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ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

アトランティスの記憶<ヤベーへの章 2>

2013-03-01 07:41:53 | 『日常』



ヤベーへは通路から先に下りていく。
僕らも後に続いて通路へと入る。

そこは垂直の穴になっているんだけど、力粒子の作った力場が存在するので、それに足を載せておけば落っこちることはない。
力場がゆっくりと下に降りていき、僕らとヤベーへは1つの部屋に降り立った。

そこには3つの椅子が置いてあり、そこに座るように促される。

ヤベーへも椅子に座り、そして僕らにほほ笑みながら聞いてくる。

「君たちには、私はどのように見える?」

聞いている意味がよく分からずに、僕らは顔を見合わせた。
そして、情報粒子で思考を送ろうとしたら・・・何も起こらない。
あれ?

もう一度送ろうとすると、ヤーフルも同じようにバンダナに手を当ててみたりしている。

すると、ヤベーへは
「ここには情報粒子は存在してないし、他の粒子も存在していない。意思の疎通は言葉が主になるよ。」
と言った。

しかし、自分の周囲に粒子が存在せず、何も動かせも情報も得られないとなると少し不安も出てくる。
今自分が居る場所も、コレからなにをするかも分からない。
そして、ヤベーへの考えている事が分からない。

ヤベーへは相変わらず微笑んでいるが。
「さっきの質問にこたえてくれないか?」
と促してくる。

ヤーフルを見ると、こちらを見ている。
よし、同時に

「女の人」
「男の大人」

口に出して、そして、顔を見合わせた。
互いに「それは違うだろう」という目をしている。いや、僕にはどう見ても男にみえるんだけどなぁ。

そんな僕らを見て、ヤベーへは席を立って、背後にあるくぼみから、なにやら丸いポットのようなものと、カップを3つ持ってきた。

「粒子がないものでね、自分で動いてしないといけない。でもこれはこれでまた楽しいものだよ。」

とヤベーへが言って、カップに茶色い液体を注いでいる。
「これを飲むと、ちょっとリラックスできるよ。」
と僕らに勧めてくれるが。見た事のない飲み物、そして、香り。
なんとなく花のような香りだけど?

どうしようかな、と思っていると、すでによこではヤーフルが飲んでいるし。
相変わらず、早いなあ。

僕も意を決して口に含む。
すると、花のような香りが広がって、確かにちょっといい感じ。
花の香りのするお茶か。少し甘くしてあるので、とても飲みやすい。

ヤベーへもそれを飲みながら。

「さて、君たちの見ている世界の話を聞いてみようかな。」

といきなり言われた。
何の事か、一瞬戸惑っていると。

「君たちは面白い存在だ。二人揃う事で動きを作りだしている。陰と陽、動と静。反対の性質を持ち、しかし、同じ思考で動いている。まるで、彼らのように。」

そう言って、遠い目をして、そして僕らに目を向ける。その目は青く美しい色をしていた。

その目に見つめられながら、僕らはゆっくりと話を始めた。

創世記に見たものを、思い出しながら。
情報粒子があれば一瞬のやり取りで終わるのだけど、ヤーフルと補い合いながら話をしたので、3杯目のお茶を飲み終わるくらいの時間がかかってしまった。

その間、ヤベーへの青い瞳は僕らの姿よりも、何か記憶の中をみているような。
そんな気がした。

話終わると、ヤベーへはゆっくりと目を閉じて。
大きく息を吐き出した。

何か、胸の奥に有ったものをすべて押し出すように。

そして、僕らを見る。

「なるほど、それでヒトヲメンバーについて聞いてみようと思ったわけだね。」
僕らは頷く。

ヤベーへがじっとボクらを見て、そして微笑んだ

「君たちが思うように。ヒトヲメンバーは、初期の26人の存在だよ。」

そうではないかと思っていたけど、改めてヤベーへの口から聞くと驚いてしまう。
一体この人何歳なんだ?それに、どうしてここに居るんだ?

僕らが何も言えなくなっていると、言葉をつづけた。

「時代の変化の時には私達は必ず現れてきた。常にアトランティスの民を導き、我々の「抽出者」の意識を広く動かすように。
粒子を安定して動かせるようにするには、特定の時期に我々の知識が必要になってくる事がすでに分かっていた。情報と繋がり、それと共に生きる存在である我々は、君達とは違う視点で動き続ける。
情報の流れるままに、その方向を的確に動かすために行動する。

我々には、粒子を使い続けると、どれくらいの時間で民の体にある粒子の安定が壊れるかも理解していた。
ペアという概念とそれを運用するシステムが少し安定した頃に、我々はこの中に現れるようにした。
肉体の組成を変化させるのは簡単だからね。
そして、今の安定して動く粒子システムを構築した。」

簡単に言っているけど、とてつもなく凄い事を言っている。
肉体組成を変化?どういう事だ?

