モアノー探偵事務所 ケンちゃんの友達がいじめに 第9話 1/30
純平の母はベランダで洗濯物を干していた。
チュン太たちが来る前は庭に干していたのだが、純平の母が庭に出るとチュン太たちは遠慮して近くの木で終わるまで待っているのだ。純平の母はそれならとベランダに干すことにした。
鳥たちは洗濯物にとまって汚すなんてことは絶対にしなかった。
もし鳥に糞攻撃にあったとしたら、それは鳥たちの“しっぺ返し”だろう。
2階のベランダは急な雨でも慌てることはなかった。ただ、電話や来客があったときにすぐにわからないことがあった。
ある日、純平の母は何気なく、「チュン太、番犬をやってよ。」と言ってみた。
もちろん何も期待していなかった。
そんなことをすっかり忘れて数日経過した。
純平の母はフレッシュな食べ物をバードテーブルに出していた。
チュンとチュン太が鳴いた。
振り返るとチュン太がチュンと鳴いては台所のほうにちょっと飛ぶ。また戻って来るとチュンと言っては台所に向かう。
純平の母は子供のころ、家にいたコリー犬のラッシーを思い出した。
当時テレビではラッシーというコリー犬のアメリカドラマが流行っていた。 純平の母はねだって、ねだってコリー犬を買ってもらって、ラッシーという名前をつけたのだ。
ラッシーが何か知らせたいとき、ちょうど今のチュン太のようにふるまったのだ。
純平の母は台所に入ってみた。
門のチャイムがやかましく鳴っていた。
荷物を届けた配達人がいた。
チュン太、ありがと! 番犬をやってくれたのね。
夕方、純平は珍しく薄暗くなって戻ってきた。
純平は母を見ると口を開けて何か言おうとした・・・・と母は思った。
しかし、夕飯の時もその後も何もなく、純平は寝てしまった。
朝、パタンという音で純平の母は目が覚めた。 純平の父は出張で留守だった。
目を閉じたまま、「何の音?」と考えていたが、ふと「玄関ドアの音」と気がついた。
ガバっと起き上がると、玄関に急いで行ってみた。玄関ドアは鍵がかかっていなかった。
「純平」、母は純平の部屋に走った。
純平はいなかった。
純平の母は窓を開けると「純平、純平」と呼んでみた。
時間は6時になったかどうかでまだ暗かった。
チュンという大きな声がして、暗いなかにチュン太がかすかに見えた。
チュン太、純平がいないの!
思わず言ってしまった。
チュン太はこれまで見たこともないスピードで飛び出して行った。
チュン太はカー子を探した。 カー子はすぐにみつかった。
チュン太はカー子にカー子の仲間に連絡してほしいと言った。
カー子はカーカーと鳴いて90度回って、またカーカーと鳴いた。
こうして一周してまもなく、あちこちの方角からカーカーという返事が戻ってきた。
インディアンが煙で遠方の仲間に伝言するようにカラスはカーカー伝達で遠方のカラスに連絡を取るのだった。
5分かそこらでチュン太は純平の家に戻った。
チュン太はあちこちの窓でチュン、チュン鳴いた。
玄関に純平の母と姉が飛び出して来た。
チュン太は二人がついて来られるように電線や木に飛び移りながら駅のほうに向かった。
カラスの連絡で純平を駅のほうで見たカラスがいたのだ。
まもなく大通りが見え始めた。
おかあさん、あれ
と純子が指さす方向の空に数羽のカラスとたくさんのスズメが見えた。
二人は走った。
建物の下につくと空の鳥たちがみえない。
どの建物なの? 純平の母はキョロキョロとチュン太を探した。
チュン太はひとつの建物の前に舞い降りた。
二人はドアに駆け寄った。
中は真っ暗だった。
純平の母はドアを必死でたたいてみた。
すると中から一人のガードマンが出てくるのが見えた。
純平の母は夜勤のガードマンに言った。
このビルの屋上に息子がいるかもしれないんです。
