

今年の開催国はギリシャだった。前年の優勝国がその年の大会を主催するというのが規則で、あまりにも費用がかかるため、以前は、元ソビエト連邦国など経済的な余裕のなかった国々が優勝しないように努めていたという話もある。
これまでは一番の山場である得点発表の部分しか見なかったのだが、今年は初めて最初から最後まで合計24カ国の歌を聞いた。
ウクライナやクロアチアのような民族色豊かな歌と演奏もあれば、ドイツ代表のテキサス・ライティングというグループのカントリーウェスタンという意外な選択もあった。どの国も衣装やらダンスやら歌以外のショー的要素に力を入れている。今年は、特に足の長い女性たちが途中でスカートを剥ぎ取って衣装変えしたり、自慢の足を披露する場面がやたらに多かった。が、やはり一番目を引いたのは、フィンランドのヘビメタ(?)バンドである。全員、『ロード・オブ・ザ・リング』の妖怪たちまがいの格好で現れた。花火が炸裂するほど、舞台効果も凝っている。もっとも、歌のほうは全然記憶に残らないほど、印象の薄いものであったが。一方、フランスは、質素な白いドレスを着た女性が男性チェリストだけを従えて、淡々と歌うというものであった。「ソングコンテストなんだから歌で勝負だぞ」という姿勢の表れと取れないこともないが、実のところ、「こんな馬鹿馬鹿しいことに時間と金を費やせるか」というやる気のなさから来るのだろう。いかにもフランスらしくて、わたしとしては好感が持てた。
最後の1時間は、投票結果の発表である。各国の電話投票の結果が、ヨーロッパ各国から中継で報告される。投票には歌の出場をしなかった国も含めて、30カ国が参加しているが、この部分は馴れ合い主義の典型である。政治色が反映されることもあり、フランス・ドイツの意思に反して、イギリスがブッシュ政権に組してイラク戦争に突入した年には、イギリスの得票はゼロであった。(もっとも、歌手がひどかったことも大きな原因ではあったが)。
スカンジナビア国、旧ユーゴスラビア国、旧ソ連国がお互いに投票しあう。曲に投票するというよりは、好きな国に一票を入れるという感じである。最初からどの国がどの国に入れるかは予想するに難くない。中には、「美しいわたしたちの隣国に12点!」とまではっきりと身内びいきを表明する国さえあった。まったくやる気のない(歌手にも歌唱力がなかった)フランスが1点でも得票するかどうか疑問に思っていたのだが、もちろん、お隣のモナコが8点を入れたので、最下位は招かれた。最下位はマルタである。島国の悲しさか?
結局優勝したのは、妖怪バンドのフィンランド。来年は、ユーロビジョン・ソングコンテストではなくて、ユーロ仮装大会になるかもしれない。