ヤーフルもぽかんとしている、
たぶん、考えていることは同じ何だろう。

この人達は、「抽出者」であるチェリスの意思を引き継いで、何千周期と過ごしてきているのだ。

なぜ?

そして、ヤベーへは立ち上がり、シルバーコートを脱ぎ始めた。

「君達は、私の抽出者と、その心を作った存在と。その情報を、一番濃く持っている存在だ。懐かしくもあり、思いだすと悲しくもあるが。」

そう言い終わると、コートが床に落ちる。

「そして、私は君たちと出会うために、これまで存在を続けてきた。」

そこに浮かぶのは優しい微笑みを受かべた美しい人。金色の長い髪の毛。青い瞳。
その目には見覚えがあった。
スーべロスの記憶の中にあった、あの存在と同じ。

綺麗だ。
記憶で見た姿よりも、実際に目で見ると、その美しさはとても表現できない。

「我々は抽出者の意識を受け、それを実行してきた。
そこには、観察者の存在があって初めてその意味を持つ。
すべての流れを見て、それを観察する存在。
それは幾万もの周期を超え、すべての記憶と繋がれるそんな存在。」

ヤベーへ、は僕らに近づいてくる。
僕らも席から立ち上がり、ヤーフルと無意識に手をつないでいた。
恐怖は無い。

「抽出者とその心。それは二つが合わさる事で記憶を強く刻み込む。
動きがそこに生まれ、その動きは情報に刻みつけられ、その情報はブックマークとしてあらゆる存在からもアクセスが可能となる。」

ヤベーへは僕らの背後に回り、二人の肩を抱き寄せた。その瞬間、ものすごく安心する。

「それを、君たちは行っている。
さあ、これからもう一度、その情報を見る旅に出ようか。」

すると、背後で何かが動く気配がした。
白い翼が、僕達二人を包み込む。
ヤベーへの背中から、巨大な白い翼が伸びてきたのだった。

その翼に包まれ、僕らは跳ぶ。































僕らは意識の中に居た。

情報粒子とは違う。
意識の共有。

情報粒子やゴーグル、バンダナを使っている時とは違う。
見たり聞いたりする感覚ではない。
「感じる」感覚。
そして、「知る」のではなく、「分かる」感覚。

その中で、僕とヤーフル、そして、ヤベーへの3つの意識がそこに居る。
空間、と呼ぶには広すぎて。
果てがないようで、すぐそこにあるようで。

僕らはヤベーへの意識に包まれ、その空間を進んでいた。
そのまま翼に抱かれているような感覚がある。


しばらく色のトンネルをくぐって進むと、急に広い球体の中に入ったような感覚があった。
周りには情報のネットワークが広がっている。

「ここはアクセスポイント。」

ヤベーへからそんなメッセージが来た。
「ここから、情報のすべてに繋がる。
君たちの見てきた世界をもう一度、見てみよう。」

ヤベーへはそう僕らに伝えると、翼を大きく広げ、「情報」へと繋がる。

翼の先は情報とリンクするための端子となり、すべてが光の情報と繋がる。
それはまるで、巨大な光の翼をもった、そんな姿。

そして、一気に僕らの中に流れ込んできた。
僕らの「情報」が。
魂の記憶が。

宇宙からの情報が降りてくる。
惑星意識と、宇宙意識をつなげて、今の宇宙を存在させるために。

そこに「観察者」を作り上げるために。

宇宙は動いていた。あらゆる意識が動き、1つの星にそのポイントを作りあげた。
この星は、出来上がるまでに前の宇宙からの記憶により構成された「観察点」
そして、その観察点に居る観察者が生まれてくるように、情報は流れていく。

宇宙の意識体が作り上げた「塔」がそこに置かれた。
情報とのリンク、前宇宙の記憶とのリンク。
それを行うための「塔」。
そこにあるのは物質ではなく、情報だけだった。

そして、宇宙の意思体(宇宙人の事)は塔の情報を形にするため、「リング」を配置する。

そこではあらゆる情報が形となって惑星上に放たれた。

あらゆる姿、あらゆる思考。
意識とのつながり。

リングにある、8の公園にはそれぞれにコーディネーターが存在し、それらが独自に自分達で情報から存在を抽出していた。

群れで1つの意識を共有するもの。
単独ですべての意識を扱えるもの。
ペアで意識をつなげるもの。
空を舞うもの、
地上をかけるもの。
惑星上の自然発生した生物との混血を進めるもの。