どうか登らせてください。
続
純平の母はベランダで洗濯物を干していた。
チュン太たちが来る前は庭に干していたのだが、純平の母が庭に出るとチュン太たちは遠慮して近くの木で終わるまで待っているのだ。純平の母はそれならとベランダに干すことにした。
鳥たちは洗濯物にとまって汚すなんてことは絶対にしなかった。
もし鳥に糞攻撃にあったとしたら、それは鳥たちの“しっぺ返し”だろう。
2階のベランダは急な雨でも慌てることはなかった。ただ、電話や来客があったときにすぐにわからないことがあった。
ある日、純平の母は何気なく、「チュン太、番犬をやってよ。」と言ってみた。
もちろん何も期待していなかった。
そんなことをすっかり忘れて数日経過した。
純平の母はフレッシュな食べ物をバードテーブルに出していた。
チュンとチュン太が鳴いた。
振り返るとチュン太がチュンと鳴いては台所のほうにちょっと飛ぶ。また戻って来るとチュンと言っては台所に向かう。
純平の母は子供のころ、家にいたコリー犬のラッシーを思い出した。
当時テレビではラッシーというコリー犬のアメリカドラマが流行っていた。 純平の母はねだって、ねだってコリー犬を買ってもらって、ラッシーという名前をつけたのだ。
ラッシーが何か知らせたいとき、ちょうど今のチュン太のようにふるまったのだ。
純平の母は台所に入ってみた。
門のチャイムがやかましく鳴っていた。
荷物を届けた配達人がいた。
チュン太、ありがと! 番犬をやってくれたのね。
夕方、純平は珍しく薄暗くなって戻ってきた。
純平は母を見ると口を開けて何か言おうとした・・・・と母は思った。
しかし、夕飯の時もその後も何もなく、純平は寝てしまった。
朝、パタンという音で純平の母は目が覚めた。 純平の父は出張で留守だった。
目を閉じたまま、「何の音?」と考えていたが、ふと「玄関ドアの音」と気がついた。
ガバっと起き上がると、玄関に急いで行ってみた。玄関ドアは鍵がかかっていなかった。
「純平」、母は純平の部屋に走った。
純平はいなかった。
純平の母は窓を開けると「純平、純平」と呼んでみた。
時間は6時になったかどうかでまだ暗かった。
チュンという大きな声がして、暗いなかにチュン太がかすかに見えた。
チュン太、純平がいないの!
思わず言ってしまった。
チュン太はこれまで見たこともないスピードで飛び出して行った。
チュン太はカー子を探した。 カー子はすぐにみつかった。
チュン太はカー子にカー子の仲間に連絡してほしいと言った。
カー子はカーカーと鳴いて90度回って、またカーカーと鳴いた。
こうして一周してまもなく、あちこちの方角からカーカーという返事が戻ってきた。
インディアンが煙で遠方の仲間に伝言するようにカラスはカーカー伝達で遠方のカラスに連絡を取るのだった。
5分かそこらでチュン太は純平の家に戻った。
チュン太はあちこちの窓でチュン、チュン鳴いた。
玄関に純平の母と姉が飛び出して来た。
チュン太は二人がついて来られるように電線や木に飛び移りながら駅のほうに向かった。
カラスの連絡で純平を駅のほうで見たカラスがいたのだ。
まもなく大通りが見え始めた。
おかあさん、あれ
と純子が指さす方向の空に数羽のカラスとたくさんのスズメが見えた。
二人は走った。
建物の下につくと空の鳥たちがみえない。
どの建物なの? 純平の母はキョロキョロとチュン太を探した。
チュン太はひとつの建物の前に舞い降りた。
二人はドアに駆け寄った。
中は真っ暗だった。
純平の母はドアを必死でたたいてみた。
すると中から一人のガードマンが出てくるのが見えた。
純平の母は夜勤のガードマンに言った。
このビルの屋上に息子がいるかもしれないんです。
どうか登らせてください。
続