そう言われて、気付いた。
なぜ、私達の区だけが前の宇宙意識との繋がりにこだわっていたのかを。
なるほど、こういう流れになっていたのか。

意識のつながりは遠ければ遠いところほど変化に左右されない。
それに、前宇宙、となるともう変化はおこらない。すでに完成した宇宙なのだから。
今の宇宙とつながる不安定な生命体に対して、より安定している生命体であるので、軸となるには最も好都合だった。

方向性が決まると、先に進むのは早い。
自分達の立ち位置を理解した瞬間、我々にはその先が見えてくるのだから。
そして、

最初に行う事は、スーべロスの回収であった。





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