そのように、すべての公園でそれぞれの存在が作りだされ、惑星の表面に放たれた。
そして、それは1つの強力な秩序により安定する。
惑星の情報の流れをコントロールし、その流れを進める26の存在によって。

そして、26の存在に守られ、塔の周りに作られた大陸に発生した、宇宙意識と惑星意識と繋がる存在が誕生する。アトランティスの民として。
それは1つのコーディネーターの意識を表現した民であった。


それ以外の存在はすべて死滅し、それ以外を作りだしていた他の公園に居たコーディネーター達は他の大陸に移り、それぞれに得た経験をもとに新しい存在が発生していく素地を作り上げていた。
アトランティスの民とは違うモノとして。
惑星で自然発生していた生物と共に、ゆっくりと宇宙意識と惑星意識を共有できる存在達を作ったり。

他にも、惑星意識と強く繋がる存在、水中に居る存在との関係を強くしたり。

宇宙意識との繋がりをそのまま強力にすすめた存在を作りだしたり。

それらはアトランティスの民と共存していた。
コーディネーター達がリングで行っていた事が、すべて惑星上で安定し、実行され始めたのであった。


その時、チェリスの記憶が流れ込んできた。

目の前で踊るスーべロスを見て、愛おしいという感情を持ち。
空を舞う姿を見て、美しいと思い。

彼女のためならば、いろいろとしてやりたいと思う気持ちが生まれ。

トリョウと一緒に居る姿を見ると、嫉妬する気持ちが生まれ。

そして、独占したいという気持ちが生まれて。

チェリスは情報の中にある、プラスの感情と、そしてマイナスのすべての感情をスーべロスにより思い出してしまった。

怒り、嫉妬、苛立ち。

それにより悲劇が起こる。


そして、チェリスは失う悲しみを覚えた。


隣でヤーフルが泣いているような感じがする。チェリスの情報に同調しているようだ。
僕が横から肩を抱いてあげた。

すると、目の前にスーべロスとチェリスの時代の僕らの姿が見えてきた。
そこでは二人が笑いあって、たのしく過ごしている姿。

一緒に居る安心感。楽しさ。

スーべロスが情報を下す踊りをしていると、それをたのしそうに見ているチェリス。
その顔を見て、スーべロスはチェリスを踊りに誘う。

しかし、チェリスはそんな体の使い方をした事がないので、すぐにひっくり返ってしまって。
二人は顔を見て笑いあう。

ああ、こういうやり取りも有ったんだな。

僕は少しほっとした。
すべてが悲しみだけではないんだから。
そう思えた瞬間、

ヤベーへは大きく羽ばたいた。
意識が次に移動する

すべてに充実した意識。

それは、まるでさっき見たチェリス達の姿みたいだった。

それが今の僕らの暮らしている時代。

あらゆる大陸と繋がり。
惑星中に発生していた、新しい意識体達との関係も新しく築かれ。
宇宙意識と繋がる大陸には、宇宙からの存在が多数現れ。他の惑星で発生した意識体との交流が進んでいた。
地球意識と強く繋がったグループは、海の中にネットワークを築きあげていた。
それは声と音とで作り上げられたネットワーク。

惑星で発生していた存在も大陸と繋がり。
互いの情報を交換し、それぞれに影響を与え合う。

惑星すべてにネットワークが出来上がり、26の抽出された存在達から始まった「分離」の時期から協調の時期へと変化を迎えていた。

しかし、それも次第に変化していく。
川の流れが変化してゆくように。意識も移り変わってゆく。
スーべロスと、チェリスの関係のように。

次第にアトランティスの民は自分たちの大陸だけですべてをおこなおうとし始めた。
外に向いていた意識は内へと向かい、
そして自らの大陸を、見つめ直す時期が来る。

それまで外に広がっていた意識と共にあった町や都市は次第に縮小され。それと同じように大陸も海に寝食されてゆく。

人々は大陸中でも分断され。
一部の細いネットワークのみがそこには存在していた。

しかし、それはまるで、8の公園とコーディネーターの時代のように。
分断された民は、それぞれの集団で物事を動かし始めていた。
特徴のある、それぞれの集団が新しい方法を探し出し。
もしくは既存のやり方にこだわり。

創世記の状態を繰り返しているかのように。

その時、26の存在は各町に居たのだった。
神殿に住み、粒子の流れを操作し。細くなってしまったネットワークを、なんとかつないでおくために。

ヤベーへは言う。
「ほら、長のいた町には、私が居たんだよ。」と
それは、役人のなかの一人。
長直属の役人、という感じでいた人物だった。
長の周りで中央とのやり取りを補佐し、長の相談役でもある。

長は知っていたのだった。この時のヤベーへと繋がり、未来を見ていたのだから。

これから進む未来の姿と、それを変えたいと思う気持ちと。
そして、ヤッシュへの気持ち。

昔共に過ごしたペアとしての記憶を持っていた長は。すぐにヤッシュがそうだと気付いた。
時間の海を越え、再会した喜び。
それは長だけが感じていたのかもしれない。
でも、長はそれでも十分だった。
共に会い、そして共に仕事をするだけでも。

そして、大陸は分断されていても、それでもこのままであればこの大陸には悲劇が訪れない。
小さく、細く長く存在する道を選ぶ事も有り得るのだ。
ヤッシュとの何気ないやり取りをするたびに、長は心の中に積み上がっていくものがあった。
でも、その気持ちは口に出してはいけない。
それを行うと、今の関係は壊れ。そしてそれは次のプロセスを速めてしまう。

次の融合のプロセスが起こると、その次に待っているのは、分断。そして、終末。

長は自分の気持ちを出したいのを我慢し、なんとかヤッシュの気持ちが変化するようにと願っていた。
しかし、ヤッシュのやりたい事を、させてあげたいという気持ちもあった。

シャレが神殿に出入りし始めると、その心は激しく揺れ動いた。

だから、直接会う事はなるべく避けていた。
会ったら、「長」ではなく「女」になってしまうから。

そして、ヤッシュは選択した。
大陸の融合を。


長は、すべての感情を流してしまうように、涙を流し続けた。


そこまで見て、僕はハッとなった、
ヤッシュの記憶だけで見ていた時は長のこんな感情に気がつかなかったのだ。
ヤーフルが長の時の話をしなかったのも理由が分かる。

「私も、この場所に存在した。」
とヤベーへ、あれ?でもこれは未来の話なのでは?
と思うと、
「私は時間と空間を超えて存在する。君が合う私は今の私であり、未来の私でもあり、過去の私でもある。」

分かりにくいが、言われて見て納得する部分もある。
「ひとつのモノであったところから、分離が始まり。そして融合と分裂、そしてまた融合が起こる。それは意識の文明ではなく、人の文化の進んだ豊かな世界。」

そして、次の世界へと意識は跳んだ。

そこは人の作りだした世界。
人が考え、そして生み出す。
1つの理論から幾つもの活用法が生まれ、そして変化していった。

大衆文化の発達。
娯楽の充実。

日常の営みであったものから、娯楽へと変化していく。

粒子が特定の技術として取り扱われ、それは人々を結びつける新しい力として使われていた。
情報粒子による端末、それに踊り子たちの舞台。

ペアの考え方も変化し、それは決まっているものではなく、それを楽しむための関係になってきた。

感情、心。駆け引き。
安心、安らぎ。

そういうものをより、体で感じるための関係。

粒子は特定の使い方に限定され。
町は独自に発展しながらも、それぞれかいい関係を保ちながら。
より豊かに大陸は存在していた。

民の力が満ちていた時代。

民の間からすべてが動き始め、神殿等の役割も変化していく。

情報とアクセスする場所から、
政治的、文化的な場所へと。

この時、26の存在は中央に居た。
そこで、塔の情報を開放する流れを作る。
情報粒子の新しい扱い方。
これは、スーべロスの行っていたやりかた。
それを民に伝え、それが広まっていった。

それは「始まりの踊り」。

すべての踊り子達がこれを踊り、舞台に上がる。

あの時の記憶をよみがえらせるため。
体のなかにある、チェリスの記憶、スーべロスの踊る様子を見て、心動かされていた時の記憶。


そして、フロルは踊る。
それは、自分の心の赴くままに。
そして、人々の歓びのために。

情報を開放し、そこに居る人々を魅了する。

創世記の記憶を開放しながら、たくさんの踊り子たちが舞台で舞う。
中央の祭り、そこで行われるイベント。

それを見て観客が一体となり、感動に包まれる。
そして、情報りゅうしにより端末に送られた映像を見て、感じて。
大陸の民が一体となる。
創世記の記憶とリンクする。

そこで思いだす。自分達の紀元を。
自分達の存在する意味を。


カーテンコール。
踊り子たちが舞台に上がり、挨拶をしていく。
最高に盛り上がる会場。空間。

その喜びを全身に浴びて、フロルは自分の仕事に誇りをもっていた。
人の感動を導きだす仕事。
何事にも代えがたいこの感覚。

そして、民は踊り子たちにより、一体と化す。

自ら導きだした融合の時代。
しかし、それは最後の時代にいたる前の。

ひと時の豊かで平和な時代。

そこから、時代は一気に動き始める。

「分裂」の時代へと。






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